『キーピング・アーカイブズ Keeping Archives』連載第24回(最終回)

 

10. モノ資料の保護と保管に関するいくつかの助言


■全般的なこと
●保管場所に収める前に、あらゆるモノ資料はきれいにしておくこと
●梱包する際に、モノ資料を触りすぎないこと
●モノ資料が箱の中で動かないように梱包すること
●箱に詰め込みすぎないこと
●箱を積み上げないこと
●保管資材が安全であること(長期間)
●不必要に触ることがないように、保管されたモノ資料ははっきりとラベルが貼られ、外から特定できること

小規模なアーカイブズでは、コレクションにあるさまざまなメディアのための特別な保管設備、それも適切な環境条件をもつものを作るだけの資源を持たないところがほとんどである。
コレクション全体に占めるモノ資料の数量と、モノ資料の中での種類の割合(例えば布地の割合に対する金属資料の割合)が、保管備品を購入するという意味において、資源をいかに投入するかの決定要因となるだろう。あなたの状況に応じ、布地を保管するために設計された専門的な保管備品に投資するのがより実用的であるかもしれないし、あるいはメダルやトロフィー、楯のための棚に投資するのが良いかもしれない。ありがちであるのは、「すべてが少しずつ」あるコレクションをもち、専門的な備品は、少なくとも当初は、手が届かないことである。従って「ベストプラクティス」を目指していながらも、さまざまな資料をできるだけ長期間良好な状態を維持するために、それらを保管するという目的に妥協しなければならない。アーカイブズ用仕様の箱や薄葉紙、その他の包装材といった良質の保管資材に投資することが、賢明な最初の一歩である。 以下は、小規模アーカイブズのコレクションにおいて、よく見られるモノ資料をいかに保管するかについての助言である。

■布地─吊るす
布地を保管する時の主要な目的とは、資料のいかなる部分への圧迫を軽減あるいは失くすことである。従って、時間とともに重力と布の重みが肩のような縫い目や継ぎ目を引っ張り、ゆがみや破れを生じさせることになるので、吊るすことは勧められない。もし吊るさなくてならないのであれば、使用するハンガーは充分に当てものがされ、それぞれの衣服に合うようにかたどられるようにすること。さらには、洗いざらしの漂白されていないキャラコ(平織)で出来たような個別のカバーで、一つひとつの資料を収めることも賢明である。これによって隣り合う資料同士に緩衝帯を設け、ほこり、光やその他の粒子から資料をある程度守ることができる。キャラコ製のカバーは、その中にある資料を虫、あるいはほこりやカビから完全には守らない。クリーニング屋からもらうプラスチック製のカバーは出来るだけ速やかに外して、モノ資料を保管する時は使わないこと。プラスチック製のカバーはモノ資料に汗をかかせるので、カビの理想的な培養地となってしまう。

 

 

■モノ資料のための重要なアドバイス
●何ごとをやるにしても可逆性があり、取り除く際にはまったく跡を残さないこと
●しまう前にモノ資料がきれいであることを確かめること
●布地を包むためには、大きな作業台あるいは会議机など十分な場所を確保すること
●特定を容易にし、調査目的や後日状態の比較に用いるため、梱包する前にモノ資料の写真を撮っておくこと
●小さなラベルを縫い付けるか、タグを付けて個々の資料を特定すること(タブは、アーカイブズ仕様のカードを小さく切り取り、穴あけパンチで穴をあけて自作しなさい。綿テープで取り付けること)
●保管容器や筒の外側で特定すること

 

