必読のスーパーサイキック仙人アクション!―『全訳 封神演義』全4巻刊行開始記念特集

 

中国古典神怪小説の集大成とも言える『封神演義(ほうしんえんぎ)』(全100回)を、全4巻で邦訳を施した『全訳 封神演義』が刊行開始となりました。
本特集では、監訳者・訳者の方々に、『封神演義』の魅力について語っていただきました。

 

『封神演義』(ほうしんえんぎ)とは

 中国明代に成立した神怪小説で、『商周演義』、『封神伝』、『封神榜』、『封神榜演義』とも呼ばれる。史実の殷周易姓革命を舞台に、仙人や道士、妖怪が人界と仙界を二分して大戦争を繰り広げるスケールの大きい作品。
文学作品としての評価は高くないが、中国大衆の宗教文化・民間信仰に大きな影響を与えたとされる。
著者(編者)は一般に許仲琳とされることが多いが、定説はない。

 

刊行について

俗世に関わらず、道を修めるために修行している仙人たちが運命で定められているという理由で人界の革命に続々と参加してくる。哪吒が竜宮で暴れたり、楊戩が哮天犬を使って戦ったり、仙人・妖怪たちも人間以上に戦いパワフルに活躍する物語。それこそが『封神演義』!
歴史寄りな『三国志演義』や『水滸伝』とは違い、『西遊記』の様なファンタジー要素やバイオレンス要素が豊富で全然、読み飽きない。
様々な故事やマンガ・アニメで知られている物語の原典を全訳しました。ボリュームも多いので読み応えたっぷり。めくるめく中国古典ファンタジーの世界へ、ようこそ!

 

監修者・訳者インタビュー

監修者と訳者に、翻訳や、読みどころについてインタビューを行ないました。

◎二階堂善弘(にかいどう・よしひろ)
関西大学文学部教授。
著作に『封神演義の世界―中国の戦う神々』(大修館書店、1998)、『中国の神さま―神仙人気者列伝』(平凡社新書、2002)、『中国妖怪伝―怪しきものたちの系譜』(平凡社新書、2003)、『道教・民間信仰における元帥神の変容』(関西大学東西学術研究所、2006)、『明清期における武神と神仙の発展』(関西大学出版部、2009)、『アジアの民間信仰と文化交渉』(関西大学出版部、2012)。


Q1.『封神演義』を訳してみて大変だったところは?
解説でも書きましたが、とにかく文章の文体がバラバラなところが大変でした。
基本的に『封神演義』は漢文なのですが、『書経』に基づく固い漢文の表現がたくさん出てくる一方で、ものすごく口語的な白話のところもあって、面倒であったのは確かです。特に殷の大臣たちが紂王を諫める場面のセリフは凝っていて大変でした。紂王もいちいち聞いていないで、さっさと途中で誅殺してくれないかと思ったほどです。
さらに、解説に書いた通り、前後で矛盾するところがたくさんあるのも頭が痛かったですね。


Q2.1巻の見所は?
1巻はまだそれほど神仙や道士たちの法術合戦が出てきません。やや見どころが少ないのですが、やはり目立つのは「哪吒、東海をさわがす」の段でしょう。『封神演義』のなかでも、おそらく一番有名なところだと思います。
あとは姜子牙の下界に降りてからの、初めの部分のダメぶりが面白いかもしれません。これは人材の適材適所についてのいい見本だと思います。


Q3.好きな神仙はいますか?
神仙ですと雲中子になります。この人は『封神演義』成立前から、この物語で活躍してますね。
あと弟子たちでは哪吒・金吒・木吒の三兄弟が好きです。物語で三兄弟のからみが少ないのが残念です。


クアラルンプールの木吒太子廟の三兄弟◎(左から)哪吒・木吒・金吒


◎山下一夫(やました・かずお)
慶應義塾大学理工学部准教授。
著作(分担執筆)に『近現代中国の芸能と社会―皮影戯・京劇・説唱』(好文出版、2013)、『中国皮影戯調査記録集―皖南・遼西篇』(好文出版、2014)、『明清以來通俗小說資料彙編』(博揚文化事業有限公司、2016)。


Q1.『封神演義』を訳してみて大変だったところは?
翻訳作業は、小説全体を4つに割って、それぞれ4人の担当者で下訳を行い、それを二階堂先生が中心となって皆で修正を加える、という方法で進みました。
全4冊で出版ということになったので、ほぼ1人1冊分訳したわけですが、これがものすごい量なわけです。ともかく、やってもやっても終わらない。1回分を訳すのに丸2日はかかるのですが、大学の仕事や他の研究の作業もあるので、翻訳だけに時間を使えるわけでもありません。
そうした意味で、一番大変だったのは「時間を確保すること」でした。


Q2.1巻の見所は?
1巻は、他の先生方も挙げておられますが、やはり何と言っても哪吒のエピソードが一番の見所だと思います。もともと『封神演義』とは別に単独で語られていた物語だということもあり、これだけで1つの完結したお話になっていますし、哪吒のキャラクターの魅力もあります。3巻の解説でも書きましたが、『封神演義』から哪吒のエピソードが切り出されて何度も映画になっていったのも、やはりこの部分が圧倒的に面白いからでしょう。

