『キーピング・アーカイブズ Keeping Archives』連載第5回

 

7. 視聴覚記録の編成と記述

記述に関して、視聴覚記録はあらゆるアーカイブズと変わりがない。要するに記述の役割とは、研究者に対して個々の記録の性質およびそのほかの記録との関係を知らせることだ。ただし、視聴覚記録の記述には特に次のようなことが求められる。

●アーキビストや研究者の意識を記録の情報コンテンツへ向けさせる。

●アーキビストに対してその記録の保存・アクセス業務に関わる十分な技術情報の記述を提供する(これは研究者にとって有益な情報になるだろう)。

●例えば全2巻の1巻目と2巻目・ノーカット版・編集版など、類似アイテムを区別する。

通常のアーカイブズの管理・記述の作業と同様、視聴覚資料の出所と原秩序を判別することが最初の業務になる。一般的に、たいていのシリーズは同一の記録メディアのアイテムから成るが、当然ながらシリーズの作成期間に異なるメディアが導入されることも考えられる(例えば、オープンリールを使って開始したオーラルヒストリーの記録のシリーズが、後にカセットテープに移行することもあるかもしれない)。一つのシリーズ中のこのような連続性を反映し、原秩序を維持しつつ記述すべきだ。原秩序が見つからなければ、メディアに基づいてシリーズを作成するのが編成方法と保存のニーズに叶う最善の方法だろう。

知的な編成・記述に記録の原秩序が反映される一方で、視聴覚資料の具体的な保存の必要性を考えると、物理的な編成は知的な編成とはかなり異なったものになりそうだ。資料を物理的に編成する場合、収蔵スペースや素材の保全といった実践的な課題を考慮すれば、同じ形式の視聴覚記録と一緒に収蔵することがその記録にとって最良の道となるだろう。この場合、記録の原秩序の確実な記述が欠かせない。

内部には公共アクセス用のコピーのみを残して、オリジナル素材は専門性の高いアーカイブズに送ることが決定されたとしよう。その場合、適切に素材のニーズが満たされる一方で、知的コントロールに出所および原秩序が反映されていれば、記録の価値も保持できていることになる。しかしこの方法には落とし穴もあるため、専門性の高いアーカイブズとの間で取り交わす寄託条件、とりわけ記録の使途と保存に対する責任は、極めて明確に設定する必要がある。

[1]視聴覚記録を記述する―シリーズレベルかアイテムレベルか?

音声記録には、どのレベルの記述が相応しいだろうか。物理的キャリア、つまり記録とそのコンテンツの形態に一貫性があれば、シリーズレベルの記述で十分かもしれないが、多様な音声記録に対するアクセスを可能にしたければ、アイテムレベルの記述が求められるだろう。詳細なアイテムレベルの記述が最も生かされるのが動的映像だ。とりわけ成果物のコンテンツ情報がアイテムごとに繰り返される複数のコンポーネントを伴う場合、動的映像コンポーネントの物理的な種別が記述されていなければ、違いを見極めることができない。

似通った記録が多いことから、専門性の高いフィルムアーカイブはこの問題を回避するため、成果物のコンテンツ情報を扱う包括的な題名エントリーを作成し、この〈包括的な〉題名に多様なコンポーネントをぶらさげて、物理的記述を添えいく。このやり方に、フィルムアーカイブと一般的なアーカイブズの構造的な分岐点が見受けられる。フィルムアーカイブの記録のかたまりは、ただひたすら映画作品から成る。従って、最も相応しい制御形式は題名ごとの編成と記述だ。記録の生み出されたコンテクストに注目する出所の概念は、フィルムの編成においては方法論として優先されない。例えば制作ファイル・冊子型の台本・監督や製作者らに関連するファイルなどのコンテクスト情報もフィルムアーキビストにとっては重要だが、その編成方式を統制するものではない。

もう一つ考慮するなら、何にせよほとんどのメディアが脆弱な点だ。中には一度の再生でだめになるほど脆いものもある。このことが、視聴覚資料の編成を難しくしている。要するに、価値を査定するために音や画の記録を再生すると、その過程で損傷を与えてしまうこともあるのだ。それゆえに、録音を伴うそのほかの形式の記録も極めて重要だ。

