『キーピング・アーカイブズ Keeping Archives』連載第11回

 

[4]フォーマットを理解する

ではここで、記録の物的なフォーマットの違いを詳しく見ていこう。そして、物的存在としても知的存在としても、動的映像記録の様々な種別を同定/識別するツールを揃えよう。それぞれ、まずはフォーマットの概要を記述し、次に、関連する技術的なプロセスの情報、さらには議論や記述に必要な用語を加えていく。この広範に及ぶセクションを通して、技術用語やフォーマット特有の問題に順応し、動的映像記録を管理する参考にしてほしい。

商業作品はいくつもの段階を経ている。つまり、最終的な作品は多くのコンポーネントから成立している。コンポーネントは互いに何らかの関わりを持ち、そのすべてが制作物の有用性を縁の下で長期的に支えている。最も重要なのは、関連するあらゆるコンポーネントを一緒に残すこと、そして、制作のある特定の段階に関連する部分が、ほかの部分より高い価値を持つことを理解することだ。

1990年中頃から、制作手法はかなりデジタル寄りになっている。映画産業やテレビ業界のために開発されたプロ仕様の技術は、国内市場に急速に受け入れられた。動的映像のデジタル・ツールは、国内ではここ5〜10年のあいだに、デジカメ・携帯電話・ポータブルのMP4プレーヤーへと幅を広げてきた。

動的映像が記録される物理的なメディアには、主に次の4種類がある。

① 映画フィルム

② 磁気メディア:ビデオテープ、ハードディスク・ドライブ

③ 光学ディスク:DVD、CD

④ フラッシュや半導体などコンピュータ用メディア

① 映画フィルム

既に述べたように、アーキビストが扱うのはほとんどの場合、ホームムービー、教育映画、ニュース映画といった単独の上映用プリントだ。時には、制作された作品全体がコレクションに入ることもあるかもしれないが、たとえ単独の上映用プリントでも、商業的な制作プロセスの基礎を理解すれば、手元にあるものを同定/識別し、評価する際の役に立つだろう。

映画制作とは本質的に、フィルム上映のためのつなぎ目のないプリントを目指して複製を重ねるプロセスだ。制作過程の編集と焼き付け作業は目に見えない。撮影段階から最終的な劇場公開用のプリントに至る映画制作のプロセスは、コンポーネントと呼ばれる多数の部分を生み出し、各コンポーネントの関係性が、最終的な作品や現在進行形の保存の形態を決定づける。

フィルムのコンポーネントには、次のような種類がある。

●オリジナル・カメラ素材(オリジナル・ネガ、オリジナル・リバーサル)

●デュープ用コンポーネント(インターネガ、デュープネガ、インターデュープ、ファイン・グレイン、インターポジ)

●編集用プリント(ワークプリント、スラッシュ・デュープ)

●サウンド用コンポーネント(ロケーションテープ、フィールドテープ、ミキシング用あるいはダビング用トラック、ファイナルミックス、音楽と効果音、光学サウンドネガ、光学サウンドポジ)

●配給に使用する作品のプリント(公開用プリント、テレビ用のコントラストの弱いプリント)

●最終版には使用されなかったアウトテイク、カット尻

基本的な映画制作のプロセスは、このラインに沿って進む。オリジナル素材とはカメラに装填され、撮影されたフィルムだ。通常、このオリジナル素材のプリント・コピーが編集されてワークプリントとなる。現在のところ、実際にはこの段階でコンピュータによる編集が挟まる。カメラ・オリジナル素材には、編集されたワークプリントまたはそれに相当するデジタル素材に合わせてハサミが入る。カメラ・オリジナル素材は延命のため、〈インターメディエイト〉と呼ばれるフィルムに複製される。インターメディエイトと呼ばれる理由は、カメラ・オリジナルと最終的なプリントの中間段階で作成されるからだ。2段階のインターメディエイトが作成されることが多く、1段階目はポジ複製で、コンポーネントとしては〈ファイングレイン・ポジ〉とか〈インターポジ〉と呼ばれる。2段階目はネガ複製で、〈インターデュープ〉とか〈デュープネガ〉と呼ばれる。次に、ネガのインターメディエイトから上映用プリントが作成される。これ以上詳しい事は、NFSAの「Film Preservation Handbook」「Film Duplication and Generations」を参照されたい。

