『キーピング・アーカイブズ Keeping Archives』連載第19回

 

7. 写真

「一枚の写真は千の言葉を語る」。このことはアーカイブズにおけるコレクションにおいて、ことさらに当てはまる。写真はアーカイブズの大半にとって、必要不可欠な部分となってきている。写真とは、それ自体が記録であり、ある瞬間の証拠となり、想定していた被写体以上のことを記録していることが多い。すなわち人物写真の背景となる町の光景、あるいはまとめてみた時に、服装、乗物、建物そして家族の時代を経た変化を捉えたスナップ写真である。写真は、技術的かつ社会的な変化の証拠でもある。比較的新しいメディアではあるが、写真技術はいくつもの変容を遂げてきている。そのなかで最近のものがデジタル革命であって、その将来について疑わしいことがたくさん残されている。1899年に撮影された画像は、物理的なモノであった。それは拾い上げることができ、コンピュータなしに見ることができる。何世代も先の人間が、今日のデジタル画像をどうやって見るのであろうか。1899年と2008年という時点の二つの画像はともに、保存と保管における試練をアーキビストにもたらしている。
多種の形式が存在することに惑わされないことが重要である。大局的な目標とは、画像コレクション全体を維持し、あるいはある程度管理することである。形式それぞれが具体的に必要とするものがあるということは正しい。しかしながら首尾一貫したやり方でコンテクスト情報を取得するという全体の過程が、主たる目的である。非常に重要であるのは、情報と画像そのものが研究とアウトリーチにとって有益であることを保証することである。

[1]種類

アーカイブズのほとんどはそのコレクションにさまざまな種類の画像をもっており、それぞれが保存と保管において独自に必要とするものがある。時とともに、異なるメディアと異なる現像法を用いて、写真がこれまで生み出されてきた。こうした違いを詳細に説明することは、本章の目的とするところではない。当初は、多分出合うことになるさまざまな種類を知り、それらの扱い方の基本を理解することで充分である。専門的な助言については、参考図書に挙げられているものなどから得られよう。第13章〈デジタル化と画像化〉は、デジタル画像の種類と形式の詳細を示している。

●写真プリント(印画): コンタクトプリント(密着印画)、カラー、白黒、装丁(マウント)、額装
●ネガ: ガラスネガ、大きさの異なるポリエステル製のネガ
●スライド: カラー、白黒
●デジタル画像: jpg、tiff、その他

写真プリントは、化学反応と相互作用の結果として作られていることを覚えておくこと。化学物質は必ずしも安定しておらず、ある環境条件は生来の不安定性を激化させてしまう。プリント表面にもたらされる変化、すなわちあなたが見ることができる画像は、裸眼ではすぐさま分かるものではないが、時とともに劣化は起きているかもしれない。このように不安定性であるからこそ、それぞれの画像の間には緩衝材としてアーカイブズ仕様の紙を挟みこむことと、できる限りいつでもアーカイブズ仕様の資材を用いることが望ましい。

 

 


[2]画像を扱う時に使う資材

●写真のネガとプリントを扱う時のプラスチック製手袋
●ポリプロピレンのようなアーカイブズ仕様の資材、あるいはアルバムの表紙やスリーブ(筒型封筒)
●プリントの間の緩衝材としてのアーカイブズ仕様の紙
●アーカイブズ仕様の厚紙
●キャラコ(平織綿布)、木綿、麻
●記しを付けるために2Bのような芯の柔らかい鉛筆
●ポリエステル製の写真のコーナー

 

 

ポリ塩化ビニル(PVC)のためのテスト

必要な資材と道具
銅線(電気配線に使うような)、炎源─高温、青い炎

やり方
銅線を炎で熱する
熱い銅線につけて試すために、見本用のプラスチック小片を集める
銅線にプラスチックをつけて、炎に戻す
 ポリ塩化ビニルの場合─炎が明るい緑になる
 ポリ塩化ビニルではない場合─炎の変化はない

覚えておくこと─このテストは保管容器だけに行うこと─決して実際のアーカイブズ資料あるいはモノ資料にしてはならない

 