紙資料および視聴覚記録の作成に関する目録は、記述の過程で助けにもなる。記録に手を触れる回数を減らせるので、こうした紙のファイルは取得過程においても有益だ。視聴覚記録のキャリアは、少なくともその音や画の記録に関するいくらかの情報をパッケージやラベル上に持っているものだ。従って、リーダー・缶・カセットテープのケース上の情報は極めて重要だ。容器の入れ替えを行うなら、この情報を忘れず書き残そう。情報の痕跡が捉えづらいため、容器入れ替えの際には情報の性質やその意味するところがはっきりしないこともあるだろう。オリジナルの容器をコピー機でコピーするか、あるいはスキャンするのが最も確実な方法だ。オリジナルの容器の材質を記録することもまた大切だろう。場合によっては、オリジナルの容器自体が価値を持つこともある。

視聴覚記録の記述は、時にかなり技術的なものになる。経験則から言って、もし入手できるなら、技術情報も記述に含めるほうがいい。要求される最も基本的な情報は、そのアイテムのタイトルと、それが視聴覚記録だという事実だろう。もし記録が作成された日付や期間がわかれば、これもまた有用な基本情報となる。視聴覚の目録規則は、例えばコンテンツの作成に関する情報など、画や音の記録のデータ要素の記述に続いて、物理的な特徴に焦点を合わせる。小規模アーカイブズのコンテクストでは、アーカイブズの利用者にその画や音の記録へのアクセスを一層促すような具体的なコンテンツ情報を追加できるだろう。入手できるのであれば、記述には次のような情報が有効だ。

●データ要素

  • [タイトル]例:プログラム・断片・エピソード・インタビューの題名
  • [日付]録音・録画日、放送日、制作日
  • [個別の請求記号]例:アイテム番号・バーコード・UMI(Unique Material Identifier)〔※UMIは音楽・映像資料の識別子として用いられる[current.ndl.go.jp/node/11886]〕
  • [作成者情報]
  • [クレジット]作品の作成に関与した重要な人名、商業作品なら製作者・監督・製作会社・制作会社などの主要クレジット
  • [人物]例:司会者・インタビュアー・インタビュイー

●コンテンツ情報

  • (画や音の記録の)[ジャンルまたはスタイル]例:インタビュー・レポート・生中継・野外録音・オーラルヒストリー
  • [内容]例:録音のテーマ・記録されている人物・概要・あらすじ

●物理的または技術的特徴

  • [量]例:2本のカセットテープの内2本目、3枚のCDの内1枚目
  • [持続時間]長さ(例えば動的映像の場合は〈ft〉)または時間
  • [視聴覚素材の一般的類型]例:リール巻きのフィルム・磁気テープ・光学ディスク
  • [コンポーネントの具体的な種別]例:Hi8テープのBWFファイル・オリジナル原版・インターポジ・デジベータ
  • [キャリアの物理的サイズ]例:12in アナログレコード・7in オープンリール
  • (映画フィルムの)[形状]8mm・16mm・35mmなどフィルムの幅
  • [色の特徴]カラーか白黒か
  • [音の特徴]無声・ミュート・再生時の回転速度(例:33 1/3 rpm)・トラック数(例:4トラックのカセットテープ)・エンコーディング(例:ドルビー・ステレオ・モノラル)

オーストラリアにおける一般的なメタデータ標準として、オーストラリア標準5044:AGLSがメタデータをカバーしている(音声記録または動的映像を含むデータに関する記述データ)。これは、公表された資料を人やコンピュータが具体的に発見して同定/識別することを可能にしたリソース発見型のメタデータ標準だ。この標準を順守するには、5つのメタデータ要素を揃えねばならない。その必須要素とは、1. 作成者・2. 題名・3. 日付・4. テーマまたは機能・5. データ要素または入手可能性だ。この視聴覚目録規則は、一般的にタイトル情報・制作日を含む作成者情報・物理的情報の3部構成となっている。

