『キーピング・アーカイブズ Keeping Archives』連載第4回

 

6. 視聴覚記録の取得

一般的に、アーカイブズのコレクションは管理上のニーズや文化的なニーズに応えて作成される。記録としての視聴覚資料の取得は、組織の収集方針または取得方針を支え、それらの方針に貢献するものだ。理論的には、資料の評価選別は取得に先立っておこなわれるべきだ。しかし往々にして、アーキビストにはコレクションに含まれる視聴覚メディアの取得を統制できない。むしろ「どこか置き場はありますか?」といったメモ書きと共に机や棚の上に唐突に現れるのが視聴覚メディアなのだ。コレクションの仲間入りをしても査定されず手つかずのまま、既に何年も過ぎていることもあるだろう。

予算に限界がある中で、終わりなき予算の投入を必要とする記録を持ち続け、維持するのかどうか。この決断は難しい。視聴覚メディアをコレクションの中に保持すれば、資金・職員・専門的な機材・取り扱い・永久的なサイクルとしてのコピー作成やマイグレーションへの対応がアーカイブズの重荷になることはほぼ間違いない。元来備わっている特徴として、視聴覚記録の維持にはお金がかかるのだ。

しかしテクノロジーの進歩は、企業の業務における視聴覚記録の使途を一層広げるだけでなく、作成・収蔵・保存・アクセス対策における費用対効果も改善するだろう。デジタル技術の入手可能性やそのコストが平均的なアーカイブズに手の届くものになれば、(異なるメディアのニーズに基づいた)厳密な選別方針や取得方針の必要性はなくなるかもしれない。

視聴覚記録の取得に際しては、次のことを考慮しよう。

その記録には今まさに何が必要とされているのか?

  • [設備]専門的な収蔵庫(冷蔵倉庫・静的記憶装置〔※SRAM等〕・デジタルストレージ)が必要か? 必要な収蔵庫が用意できないとして、何か解決策があるだろうか?
  • 記録を取り扱い、試聴し、コピーを作成するための機材。必要な機材を維持できるのか? 内部にない場合、容易に、あるいは地元で機材にアクセスできるだろうか?
  • データファイルの記録の場合、アーカイブズはそのファイルを認識・読解・コピーできるのか? アーカイブズはデジタル保存にいかなる姿勢で臨んでいるのか?
  • アーカイブズの職員は、視聴覚形式の認識方法や取り扱い方法を知っているのだろうか?

その記録はアーカイブズのメディアとして相応しいだろうか? メディアの管理のため、事実上コレクションに入ってくるメディアの種別を制限することもある。

  • 組織や寄贈者に対して、確実な保存とアクセス提供に相応しいメディアで視聴覚記録を作成するよう促せるだろうか?アーカイブズの活動に適したコレクションの形式を提言できるだろうか?

記録の古さは? 視聴覚フォーマットの陳腐化と劣化の問題が続いている以上、手遅れになる前に早めに視聴覚記録を保護する必要があるだろう。上部機関や寄贈者から視聴覚記録を積極的に取得することは可能だろうか?

記録の状態は? 劣化はどの程度進行しているのか?既に陳腐化しているのか? 保存を確実にするための(職員の時間・機材・収蔵、再格納の面からも、継続中のコピー作成やマイグレーションのための資金の面からも)予算・人員を確保できるのか?

残存する最良の元素材なのか? 唯一無二か?あるいは別所に、あるいは手元のコレクションの中にコピーが存在しているのか?収蔵するコレクション中の劣化してしまったコピーに置き換わる記録になり得るのか?

どのようなドキュメンテーションが提供されているのか?—記録の同定/識別と補足的ドキュメンテーション―ノート・日誌・インデックス・ラベル・制作ファイル 情報の正確性と一定性を確実にするような資料が作成されているのなら、その資料を作成している組織に雛形を提供したいと思うだろう。

記録の完全性をいかにして検証し、裏付けるのか? 形式によっては証拠をほとんど、あるいはまったく残さず、実に容易に改変できる。それだけに、その真正性に常に確証を持てるだろうか?