[3]画像を扱う時に避けるべき資材

●ポリ塩化ビニル(PVC)などの酸性プラスチック
●のりのいらないアルバム
●ステープル(ホッチキス)、ペーパー・クリップ、ピンのような金属製の留め具

[4]様々なメディアによる画像のための環境条件

長期保存を最適にさせるためには、異なったメディアは異なる保管環境を必要とする。以下は、異なる写真メディアに求められる、異なった条件のあらましを示した表である。
機関内アーカイブズの大半にとって最良の結果を得るには、いくつもの異なったメディアの種類、予算そしてその他の資源を勘案した最適の条件と、こうした多くの条件が意図している対象を合わせてみてもコレクション全体にとってはごくわずかな部分でしかないという実用性との釣り合いを取ることである。
一般的に、写真コレクションを維持する最良の方法とは、保管施設が清潔で乾燥しており、画像あるいはプリントが光、水、虫といった環境上の脅威と直接接触しないこと、そして短時間での温湿度の急激な変化を最小限に抑える手段がとられることである。 温度の幅は、専門家によって言及されることが多く、ISO18911やISO18923といった標準に示されている。一般的な条件のおおよその目安は以下の通りである。

室温: 16℃~24℃
低温保管: 8℃~16℃
冷蔵保管: 0℃~8℃
冷凍保管: -18℃~0℃

注意 家庭用の冷凍庫の通常の温度は-18℃

■静止画像のために推奨される保管環境

ガラスネガ: 低温での保管が良いが、冷凍保管はガラス板とゼラチン乳剤との剥離を招く恐れがある。
写真プリント: できるならば冷蔵保管。色の退色と劣化を軽減する。
インクジェットプリント: 画像と色が薄れることを遅らせるために、できるならば冷蔵保管。最近のインクジェットプリンターは顔料インクを用い、染料のプリントよりも耐久性がずっと良くなった。
CDやDVD: できるならば低温から冷蔵保管。冷凍保管は層の剥離を起こす恐れがある。ディスク表面の傷や曲がりは、早期の障害を起こす。

[5]アクセス、利用、保存:デジタル化はその答えとなりうるか

写真を研究することの潜在価値と、どのように誰によって利用される見込みであるかということは、検討されるべき要素である。物理的に触るなどして繰り返し取り扱うことと光や熱にさらすといったことは、ネガあるいはプリントの状態に大きな影響を与える。コレクションの中でも古い画像、あるいはよく利用されるものについては、デジタル化を計画することが賢明であるかもしれない。デジタル化された複製物は、調査利用者にとって画像にアクセス、従って利用することがより簡単になる。またデジタル化は、オリジナルが被ると思われる消耗の程度を軽くすることができ、それが偶像的な画像である場合や頻繁に利用されるものの場合はことさらあてはまる。画像をデジタル化することは、アーカイブズ資料の効果と有用性を高めることとなり、特に機関内アーカイブズの場合は考慮に値する重要な点である。さらなる情報については、第11章〈アクセスとレファレンス・サービス〉と第13章〈デジタル化と画像化〉を参照すること。
膨大な写真コレクションを維持することは、少し事情が異なる。すなわちすべてのアーカイブズが、その写真コレクションの全てをデジタル化することはできない。デジタル化は、数千点にも及ぶ写真の長期的な管理においては、現実的な解決策とはなっていない。デジタル化とは、集約的に資源を行使する。例えば物理的なコレクションを整理、保管するために人手、アルバム、フォルダ、箱や棚が必要であり、その一方デジタルの場合では、人手、スキャナー、デジタル記憶装置のハードディスクの容量あるいは他の形が必要となる。コレクション、あるいはその一部をデジタル化することが正しいかどうかについて、詳しい情報に基づき決断するには、潜在的な利益と、それに要する労力や資源との両者を比較検討するべきである。
アクセスと利用の実績があることは、コレクションのどの部分が優先的に手当てされるべきであるかということを示すのは間違いない。特定の画像の需要が高いこと、あるいは周年事業を目前としていると、コレクションのある部分に労力が集約されることになるかもしれない。アーカイブズにおけるあらゆる活動と同じく、計画とゴールとを注意深く設定することは、写真コレクションの制御に役立つことだろう。