■布地─折りたたむ
しわは、いつの日にか裂けたり破れたりしてしまう弱い部分を作るので、どのような布地であっても折り目は最小限にとどめるべきである。どうしても折らなくてはいけないのであれば、折り目を和らげるために、折りの下か内側にアーカイブズ仕様の薄様紙で出来た当てものや支えを入れることが賢明である。ある繊維は炭酸カルシウムの緩衝剤に影響を及ぼされてしまうため、あらゆる布地には緩衝剤が施されていないノンバッファの薄様紙を使うことが最善である。
布地の多くは、例え衣装箱であっても、ある程度折らずに箱に収めることはできない。ブレザーの袖やスカートの一部、ズボンの足は畳まれる必要があり、そうして箱に収まる。目標は、折り目の数を出来るだけ少なくし、出来る限り当てを入れることである。袖は薄様紙やぴったりと合うように特別にあつらえたキャラコで覆われた詰めものを当てていることが多い。同じようなものは、襟の支えや肩の縫い目に当てものとして、また丈の長いスカートの折り目を支えるために利用できる。
それぞれの資料がアーカイブズ仕様の薄様紙でくるまれ、箱の中で資料それぞれの間に薄様紙の層を確実に設けること。積み重ねる数は最低限にすること─上にある他のモノ資料の重みが底にある布地をつぶしかねない。大ざっぱに言って、深みのある箱一つよりも薄手の衣装箱が数多い方が良い。箱の中の資料にとっても、またアーキビストの労働安全問題といった観点においても、次のことは正しい─大きな衣装箱が満杯の時は、大変扱いにくくかつ重くなりうる。

保管のため衣装を梱包する時には

●包むことは吊るすことより望ましい。もし吊るすならば、特製の当てものをした支えのあるハンガーを用い、大きさが合うように縫った繊維製のカバーで覆うこと
●布地がきれいであること
●衣装の形に合わせて丸めたアーカイブズ仕様の薄様紙で当てものをするか、衣服の中に特製の当てものを入れる
●衣服をアーカイブズ仕様の薄様紙で包む
●適当な大きさのアーカイブズ仕様の保管箱で保管する

 



 


■布地─巻く
バナーや旗のような大きくて平板の布地は、巻くと上手に保管できる。芯となる筒は強く、かつ硬さがあり、巻かれている資料の重みに耐えられなければならない。配送用の筒(郵便局から来ることが多い)をアーカイブズ仕様の薄葉紙あるいはキャラコで作った保護的な緩衝材で覆えば、良い芯となる(これはアーカイブズ仕様ではない厚紙から浸出するものを防ぐためである)。布あるいはカーペットのロールの内側にある筒は、バナーや旗のような大きな布地には最良であるが、入手しにくいばかりか、長すぎることから保管しにくい。
始める前に、巻こうとしている布地がきれいであることを確認しなさい。清潔な大きな平面の上に、バナーより少し大きいアーカイブズ仕様の薄様紙を一枚か複数枚置きなさい。薄様紙の上に平らにバナーを置き、バナーの上にはつめもの(出来るならば)と薄様紙が層となるように配置しなさい。芯となる筒(それ自体がつめものと、あるいは薄様紙であてられていること)をバナーの一方の端に据えて、しわや折り目などが出来ないよう確かめながら巻き始めなさい。繊維に負担をかけるので、きつく巻きすぎてはいけない。またゆるすぎてもいけない。さもないと布が充分に支えられないだろう。巻き終えたら、両端と、その長さに応じて何箇所かを麻か木綿のテープで結び、大きな「ソーセージ」のようなものになる。適当な識別情報すべてが含まれるタグを、ロールの外側に付けることを忘れないように。

保管のため平板の布地を巻く時には

●布地がきれいであること
●アーカイブズ仕様の薄様紙を挟む
●アーカイブズ仕様の保管用の筒(あるいはアーカイブズ仕様の薄様紙で覆われたもの)に巻く
●清潔な薄様紙あるいは布で包む(巻いたものの大きさによる)
●両端を綿製の平テープで結ぶ。きつく結びすぎないこと
●注意:畳まれていた布地を巻いてはいけない