Q3.好きな神仙はいますか?
西方教の準提道人が好きです。
これ、元は仏教の準提菩薩で、准胝仏母とも言い、さらに元を辿るとヒンドゥー教の女神になるのですが、どうしてそれが、阿弥陀如来が元の接引道人と一緒に行動しているのか、不思議だったのですけれど、大学院生の時、明代に準提浄土信仰があったことを示す資料を見つけて、なるほど『封神演義』の元ネタはこれだったのかということが解りました。これは私の中国語でのデビュー論文にもなり、今の自分の研究の出発点になったので、以来準提道人には特別の愛着を感じています。今でも台湾などで準提菩薩を祀った寺廟を見つけると、思わず手を合わせてしまうくらいです。



◎中塚亮(なかつか・りょう)
愛知淑徳大学・金城学院大学等非常勤講師。
著作(分担執筆)に『フルカラーで楽しむ―中国年画の小宇宙』(勉誠出版、2013)、『中国古典文学と挿画文化(アジア遊学171)』(勉誠出版、2014)。


Q1.『封神演義』を訳してみて大変だったところは?
特に武王が紂王を伐つあたりでは、結構『尚書』などを踏まえたり引用したりしているのですが、詔勅など出典の存在が予想しやすいところはともかく、文中にいきなり埋め込んである箇所は厄介でした。訳していって何か不自然だなと思って確認すると、途中数文字だけ引用であったりとか。その場合は当然出典元の文脈を理解しないとうまく訳せないのでいささか手間どりました。
また、自分の担当箇所には封神名簿が含まれているのですが、定本とした明版では二回封神されている人物がいるなど、そのあたりの混乱をどう処理するかは悩ましかったです。


Q2.1巻の見所は?
「哪吒、東海をさわがす」や妲己の入内をめぐる一段(「進妲己」)、妲己が姜皇后や梅伯などの忠臣達を害する一段(「炮烙柱」)、伯邑考の一段(「文王卜卦」「伯邑考」)あたりはよくお芝居にもなる著名な場面です(「」は演目名)。『封神演義』を語るうえで外せない場面といえるのではないでしょうか。
なお、文王が姜子牙を招く場面(「渭水河」)は、お芝居では姜子牙が文王に先立って挨拶に来る武吉や姫発を「小魚はお呼びでない」とあしらうなどコミカルなやりとりが見られるのですが、小説ではその軽妙さは見られません。ずいぶん真面目な姜子牙像となっていますね。



◎二ノ宮聡(にのみや・さとし)
関西大学等非常勤講師。
主な論文に「北京の碧霞元君廟会―五頂と妙峰山と丫髻山」(関西大学中国文学会、2012)、「北京の廟会の復興と現状―二〇一一・二〇一二年春節廟会を中心に」(関西大学中国文学会、2014)。


Q1.『封神演義』を訳してみて大変だったところは?
それぞれの登場人物の口調です。紂王や妲己は、天子と皇后という誰もがイメージする口調にすればいいだけです。
ただ、多くの場合、登場人物の身分と物語での行動を見ながら言葉遣いを考えました。例えば黄飛虎は、将軍として多くの戦場で武勲をあげているので、勇ましく荒々しい言葉を考えました。
しかし、朝廷では上奏する場面も多く、意外と思慮深い人物として描かれています。なので、勇敢さを残しつつも、穏やかな言葉遣いになるよう苦労しました。登場人物一人一人について性格を考えて、相応しい言葉遣いにしたつもりです。


Q2.1巻の見所は?
妲己によって商王朝が内側から崩壊していく過程です。妲己を後宮に迎え入れた紂王は、妲己の言葉しか聞かなくなり、政治を顧みようとせず、臣下を惨い刑罰で処刑します。
さらに費仲・尤渾の二人が見事な小悪党として立ち回り、諸臣の非難を一手に引き受けます。
このように妲己によって王朝の屋台骨が崩され、費仲と尤渾がそれに拍車をかけ、商王朝が崩壊に突き進む中で、多くの家臣が振り回される様子にも注目してほしいです。
妲己は、本当は女媧娘娘の命令を忠実に実行しているだけなのですが、憎まれ役になり、可哀想ですね。


Q3.好きな神仙はいますか?
好きというか、今回、翻訳を担当した部分で思い入れが強いのは趙公明です。十天君の援軍にやってきて、圧倒的力で闡教側の神仙を打ち負かしていましたが、姜子牙の祈祷により、あっけなく倒されてしまいました。呪詛に苦しみ、日ごとに弱っていく様子、さらに聞仲など周囲の人々の悲嘆に暮れる姿が印象に残りました。
また、趙公明を助けに来た三霄娘娘も、元始天尊と太上老君にあっけなく討たれ、いかに強い力を持つ神仙であろうと、さらに上位の神仙が登場すると為す術なく敗れることに、覆しようのない力関係、逆らいようのない天命がよく表れていると思いました。

 

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