■寄託の条件を明確に定める

■権利と制約

資料の権利と使途は、取得段階で明確にすることが大切だ。視聴覚記録が秘密の内容、物議を醸すような内容、または個人的・民族的な内容に関わる場合、使用制限が加わることがある。例えば、オーラルヒストリーのような未公表の記録は、インタビューを受けた側の意向で公開が制限されることもあるだろう。権利(ライツ)には、録画権・上映権・道徳的な権利が含まれることもある。先住民や少数民族のコミュニティの記録にも、特別な制限が生じるかもしれない。これらは著作権の範疇ではないかもしれないが、アーカイブズには倫理的に、そのような権利と制限を認識・記録・順守する義務がある。先住民や少数民族のコミュニティに関する視聴覚記録については第18章(動的映像)に譲る。

記録を残すときに次のことを決定しよう。

●アーカイブズは資料のアクセスと利用のためにいかなる権利を持つのか?

●誰に対して制限を適用するのか?

●制約の年限は?

●本来の寄贈者に連絡を取れない場合、他の誰がアクセス許可を代行するのか?

●記録を扱う際に特別な条件はあるのか?

■著作権

資料の著作権を避けて視聴覚記録の権利および使途を議論することはできない。視聴覚記録の著作権対策は、場合によっては複雑になり得る。例えばラジオ番組に脚本・出演者・BGMの著作権が含まれるように、一つの記録に複数の著作権が同時に存在することもある。著作権について詳しくは第11章(アクセスとレファレンスサービス)を参照されたい。

視聴覚資料の場合、手短に言って著作権とは、権利者に与えられた自身の作品に対する独占的な財産権だ。著作権はドラマ性のある芸術的な作品、映画のサントラ、ラジオ番組などの視聴覚記録にも含まれることがある。

視聴覚作品に著作権が発生するのは次の場合だ。

●再作成

●配給

●興行

●派生著作物を作成する権利

●公然陳列の権利

権利所有者が誰なのか、可能な限り明確にしよう。アーカイブズに視聴覚メディアが寄託されても、権利まで自動的に委譲されるわけではない。著作権者は通常、記録をコピーされたくない、あるいは無断で供給してほしくないと考える。アーカイブズまたは組織の職員は、所蔵する視聴覚記録の法的権利と責任をよく理解することが重要だ。職員や研究者による視聴覚記録の独断的な使用は、寄贈協定や著作権義務の違反につながることもある。違反があれば、組織はいつ民事裁判を起こされても、罰金を課されてもおかしくない。アクセス・展示・インターネット利用・保存の対象となる資料の使途に関する方針を発展させることは有益だ。次の段階として、これらの方針の実践方法について職員を教育することになる。

著作権法によって、著作権者にはオリジナルの作品をコピーする独占的な権利が与えられている。著作権者はまた、他者にその作品のコピー作成を許可するにあたって、支払い義務を課す権利を持つ。これによって、アーカイブズは難しい立場に立たされるようにも見えるし、アーキビストが記録に対して無力であるような気にもさせられる。しかし著作権法は実際のところ、非営利または営利組織が視聴覚遺産を救済する上で果たす重要な役割を認めている。オーストラリアの「著作権法(1968年)」には、図書館やアーカイブズにおけるレファレンスまたは保存目的でコピー作成が生じるような状況を扱う条項がある。

 

(第5回につづく)

Keeping Archives, 3rd

Copyright (c) The Australian Society of Archivists, 2008.

First published by The Australian Society of Archivists.

オーストラリア・アーキビスト協会からのご配慮に厚く御礼申し上げます。

 

翻訳者プロフィール

NPO法人映画保存協会

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映画保存協会(Film Preservation Society, FPS)は映画フィルムを文化財として保存する活動に取り組むNPO法人です。

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