 

 


[6]コンテクスト情報と関係性

写真個々が重要ではあるが、写真によるかたまり、あるいはこのかたまりの中での独立した資料同士の相互関係は更なる重要性をもつ。写真のかたまりは比較することを促し、経年による変化を記録し、撮影者あるいはコレクターの意図や視点を解釈することを可能とする。写真のかたまりは、あるひとりの撮影者によるものの場合、画像の被写体ばかりか、芸術家としての作品をも記録する。学校で毎年撮影される写真は、そこには年々異なる生徒が現れるが、総じてみると学校の歴史の一部を記録している。写真についての情報を記録することとは、そのコンテクストについての情報を記録することである。それによって画像に真実性と真正性を与え、組織と調査利用者にとっては、記録としての価値を高める。

 

 


[7]どの整理・記述システムを採用するか

写真の整理と記述をするに当りどのシステムを採用するかは、さまざまな要素次第である。保管機関の収集対象は、大きな要素である。理想的であるのは、紙媒体の記録のための管理システムやデータベースが、写真コレクションの管理にも用いられることである。アーカイブズのコレクション全体に占める画像の量が、決定を左右することを忘れてはならない。あるアーカイブズでは写真コレクションを管理するために独立したシステムをいまだに利用しているが、データベースが洗練されていくに従ってこうしたことは減っていくだろう。利用者はまた、ひとつのデータベースでコレクションのあらゆる部分を横断的に検索できることを期待しているので、統合システムが究極的には望ましい。科学の特定分野や社会福祉といった固有の主題分野、あるいは企業や修道会のような特定の施設に専心しているアーカイブズであれば、総合大学や歴史協会にあるような一般的な歴史コレクションと比較すると、写真の数は少なく、恐らくコレクションの範囲ももっと狭いことだろう。
古いオリジナルを紙に複写したもの、あるいは今日撮影されたデジタル画像であろうとも、あらゆる画像を適切に管理するシステムを導入する必要がある。始める前に、どういった管理手段を用い、そして写真についてどういった情報を収集するかを明確にしなければならない。画像の形式は何であれ、基本的な情報を記録する必要があり、それは画像そのものと同時にアクセスができ、調査や検索の助けとなる。言い換えるならば、どういったメタデータを集め、画像を特定するための約束事、そして検索の基盤となる保管のためのシステム的な手法を確立する必要がある。単純に画像をスキャンして、利用のために組織のイントラネット上に(スキャンシステムによるコード付与を利用して)それを公開することは、コレクションを管理することではない。画像に関する基本的なメタデータが取得されなければならず、こうしたことは記述の過程で説明しよう。
利用する管理システムは、個別の表に一覧化された基本情報という形をとり、それをデータベースに入力することもできる。販売されているものもあれば、無料あるいは「シェアウェア」も入手可能である(タブラリウム(Tabularium)は無料で入手でき、画像管理に利用できる要素を含む。その他、販売されているものもある。第10章〈コンピュータを利用する〉を参照のこと)。最低限、それぞれの写真を個別に、明白かつ容易に特定するに充分な詳細を記録すべきである。それには、物理的なモノ資料としての画像と画像が示すものについての記述、そしてその履歴とコレクションの中で他の資料との関係性についての覚え書き、その画像がどのようにアーカイブズに来たのかという詳細と、そして重要であるのはその所在が含まれるだろう。固有の識別番号あるいは記号も不可欠である。

 


(第20回につづく)

Keeping Archives, 3rd
Copyright (c) The Australian Society of Archivists, 2008.
First published by The Australian Society of Archivists.

オーストラリア・アーキビスト協会からのご配慮に厚く御礼申し上げます。

 

翻訳者プロフィール

渡邉美喜 東京国立近代美術館企画課研究補佐員

翻訳に関するお問合せはNPO法人映画保存協会までお願いいたします。
NPO法人映画保存協会
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