『キーピング・アーカイブズ Keeping Archives』連載第18回

 

4. コンテクスト、関係性、記述

出所やコレクション内での他の資料との関係性など、資料に関するコンテクスト情報のいくらかは、コレクションの資料それぞれについて記録しなくてはならない。これは、資料の物理的属性や状態といった基礎的な記述情報を増す。資料に関わるこうした情報あるいはメタデータは、大まかにいくつかに区分される。データベースにおいてこうした情報をいかに列挙あるいは配列するかは確定されてはいない。データベースや管理ツールのほとんどは、項目と表とが準備されている。もしデータベースを自作する、あるいはあまり自動制御されていないシステム(例えば手書きのリスト、ワードプロセッサーで作った表)を用いるのであれば、以下の多岐にわたる項目に基づく情報が含まれるように意図しなければならない。

■登録
これは、資料やモノ資料をアーカイブズの管理システムに組み込む手続きである。 登録は通常、識別番号を割り当て、最低限でも資料の出所やコンテクストに関する基本的な情報を記録することである。後者の手続は受入として知られ、第7章〈受入〉で詳細に説明される。

■資料番号
コレクションにある資料は、それが帽子、ブレザー、トロフィー、地図、図面あるいは写真プリントであろうとも、それぞれに固有の識別番号をもたなければならない。識別番号は、データベースによって自動的につけることもできるし、既存の分類案あるいはあなた自身が創案したものに則って、意味のある数字の組み合わせという形をとることもできる。組み合わせには、年、寄付、コレクション、受入あるいはシリーズの詳細といったことを示す桁をも含められよう。難しくなりすぎてしまうこともあるので、導入する前には入念に考えなければならない。

■同一性
この部分は、アーカイブズのコレクションの一部として資料がもつ同一性に関する情報を記録し、他の資料との関係性を作るものである。記録するデータとは、少なくとも以下の問いに答えられなければならない。タイトルあるいは名前をもつか。もしもつならば、記録せよ。それは資料の大規模受入の一部か。そうであれば、受入番号を記録せよ。すでにあるシリーズの一部となるものか。そうであれば、シリーズ番号を記せ。保管場所は?検索目的のために、どこにあるかを書き留めよ。

■記述
このセクションでは、資料の物理的性質を記述する。すなわち、どのように見えるか、何からできているのかなどである。それと分かる形やマークがあればそれを記録し、そして可能であれば、その資料の刻文や覚え書きを書き写しなさい。

■物理的状態
資料の状態について詳細に記録しなければならない。良好な状態か。清潔か。傷みはないか。コンディションレポートがこれまでつけられているか。それは必要か。コンディションレポートに必要とされる情報は、保存修復レポートにも転記されるべきであり、すなわちコレクションの中でどの資料に修復措置が必要であるかを特定するためである。これは予算や将来の計画に組み込まれることになる。 写真の場合は、サイズ、白黒あるいはカラー、複数枚あるいはその複製があるかも記録せよ。そしてその状態と修復家の判断が必要であるかも合わせて記しなさい。

■コンテクスト
これは、資料の履歴と出所に関する情報である。いつ、どこで作られたか、いつ頃使われていたか、製作者あるいは撮影した人物に関わる情報と合わせて、特定の資料に関連する技術的あるいは製造元の詳細についても記録せよ。

■取得
その資料がどのようにアーカイブズにやって来たのか、すなわち寄贈、寄託、購入、あるいは定期的な移管であるのか詳細を記録しなさい。寄贈者あるいは取得元の名前と住所も記録しなければならない。著作権に関わる制限や複製条件、個人情報に注意せよ。

■索引付け
これは、検索や探索を助けるために用いられる情報である。その資料を探し出すことを可能とする件名標目、名前、場所、日付などを記録しなさい。

■その他の情報
資料を登録あるいは記述した人物に関わる情報を記録しなさい。アクセス制限があるか、そして資料について有用あるいは興味深いその他の情報があれば書き記しなさい。

5. 地図と図面

地図と図面は、年月を経て地域に対して計画された変更のあらましを示す。これらは、実際に行なわれた土木工事だけではなく、計画されたものの実現しなかった案も記録されている。私たちはみな、時に応じて変化してきた場所に生きており、地図と図面は仕様書、詳細図、紙媒体による他のありふれたコレクションといった証拠書類を伴い、こうした変化の証拠を提出する。

[1]種類

アーカイブズには、たくさんの異なった地図と図面がある。

●建築図面
●建物の立面図、断面図
●道路、地域あるいは地区の地図
●建物の見取り図

モノの大きさもA4からA0大以上と多様であり、資料の形式や種類も一般的な紙、カード、青図、半透明紙、その他と多岐に渡る。

[2]扱いに適した道具

●アーカイブズ仕様の紙・カードのようなアーカイブズに適した資材を使うこと
●必要ならばマイラーのようなポリエステルを使い封入する
●やわらかい皮製の重しを使い平らにする

[3]扱いに不適切な道具

●ポリ塩化ビニール(PVC)のような酸性プラスチック
●ステープル(ホッチキス)、ペーパー・クリップ、ピンのような金属製の留め具
●のりのいらない紙やテープ

 

 