■布地─帽子とキャップ〔つばのない帽子〕
帽子とキャップを保管するのは難しい。というのも、その大きさや形状がさまざまであり、多様な素材から出来ていて、そのうちのいくつかは大変繊細であり、あるいは着用したことや年月によってそうなってきた。帽子とキャップは、そのつばがつくように保管してはならない。箱で保管する場合、山の部分をアーカイブズ仕様の薄様紙で覆ったつめもの、あるいはアーカイブズ仕様の薄様紙を常にあてること。帽子が持ち上がるように充分な当てものをして、つばに重みがかからないようにすること。擦れや損傷を軽減するために、それぞれの資料は個別に覆わなければならない。理想的には、特別に誂えた大きさのアーカイブズ仕様の箱を利用するべきである。予算が充分でないならば、A4あるいはA3サイズの紙を収める箱を一時的に用い、帽子と酸性である箱の厚紙との間に緩衝帯を作るために、アーカイブズ仕様の薄様紙で裏打ちをすること。作るのに時間がかかるが、ワイヤー製の帽子立ては良い選択肢である。角材でできた台座と芯に、帽子の山の部分にぴったり合うように当てものをした上部をもつものが理想である。こうしたものは固定された棚や戸棚の中に設置することができる。この同じ帽子立ては、展示目的にも利用できる。適当な識別情報を帽子に付けることを忘れないように。これは山の内側に縫い付けたり、綿テープで取り付けたりもできる。

 


 


■金属資料─トロフィーと楯
トロフィーや楯といった大きな金属資料は、大変丈夫そうに見える。しかしながらあらゆるものと同じく、その管理に十分な注意が払われないと、年月に応じて劣化していく。光り輝いている時にそれらは最良であるように見えるが、磨くこととは磨滅や、あるいは化学反応という形態であり、絶対に必要な時以外は行ってはならない。 トロフィーや楯に含まれるあらゆる情報を記録することを忘れてはならない。そしてその製造者も書き留めること。コンテクストや記述情報についてさらには、表16.5を参照すること。
トロフィーはさまざまな大きさがあり、いろいろな素材で出来ている。近年のものの多くはプラスチックで型抜きされたものであったり、真鍮やガラス、銀めっきやスターリングシルバー(925銀)であったり、素材の組合せのこともある。損傷は使われる時に起こる。それは主として磨くことであり、トロフィーが持ちまわりのもの、あるいはかつてはそうだったものの場合、年に1度贈呈される祭典の時である。楯は大よそ、板材で裏張りされている。トロフィーや楯を片づける前に磨く必要はないが、ほこりやすす、その他の堆積物をやさしく取り除くことによって、きれいにすることが賢明である。アーカイブズ仕様の薄様紙でそれぞれの資料を包み、気泡緩衝材〔エアーキャップなど〕の層で保護することができるが、環境条件が安定しているならば、こうしたことは必ずしもやらなくてもよい。主な目的とは、衝突やたたくこと、あるいは資料同士がこすれあうことによって、更なる磨滅や傷みを軽減することである。資料それぞれにはっきりと記しがなされ、あるいは識別情報を記したタグを付けていることを確かめ、アーカイブズの管理システムやデータベースで保管場所を記録すること。トロフィーや楯はアーカイブズ仕様の箱(大きさに余裕を持たせるため蓋を外すことが多い)や扉のない棚で保管することもできる。可動式の棚に資料が固定されずに置かれるならば、棚を移動させるとモノ資料が動くことを忘れないこと。

保管のため金属資料を梱包する時には

●金属を扱う時には常にビニル手袋を使うこと
●アーカイブズ仕様の、緩衝剤の含まれないノンバッファの薄様紙で梱包すること
●アーカイブズ仕様の、緩衝剤の含まれないノンバッファの保管箱に保管すること

保管のため繊細なモノ資料を梱包する時には

●資料の繊細な表面が充分に覆われていること
●保管箱の中で資料が移動しないこと

 

 

