『キーピング・アーカイブズ Keeping Archives』連載第21回

 

8. 様々な種類の写真コレクションを管理するための助言


■全般的なコメント

形式、日付、被写体、出所、あるいは撮影者に応じて、画像を物理的に並べ替えるかどうかは、あなただけが決めることができる。しかしながらコレクションを物理的に整理する最善の手法は、おそらく形式であろう。物理的に整理することとは、長期間の保管にとって最良の環境を提供し、その大きさや形に限らず画像を保護し、研究対象として画像の検索と利用を可能とするものでなくてはならない。知的な整理、すなわち記述をする過程で記録されてきた情報とは、被写体、日付あるいは、個別の資料を別々の場所で保管すべき出所によって、コレクションの本質的には異なる部分を再構成させることを可能とする。コンテクスト情報はまた、個々の画像、コレクションの中にある他の資料や画像との関係性を記し、資料とコレクションの情報価値を高める。

■個々の画像

一般的に言って、コレクションの中に現存している古い写真の数は、年代をさかのぼるほど減っていく。例えば、1901年から1969年までの画像の総量は、1980年代から1990年代にかけての総量より通常少ない。このことは、20世紀後半に趣味としての写真の高まり、20世紀初頭においては写真が珍しかったこと、そして多くの画像が単純に長年残っていないという事実を反映するものである。
アーカイブズにある古い画像の数量によっては、それぞれを個別に記述することが可能であるかもしれない。こうしたことは、近年のものには適うことのできない贅沢なことである。コレクション総体において写真に優先順位が置かれるのであれば、数人のボランティアか他のスタッフが写真コレクション全てに対し行うことになろう。
どの画像を完全に記述するかという決定は、コレクションに対する総合的な価値、画像の利用される可能性と入手可能な資源に基づいて判断されなければならない。記述する対象を、すべて、いくつか、画像のあるかたまり、特定の被写体によるものにするといったいくつかの選択肢を検討することが重要である。さもなければ1969年以前のすべての画像は個々に記述し、それ以降はコレクション、あるいは被写体のレベルにとどめるというように、線引きすることもできる。
一旦それぞれを個別に記述すると決めたら、記述とその過程はいずれの写真にとっても一貫していなければならない。画像は、アルバム、箱、ファイリングキャビネットなどに保管することができる。大事な事は、画像それぞれを隣り合うものから保護することである。

 



必要なもの
ゴム(ニトリル)手袋
適当な大きさのアルバム、箱、ファイリングキャビネット
十分な数のスリーブ(筒型封筒)・挿入物あるいはアーカイブズ仕様のファイルカバー
スリーブに入れるため、あるいはファイルの中の画像に間紙とするために切り取って用いるアーカイブズ仕様の紙
2B鉛筆
ペン─耐久性のある顔料ベースのもの
データベースあるいは情報を記録するシート

方法
●必要であれば画像を掃除する(第4章〈保存〉参照のこと)
●入手可能なあらゆるメタデータを管理システムに記録する
●個々の識別番号を付与する
●2Bあるいは同じように芯の柔らかい鉛筆を用い、画像個々の裏側に識別番号を書く。その時画像表側に影響を与えない場所を選び、左上隅など、できるならば全ての写真で一貫させる

アルバム
●画像番号を記したアーカイブズ仕様の紙と一緒に、画像をスリーブに入れる
●管理システムにアルバム番号を記す
●次の画像も同様に繰り返す

箱あるいはファイリングキャビネット(大型あるいはしっかりした画像に向く)
●アーカイブズ仕様のファイルカバーに画像を入れる
●ファイルカバーの表紙に画像番号を記す
●画像の間にアーカイブズ仕様の紙を挟みこませる
●ファイルに十分な数の画像を収めた時には、次のファイルに進む(詰め込みすぎないこと)

 


 