[4]専門的な保管

■平らあるいは直立した棚か?
地図や図面は、大判の図面用引き出しか、アーカイブズ仕様の大きな箱に保管すべきである。一番下となった地図あるいは図面を利用することは難しく、モノ資料に垂直方向の圧力を及ぼして押しつぶしてしまうかもしれないので、引き出しや箱には入れすぎないようにすること。浅い引き出しや箱が最良であり、入れすぎることもなく、利用しやすくなる。地図や図面といった大判のモノ資料は、常に充分な支えがあり、できる限り平らに保管すべきである。
直立した棚に地図や図面を保管することはよく行われているが、できる限り避けるべきである。地図や図面を固定するために用いられるプラスチック製の帯や接着剤は、酸性度が高くなることがある。時が経つにつれ、接している部分の地図や図面に害を与える。糊付けした帯ではなく、プラスチック製の大きな封筒を用いて吊るすやり方もある。封筒が不活性プラスチックで出来ていたとしても、大きな地図や図面を余裕のある袋の中に収めて吊るすことは、最終的には深刻な被害を招きかねない。というのは地図や図面が充分な支えがないことによって、次第に封筒の底へと滑り落ち、自重でつぶれてしまうかもしれない。ある種の紙は大変もろく、長いこと吊るされたままであると破れてしまいかねないので、引っ張ることによって地図や図面にかかる力は避けなければならない。
地図や図面は、折り目やしわを最小限とし、可能な限り平らにして保管することを勧める。紙は時とともにもろくなるので、大判の地図や図面を取り扱う時には常に充分支えていなければならない。

6. 地図や図面を保護、保管するためのいくつかの提案

■丸まっている地図と図面
多くの地図や図面が、しっかりと巻かれた状態でアーカイブズに入ってくる。これは長期保管には不向きであって、図面用引き出しかアーカイブズ仕様の箱に収まる大きさであるならば、地図や図面を平らにする方策が講じられるべきである。
巻かれたモノを大きな平らで清潔な場所の上で優しく解き、やわらかい皮製の重しを用い、適当な場所に間隔をおいて軽く力を加えることで、時間をかけて地図や図面をゆるませてやる。破れてしまわないように、充分な数の重しを用いるように確かめること。もしくは、全体が収まるほどの大きさの厚紙と1枚の紙をかぶせ、地図あるいは図面が徐々に平らになるようにする。

 

 


■封入(エンキャプシュレーション)
より価値のある、あるいは利用されることが多い資料の場合は、封入が適していよう。封入は、資料を扱い、保管する時に支えとなるばかりか、直接資料を触わることなく見たり扱ったりすることができる。封入とは、マイラーのような2枚の安定した透明な素材の間に記録を「挟む」ことである。2つの個別の紙片や文書に折り込まれていた一枚を、両面テープを使って一つにする。出来上った「封筒」は、文書が両面テープに触れないよう充分に大きいことが必須である。封入では、ある程度の空気がオリジナルの文書の中を循環することが可能であり、望み、あるいは必要とするいかなる時点で、まったく元に戻すことができる。
注意:封入をラミネーションと混同しないこと!ラミネーションは熱や接着剤を使い、その中に収めた資料に取り返しのつかない害を与える。オリジナルの文書をラミネーションすることは厳禁である。

 

 


■記述
地図あるいは図面を記述する際は、登録の過程で目に見える詳細を記録しなければならない。どのような地図あるいは図面であるのか、その種類を識別することが重要である。地図であれば、どの地域や縮尺、いつのものであるかを示すこと。
図面一点や一連の図面であれば、建築製図、仕様書、もしくは立面図かどうかを示す。可能ならば、電気、水道、技術といった仕様書の違いを明らかにしなさい。場所(通り、住宅地域)といった詳細を書き留め、土地所有者、建築家の名前、それに関わった建築業者や技師の名称、図面が作成された日付、地域の役所から許認可を得た日付(もし記載されていれば)、そして計画が大きな一連のものの一部であるかをという明細を記録することも重要である。多くは建築家や建築事務所によって付与された個別の番号をもつ。こうしたものを記しなさい。図面が契約書の一部となっているかを記すことも大切であり、そうした場合は仕様書や契約書自体も一緒になくてはならない。こうした文書全ての関係性を記録すべきである。

■識別
地図あるいは図面により得られた情報のすべてを区別できることが重要である。所有者、建築業者、建築家の子細というような重要な要素は図面によって異なり、記録されていないこともある。記録されていない場合、検索手段の項目を補うために、追加調査が必要になるかもしれない。できる限り詳細を示すことは、将来の検索を容易にするだろう。
地図や図面のあるものは、独自の番号付与のシステムをもつ。作成者によって付けられてきたとしても、これは記録しておくべきである。なぜならば、建築や計画報告書や、許可書、往復文書ファイル、作業書類やその他の文書といった他のシリーズにおいて、こうした番号への参照があるかもしれない。更なる情報をもたらすかもしれない他のシリーズと相互に参照することは、大変有益である。

■保管
地図や図面は検索しやすいように、登録番号もしくは受入番号(どちらでもふさわしい方)に基づき、連続した番号順で保管されるべきである。場所を有効利用するために、同じ大きさの図面を一緒に保管しようと思うかもしれない。登録番号が連続していなかったとしても、番号順であるべきである。管理システムに保管場所を記すことを覚えておくこと。

 


(第19回につづく)

Keeping Archives, 3rd
Copyright (c) The Australian Society of Archivists, 2008.
First published by The Australian Society of Archivists.

オーストラリア・アーキビスト協会からのご配慮に厚く御礼申し上げます。

 

翻訳者プロフィール

渡邉美喜 東京国立近代美術館企画課研究補佐員

翻訳に関するお問合せはNPO法人映画保存協会までお願いいたします。
NPO法人映画保存協会
http://www.filmpres.org/
info[at]filmpres.org  *[at]の部分を「半角アットマーク」に変更してください。