時を隔ててもなお読まれるべき、重要な論文を大胆に収録。
各巻ごとに全体の「総説」、各論文を読み解く「解説」及び「研究史の総括と展望」を附し、これまでの研究成果を整理、今後の新たな展望を示す。
第1巻では、「主題」とは何か、という物語を読み解く根源的な問いを根本から再検討する。
第1部 多様な「主題」論
物語の「主題」論は、論者個々の読書行為の所産である。作者は『源氏物語』の世界を通して何を語ろうとしたのか? テクストの生成された時代の後宮、儀礼史から見た『源氏物語』論、庭園を仙境に見立てる漢詩文と物語叙述との連関を論ずることもまた「主題」論と呼び得よう。楽の音の相承から錯綜する血脈を照らし出す「主題」論、「もののけ」「人笑へ」「音」「救済」の「主題」論等、様々な相貌の「主題」論を読む。
第2部 「主題」論への懐疑
文学の「主題」とは、そもそもア・プリオリにあるのか?
『源氏物語』こそがこうした問いへといざなってくれる。かつて本居宣長は「もののあはれ」なる「主題」を論じたが、近代以降の秀逸な『源氏物語』論は、先行する「主題」論への根源的な問い、もしくは懐疑を有していたのではなかったか。成立論の先蹤とされてきた和辻論文をもそうしたコンテクストの中でとらえなおした上で、その時々の「主題」論の先端をおさえてゆく。
目次
◎総説―高橋亨
第1部 多様な「主題」論
桐壺更衣の政治性/吉海直人
嵯峨朝復古の桐壺帝―朱雀院行幸と花宴/浅尾広良
仙境としての六条院/田中隆昭
碁を打つ女たち―『源氏物語』の性差と遊びわざ/松井健児
浮木にのって天の河にゆく話―「松風」「手習」の歌語/後藤祥子
六条院と女楽―喩としての音楽/小嶋菜温子
『源氏物語』の「人笑へ」をめぐって/原岡文子
物の怪誕生―柏木の位相へ/阿部好臣
〈音〉を聞く人々―宇治十帖の方法/三田村雅子
愛執の罪/鈴木日出男
◎総括と展望
転移する「主題」論―意味生成のテクストとしての『源氏物語』/上原作和
第2部 「主題」論への懐疑
源氏物語について/和辻哲郎
源氏物語―その主題性はいかに發展しているか/秋山 虔
源氏物語における人物造型の方法と主題との連関/森 一郎
晩年の光源氏像をめぐって―幻巻をどう読むか/神野藤昭夫
《公》と《私》の世界/西郷信綱
車と舟/葛綿正一
物語学にむけて―構造と意味の主題的な変換/橋 亨
日本的な、あまりに日本的な……―テクスト理論の来し方・行く末/高木 信
◎総括と展望
「主題」論が対象とする「部分」と「全体」/陣野英則