■アルバムの中の画像

多くのアーカイブズは、アルバムに仕立てられた写真をもち、そのいくつは年月をさかのぼることだろう。こうしたアルバムの多くは、厚紙が高い酸性を示したり、あるいはのりのいらないものなど、アーカイブズの基準を満たしていない。長期保存を維持するには、写真をこうしたアルバムからはがす必要があるかもしれない。決断をする際には、精密な点検を行うことが助けとなる。アルバムを解体するという判断するよりも前に、必ずアルバムの出所と写真にとってのアルバムのコンテクストを確認しなければならない。恐らくその撮影者がアルバムを編纂しており、そうした場合にはこの作業は大変重要となるだろう。
20世紀前半に製造されたような古いアルバムの場合、はがすことによる得失を良く比較する必要があろう。こうしたアルバムの多くは、それぞれのページの間にグラシン紙が挟まれ、それが保護となる障壁をなしている(例えグラシン紙がアーカイブズ仕様ではなく、劣化の率を高めようとも)。こうした場合、修復家に助言を求めることなしに画像をはがしてはならない。画像とアルバムを詳細に見てごらんなさい。その全体の状態があなたの判断を助けるでしょう。写真が大変劣化し、古色を帯びているのか。写真をはがすことが、アルバムに残したままであるよりも写真を傷めはしないだろうか。アルバムそれ自体に固有の価値があるのではないか。
一般的に、1960年代から1990年代にかけて製造されたアルバムは、画像を長期的に持続させることはほとんどできない。こうしたアルバムのほとんどは安価に作られ、なんらかの粘着力のある(「磁気を帯びた」)下地をもち、ポリ塩化ビニル(PVC)製のシートで覆われている。こうした問題が複合して写真自体に作用している。1970年代に撮影された写真には、見た目と色に如実に表れている。これは現像に用いられていた化学物質とプリントに使われた紙の種類によるものである。のりのいらない酸性のアルバムは、プリントまたネガにとっても理想的な環境とはほど遠い。最終的な保管場所が決まるまで、写真が一時的にアーカイブズ仕様の箱に保管されることになるにしても、すぐさまそれらをはがしなさい。酸性の有害なプラスチックと写真の保存のことを考えると、時間が重要である。接着剤のあるものは、写真がはがれやすくなるほど劣化する。デンタルフロスを写真の下に入れ、てこのようにして持ち上げたり、滑らせたりして外すことができる。またある場合は、接着剤を除去し写真をはがすためには、熱を少し加えてやると良い(例えばヘアドライヤーの低温で)。接着剤の粘着力のあるかすは、クレープゴム(靴底などに使われるゴム)を用いて取り除くことができる(第4章〈保存〉参照)。アルバムから写真を外せないのであれば、修復家に相談するなり、適切に保管するために高品質のオリジナルの複製を作るのが最善である。
古いアルバムから画像を外すことに決めたのであれば、原秩序やコンテクスト情報をできる限り保つよう気を付けなければならない。理想的には、「コレクション」を、ひとつの保管場所からより安定性のあるところへと単純に移動させることである。ある種の秩序が証拠であることもあるので、元のアルバムにあったのと同じ秩序で画像を保持することが重要である(それは大よそ年代順のように単純であったろう)。大きさが異なるためにそうすることが無理であるならば、コンテクスト情報の一部を保存するために原秩序を管理システムに記録しなさい。画像を記述する場合には、こうした画像が本来は一緒に一つのアルバムに、できるならば特有の配列によって収められていたことを示したある種の備考を作る必要がある。これは特定の番号、あるいはアルファベットのシステムとなろう。さらにはアルバムにあった情報、すなわち日付、被写体、名前、場所などを表わすキャプションなど、アルバムにあるあらゆる情報を記録する必要があるだろう。

 

 


■注意! 説明書き(刻印)を記録すること

画像のあるものは、その裏側に情報を豊富にもっていることがある。それは手書きのメモ、署名、あるいは糊づけされた新聞の切り抜きの場合もあるかもしれない。その情報を説明書きとして記録することが重要である。すなわちこれがコンテクスト情報である。しかしながら、情報が正確ではないかもしれないことを覚えておくことが大切である。というのも人物の名前は出来事の後に書き加えられることが多く、誤りが起こりやすい。

 

 


■大量の「楽しいスナップ写真」

一般的に言って、写真コレクションはほとんどの場合、1980年代あるいは1990年代以降に標準的であった6×4インチ〔日本ではL判、127×89ミリ〕のプリント(普通はカラー)が大量にある。これは、手ごろな、あるいは使い捨ての写真用品や現像方法の選択肢が増えていったことを反映している。時間と費用を要することから、それらすべてをアーカイブズ仕様のアルバムに収めるのは禁じられるであろう。しかしながら、レファレンスの照会や全般的な情報を得るために大まかに言えば何があるのかを知り、さらにはコレクション全体の概要を押さえる必要がある。
大量であるがゆえに、プリントそれぞれを個別に特定し、数量を把握することはすぐにはできないかもしれない。しかしながら、こうした「気取らない」あるいは「楽しいスナップ写真」を年ごとに分け、被写体、日付、あるいは撮影者を特定することはできる。こうした手法によって、大量の画像をより小さな「かたまり」へと素早く整理でき、この「かたまり」を後日に充分に整理、記述することができる。こうした作業は、ボランティアには理想的である。

 

 

 

 

必要なもの
アーカイブズ仕様の箱
2B鉛筆
アーカイブズ仕様のカード
ペン─耐久性のある顔料ベースのもの
アーカイブズ仕様の紙
裁断機あるいははさみ
何人かのボランティア(オプション)

方法
●本来はインデックス用カード(あるいは同じようなもの)のために作られ、なおかつ6×4インチのプリントにも適した箱を用いる
●プリントよりおよそ1センチ高くなるようにして、酸の含まれていないカードで間仕切りを作る
●酸の含まれていない紙をプリントと同じ大きさに切り、間仕切りを作る
●写真を間引く(以下の助言参照)
●準備段階として、出来るならば画像を年順に並べる。出来ないならば、目安として年代を用いる。衣服、車、あるいは画像の質といった特徴から判断する。
●1年あるいは10年単位で作業する
●来た時に収められていた封筒や束から写真を外し、日付や被写体、あるいは誰から来たというような封筒にあった情報をいかなるものも注意深く書き留める
●こうした情報を間仕切りのひとつに書き写し、プリントの上に見えるようにする
●データベースあるいは写真の索引/表の対応個所に入力をする
●それぞれの写真を端で立て、互いに積み重ならないようにする
●保護のため、事前に切っておいたアーカイブズ仕様の紙を、写真それぞれの間に挟み込む
●ある1年の全ての写真が被写体別に並び変えられるまで、以上の手順を続ける

注意 標準的なサイズにおさまらない写真があったら、違う大きさの箱を使いなさい

 



(第22回につづく)

Keeping Archives, 3rd
Copyright (c) The Australian Society of Archivists, 2008.
First published by The Australian Society of Archivists.

オーストラリア・アーキビスト協会からのご配慮に厚く御礼申し上げます。

 

翻訳者プロフィール

渡邉美喜 東京国立近代美術館企画課研究補佐員

翻訳に関するお問合せはNPO法人映画保存協会までお願いいたします。
NPO法人映画保存協会
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