コピー作成のような保存活動のドキュメンテーションも欠かせない。アーカイブズのドキュメンテーションによって、オリジナルとコピーとが明確に紐付けられることが肝要だ。アイテムを同じシリーズ中に保持すれば、同じ情報を持つ全コピーが知的に繋がるので、これは簡単に達成できる。とはいえ、制作会社が作成したアイテムとアーカイブズが作成したアイテムを混同することがないように、十分な注意を払う必要があるだろう。保存用コピーを作成するなら、オリジナルから分離して新たにシリーズを作成する方法も有益だ。こうすれば決して知的にオリジナルと混同されることはない。災害に備えてコピーのシリーズをオリジナルから分離して収蔵するという賢明な策も可能になる。この場合、コピーにもオリジナルの統制記号(アイテム番号)を与えることになる。

[2]視聴覚記録のデータファイルを記述する

デジタル記録を記述するなら、記述する情報の層をもう一つ増やすことも考えられる。いかなる大容量の収蔵システムにおいても、データ一式を他から識別することが重大な課題となるが、この課題に取り組むために生み出されたのがメタデータの概念だ。メタデータは〈データについてのデータ〉と説明されることが多い。この概念については第8章(編成と記述)と第15章(デジタル・レコードキーピング)に詳しい。
あらゆるデジタル形式にも共通することだが、視聴覚のデジタルファイル用のメタデータは、単なる記述や文脈上の情報ではなく、保存・管理・アクセスのためファイルの同定/識別を可能にするような構成になっている。ファイルを見つけることができなければ、保存できないばかりかアクセスもままならない。

視聴覚データファイルのメタデータに欠かせないのは次のような項目だ。

●同定/識別情報(個別の請求記号・タイトル・エラー検出符号—ファイル認証のためのデジタル署名を含む)

●ファイルの出所とコンテンツ(オリジナルキャリアの同定/識別・形式・保存レベルを含む)

●ファイルを認識し、再生を可能にする技術情報(ファイル形式・デジタル解像度・サンプリング率を含む)

●ファイルに適用された保存過程を記録する保存用メタデータ(使用された機材・ファイルに適用されたノイズ除去などのあらゆる工程)

デジタルファイルの維持・保存・アクセスには、包括的なメタデータが必要とされるだろう。メタデータは、デジタルファイルと一体化させることもあれば、分割して維持することもある。中にはファイルの同定/識別・制御・管理に必要とされるメタデータがあり、これらはファイルと一体化すべきだ。そのほか記録の発見やアクセスの助力となるメタデータもあり、これらは必ずしもファイルと一体化させるものではない。例えば記述情報を分割すれば、新たに入手した情報をその都度アップデートできる。しかしながら、ファイルとメタデータを明確に紐付ける作業は不可欠だ。ファイルのあらゆる側面に関する情報を維持することが、アイテムの歴史を構築する助けとなる。デジタル記録用のメタデータ情報については、第15章(デジタル・レコードキーピング)を参照されたい。

■視聴覚記録のためのメタデータ標準

ライブラリー・アーカイブズ・ミュージアムの世界において、同意の上で正式に実用に至ったデジタル視聴覚記録用のメタデータ要素は、最低限のものですら未だ存在しない。しかしながら、視聴覚のメタデータを捉えるために使用あるいは応用できそうなメタデータ標準は数多い。視聴覚用および保存用メタデータを含む主要なウェブサイトに次のようなものがある。

1. Dublin Core Metadata Initiative[www.dublincore.org]

2. Metadata Encoding and Transmission(METS)Standard[www.loc.gov/standards/mets]

3. Synchronised Multimedia Integration Language(SMIL)[www.w3.org]

4. PREMIS(Preservation Metadata: Implementation Strategies)[www.loc.gov/standards/premis]〔※URL変更〕

5. Authority Tools for Audiovisual and Music Catalogers[www.olacinc.org/drupal/?q=node/13]〔※名称・URL変更〕

6. Authority Resources for Cataloguing Popular Music[http://library.music.indiana.edu/tech_s/mla/wgpms/wgpms.htm]〔※URL変更〕

 

(第6回につづく)

Keeping Archives, 3rd

Copyright (c) The Australian Society of Archivists, 2008.

First published by The Australian Society of Archivists.

オーストラリア・アーキビスト協会からのご配慮に厚く御礼申し上げます。

 

翻訳者プロフィール

NPO法人映画保存協会

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映画保存協会(Film Preservation Society, FPS)は映画フィルムを文化財として保存する活動に取り組むNPO法人です。

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