機械的なプロセスに耐えられるように製造されているとはいえ、映画フィルムは有機的なメディアで、収蔵条件や扱い方を誤れば簡単に傷んでしまう。その物的な構造は写真フィルムに由来し、とりわけ気温と湿度に影響を受けやすい。フィルムの帯は何層にも分かれている。ベースまたは支持体の層、画像が記録されているゼラチン質の乳剤〔エマルジョン〕層、そして、コート剤やカーリングを防止する層が両面にある。本章では後ほど、保存を扱うセクションで物理的な構造をより詳しく扱う。

■技術プロセスとフィルム用語

続いて、前述のようにアーキビストが手元に持っているものを同定/識別する際に参考になることを詳しく述べる。映画フィルムの仲間は実に多様だ。この多様性こそが、記録のコンテンツとコンテクスト、そして取り扱い方法に関する情報を相当な量にしている。この情報を読み解く術を学ぶことが、記録として映画を管理する仕事の重要な一部を占める。

すぐに旧式化してしまうビデオと比べて遥かに安定している映画フィルムは、技術に適応しながら発達してきた。3つの主要な違いは、フィルム・サイズ、カラーの発達、そしてフィルム・ベースに使用されるプラスチックの改良だ。

例えば次のような項目が挙げられる。

●フィルム自体のサイズは、フィルム形状として知られる。

●画面比率(フレーム、映写機の光がフレームを通過する領域を決定づけるゲート、最終的なスクリーンサイズを決める映写機のレンズ)

●フィルムの両側または片側にあるスプロケット

●フレーム率

■フィルム形状

フィルム形状とは、フィルムのエッジからエッジまでの幅(単位はミリメートル)のことだ。多くの場合、このフィルム形状の見極めがフィルムの種類とオリジナルの機能を同定/識別する第一歩となる。形状と同じくらい重要なのがフィルムのスプロケットの種類で、ほとんどのサイズ、つまりほとんどの形状のフィルムには、フィルムの両脇、画面の左右に穴があけられている。これがスプロケット、またはパーフォレーションと呼ばれるもので、穴が撮影機材の爪に噛み合うことによって、フィルムはゲートへと運ばれる。その後の制作プロセスにおいても、フィルムはこの穴によってプリンターの歯車に噛み合わされる。

■ プロ用の形状

以下の形状は〈興行(劇場公開)用〉映画に使用される。

●70mm

●ビスタビジョン

●35mm

●Super35mm

●Super16mm


■アマチュア用の形状

以下は〈インフォーマルな〉動的映像記録に使用されていた。

●16mmはテレビ時代の商業作品にも広く使用された。

●スーパー8(スングル・スプロケットで、画がフィルムのエッジまで広がる)

●16mm

■ 旧式のアマチュア用の形状

●9.5mm

●スタンダード8〔ダブル8〕(1968年に〔コダックの〕スーパー8に取って代わられた)

〔※ 日本では富士フイルムのシングル8も普及した〕

■フィルムの世代

第一世代 ●カメラ・ネガ。
●編集されたカメラ・ネガ。16mmでは〈チェッカーボード〉のように2本のフィルムを組み合わせて使用することが多い。これはABロールとして知られる。
●カメラ・ネガからカットされたもの。
●カメラ・ネガのアウトテイク、未使用ショット。
第二世代 ●編集されたワークプリント。初期の編集は〈ラフカット〉、最終的な編集は〈ファインカット〉と呼ばれる。
●インターポジは、ファインカット・ネガから作成する。インターポジはカラーで、カラー・ネガから作成する。スプライスはほとんど、あるいはまったくない。
●複製ネガは、ファインカット・ネガから作成する。複製ネガは白黒で、白黒ネガから作成する。
第三世代 ●オーストラリアでは、この世代をカラーならインターネガ、白黒ならデュープまたはデュープネガと呼ぶ。インターデュープとしても知られる。
第四世代 ●上映用プリント。最初のプリントはプリントセットのテストとして作成される。このプリントはトライアルプリントまたはアンサープリント〔初号〕として知られる。プリントのパラメータが正しければ、以後のプリントはリリースプリントと呼ばれる。テレビ用にはコントラストの弱いプリントを作成する。