■金属資料─メダル、バッジ、ブローチ、ピンズ
メダル、バッジ、ブローチ、ピンズはアーカイブズのコレクションにおいて、大変価値のある、なおかつ意味ある部分を構成しうる。所属や褒賞を意味することから、それらは展示にはひっぱりだこの資料となることが多い。あわせてそれらが比較的強く、丈夫であることも、展示目的にとって理想的である。それらを識別し保管することは努力を要する。というのも小さいとはいえ、個々の資料が豊富なコンテクスト情報をもつからである。
個々の資料は識別情報を留めるために、タグを付けるべきである。小さなミュージアム用のタグを使うか、アーカイブズ仕様のカードを小さく切り取り、穴あけパンチで穴をあけて綿テープを取り付けるなどして自作しなさい。保管するに当り選択肢は多様である。その数量や利用頻度、それぞれに固有の価値などを考慮して決定すること。

●個別にアーカイブズ仕様の、緩衝剤の含まれないノンバッファの薄様紙で梱包し、識別情報を記す。それを小さなチャック付プラスチック袋(食品用)に収め、そしてこうした袋をクラムシェルボックス〔夫婦箱〕のような小さな箱に入れる
●小さな資料用に特別に作られた専門的な保管/展示箱を購入する
●高密度の発泡材または、アルミホイルあるいはポリエステルフィルムで覆われたポリスチレンと、アーカイブズ仕様の薄様紙や洗いざらしのキャラコ(と同じようなもの)を用いる。発泡材にピンを刺すことによって、それぞれのバッジを「取り付ける」。これらを展示ケースの中に入れるか、アーカイブズ仕様のカードボックスの中で積み上げる

 

 


1 折りのための刻み線を上にして、箱を平に置く。箱の蓋となる部分は奥にする。
2 中央の折り返しを持ち上げる。
3 側面を折る。
4 箱の底部と背が接する側を折り、箱を直立させる。
5 残る二つの側面の折り返しを折る。
6 正面の端を上に持ち上げ、側面の折り返しを押し込み、指を入れる穴の位置を揃える。
7 側面の折り返しを内側の支えとなるように折り、底の溝にでっぱりを入れる。
8 蓋部分を折り、折り返しを押し込む。

注意:箱を組み立てるのにテープも接着剤も必要としない

【図16.1:アーカイブズ箱の組み立て方】

 

11. まとめ

アーカイブズにやって来たさまざまな他の「モノ」を管理することとはある試練を供し、適切な保護や保管を準備するという観点においてはとりわけあてはまる。本章は、小規模あるいは機関内アーカイブズが共通して直面する問題の幾つかをいかに解決するかについて、助言や用例を示してきた。こうしたアーカイブズにやって来た「モノ」の範囲は、控え目に言うならば大変興味深い。あなたのコレクションにある資料それぞれにとって理想的な環境が、必ずしも実現可能ではないかもしれないことを覚えておくことが重要である。すなわち、清潔で安定した環境を目指し、資料それぞれをほこりや有害生物、その他の害の原因となるものから守ることに最善を尽くす。資料が重要な価値をもち、努力したにもかかわらず劣化してしまったならば、修復の専門家に訴える時である。彼らが資料を補修し、今後の保管の解決策について助言することだろう。
「モノ」を知的な方法で管理することとは何か。指針となるのは、紙媒体の記録に対して行うのと同様に、資料を取り扱うことである。出所や関係性、そして製造者、利用者、年代幅といったコンテクスト情報などを記録する。このようにして、資料はアーカイブズの一部となり、あなたのアーカイブズが存在する目的、対象とされる人々によって資料が見られ、利用されるようになるだろう。

 


(連載終了)

Keeping Archives, 3rd
Copyright (c) The Australian Society of Archivists, 2008.
First published by The Australian Society of Archivists.

オーストラリア・アーキビスト協会からのご配慮に厚く御礼申し上げます。

 

翻訳者プロフィール

渡邉美喜 東京国立近代美術館企画課研究補佐員

翻訳に関するお問合せはNPO法人映画保存協会までお願いいたします。
NPO法人映画保存協会
http://www.filmpres.org/
info[at]filmpres.org  *[at]の部分を「半角アットマーク」に変更してください。