【表18.1:フィルムの世代】

■カラー方式—カラーか白黒か

初期のフィルム方式は白黒で、カメラに装填して撮影したオリジナルからポジ像を作成した。撮影したものをそのまま上映することになり、懐疑的な観客に何度も繰り返し上映することでオリジナルは急速に劣化した。これが初期映画の素材が少ししか残っていない理由の一つだ。次第に撮影用にはネガを使用することが当然となり、この問題は解決した。つまり、1本のオリジナル・ネガから多数のプリントが作成できるようになったのだ。

カラーフィルムには数多の方式が生まれた。オーストラリアのアーカイブズに関わりが深いのは、カラー・ネガだ。家庭用に現像されて戻ってくるお馴染みのスナップ写真のネガと同じように、全体がオレンジ色をしている。オーストラリアにおいては、コダックが1950年に販売を開始したので、こうしたストックは1950年代中頃から存在する。

リバーサル・フィルムもまた、オーストラリアにおいて広く普及した。これは、カメラに装填したフィルムからポジ像を得るものだ。カラー・コダクローム、アグファクローム、そして後のエクタクロームは、初期テレビ番組のニュース取材用、あるいはアマチュア用として幅広く使用された。オーストラリアに残されているこうしたフィルムのストックは、1930年代にまで遡る。コダクロームの発売開始は1935年だ。リバーサルはポジ像を撮影用フィルムから得るため、通常のフィルムのネガポジ複製方式は使用できない。このため、16mmおよび非劇場用作品にのみ使用された。

オーストラリアでは、テレビ番組用フィルムの大部分を白黒リバーサル・フィルムが占めた。1975年にカラーテレビが登場するまで、1956年から1974年にかけては、リバーサル・フィルムがテレビ放送用の元素材だった。もし手元のコレクションにリバーサル・フィルムがあるなら、唯一無二の存在の可能性がある。

■フィルム・ベースの種別

フィルム・ベースに使用されたプラスチックの種別も、映画フィルム技術の多様性の一例として重要だ。既に述べたように、支持体となるプラスチック・ベースと、それに塗布された乳剤が物質としてのフィルムを構成する。ベースに使用されたプラスチックは、20世紀のプラスチック技術と共に進化した。初期の極めて発火生の高いセルロース・ナイトレートのベースは、1950年代まで35mmフィルム製造に使用された。次に移ったのが、より安全ではあるが化学的に不安定なセルロース・アセテートだ。小型映画にはアセテートが1920年代から使用されていた。1990年代初頭のオーストラリアでは、500年は保つというポリエステルの万能性が宣伝され、上映用プリントやデュープ・インターメディエイトに使用されるようになった。しかし、現在もアセテートは製造され続けている。強度の高いポリエステルは、繊細で精巧な映画撮影機材の機構に危害を与えるため、撮影用ネガは現在もアセテートなのだ。

専門性の高い視聴覚アーキビストの一致団結した努力によって、ほとんどの映画用ナイトレートフィルムは同定/識別され、今や世界各地で特別な保護を受けている。オーストラリアで見つかるナイトレートは、ほぼ例外なく35mmだ。フィルムコレクションの担当者にとって頭痛の種になっているのは、むしろ劣化したアセテートだ。アセテートはオーストラリアのコレクションに最も顕著なベース素材なだけに、問題は尚更深刻だ。アセテートフィルムは1920年代に16mmに、1950年代以降は35mmに使用されるようになった。既に言及したように、1990年代初頭からカメラ・オリジナル以外のすべての世代のフィルムにはポリエステルが使用されているが、カメラ・オリジナル・ネガには、今もアセテートが使用されている。

リバーサル・フィルムのアセテートベース劣化に関するメモ:ついでながら、ネガから作成されたフィルムに比べて、リバーサルの場合、アセテートベースの劣化の進み具合はかなり遅いとされる。

 

(第12回につづく)

Keeping Archives, 3rd

Copyright (c) The Australian Society of Archivists, 2008.

First published by The Australian Society of Archivists.

オーストラリア・アーキビスト協会からのご配慮に厚く御礼申し上げます。

 

翻訳者プロフィール

NPO法人映画保存協会

http://www.filmpres.org/

映画保存協会(Film Preservation Society, FPS)は映画フィルムを文化財として保存する活動に取り組むNPO法人です。

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