『キーピング・アーカイブズ Keeping Archives』連載第12回

 

②ビデオ

ビデオは磁気メディアの一つで、1956年に2インチのビデオテープが販売されるようになったのが始まりだ。第17章は初期磁気メディアの開発に触れている。磁気メディアの仲間のフォーマットには、オーディオとビデオのほかに、フロッピーディスクとコンピュータ・ハードディスクドライブがある。

常に変わりゆく技術こそがビデオの歴史だ。アーカイブズとしてのビデオ問題は、磁気メディアの脆弱さや、変化の急激なペースに起因している。

■棚には何がある?

アーカイブズには国産のフォーマットが見つかることが多いだろう。中にはベータマックスのように、すっかり旧式化してしまったものもあるかもしれないし、Hi8のように製造はされていなくても購入可能なものもあれば、VHSやminiDVのように、現在も利用されているものもある。こうしたフォーマットは、大抵は国産のビデオカメラ用や放送の録画用に使用されてきた。

商業作品の制作に使用されたプロ仕様のフォーマットも見つかるかもしれない。これらはアナログもデジタルもあり得るだろう。プロ仕様のフォーマットは、放送用に使われた2インチにはじまる。これは文字通り2インチ幅のテープで、当初はとても高価だったため、放送局では何度も使い回しされた。

その後の進化は、Uマチック、3/4インチ幅のカセットテープを経て、オーストラリアでは1990年代に1インチのビデオに移った。1インチも2インチもカセットに保護されていないオープンリールのテープだ。

初の携帯ビデオ・レコーディング方式はオープンリールのポータパックと呼ばれ、1インチや1/2インチのビデオテープを使った屋外撮影を可能にした。オープンリールのフォーマットは、主に撮影所のカメラや放送業界の編集者によって、管理の行き届いた環境で使用された。1インチは放送用のデフォルト標準として、デジタル・ベータカムが1990年代に登場するまで使用された。

■ビデオテープの名称と略称の解読

ベータマックス、ベータカムSP、デジタル・ベータカム:ベータと呼ばれることが多い〔※ 日本ではベーカムとも呼ばれる〕

Uマチック:ハイバンド、ローバンド、SP(シュペリオー・パフォーマンスの略)

VHS:ビデオ・ホーム・システム

SVHS:タイムコード用の〈トラック〉を持つスーパーVHS

Hi8:初の小型式テープ

DV、miniDV:ミニ・デジタル・ビデオテープ、製造業者多し

DVCam:小型

DVCPro:小型

■デジタル・ビデオテープとデジタル化の違い

VHSやUマチックを一旦デジタル・ベータカムやDVCamにコピーすれば、その記録はデータ世界の一部としてオンラインで使用可能になり、大容量デジタルストレージに保存されると考えがちだが、そういうことではない。ビデオテープ上の信号はデジタル信号ではあるが、録画再生機器に依存したもので、コンピュータ・データとしてアクセスすることはできない。ビデオテープ上の信号をデータファイルにデジタル化して、コンテンツをビデオテープに依存しない状態にするには、もう一段階の作業が必要になる。

デジタル・ビデオテープは、全ての初期信号の情報を必要としないという前提に基づいて、カメラが捉えた初期アナログ信号を処理する。サンプリングする位置に重なったポイントをプロットし、ポイントとポイントの間の情報は捨てられる。サンプリングする点の情報は、エンコードした数字の羅列、言い換えればデジタル信号として蓄積される。デジタル・ビデオテープは、フォーマットごとに異なる方法でエンコードされる。エンコードのツールはカメラ、録画機、再生機に組み込まれている。信号を再生するには、記録する際に使ったのと同じ(もしくは近しい)システムが必要となる。DVCProでDVCamやminiDVも再生できるように、互換性を持つ場合もある。

データファイルとそのエンコードは、もはや特定のカメラ、録画機、再生機には依存していないが、ファイルは再生用の特定のコンピュータ・ソフトに依存している。身近な例として、携帯電話やスチル・カメラでキャプチャした映画が挙げられる。そのデータファイルは、記録したカメラや携帯電話に依存することなく再生される。

デジタル・ビデオテープは、もちろんこの次の段階でデータ変換、即ち〈デジタル化〉できる。ビデオテープの信号は、データファイル作成のための信号のサンプリングを行いつつエンコードされる。一般的に、エンコードに続いて、信号の中の不必要と思われる情報を除去するためのルールやアルゴリズムを使った圧縮プロセスがある。

■プロ用と民生用の狭間

デジタル技術と〈増大し続ける〉デスクトップ・コンピュータのパワーは、〈プロシューマ〉領域を拡大し、プロによる制作と家庭での制作との境を曖昧にした。プロシューマという言葉は〈プロフェッショナル〉と〈コンシューマ〔民生用〕〉を短縮した造語だ。プロシューマ技術は、プロ向けの高価なシステムを高所得消費者の手に届く価格帯で模倣したものだ。プロシューマ機材によって、研修用、教育用、企業PRやインディペンデント系作品などの低予算映像にもプロ用の制作プロセスが利用できるようになる。Hi8やS-VHSといったプロシューマのアナログフォーマットが、まず門戸を開いた。miniDV、DVCPro、DVCamのようなプロシューマのデジタル・フォーマットは、映画業界の職人や、テレビ業界の技術者のものだったビデオ制作の一般化を反映している。新技術は、画質の劣化なしに複製できるというデジタル特有の能力を活用し、手頃な価格のデスクトップ・ポストプロダクションと結びついた。プロシューマ・フォーマットの多くは、磁気テープの金属の微粒化や蒸着技術の進歩によるものだ。大量の情報を小さな表面積にキャプチャできるため、DVCProをはじめとするフォーマットは比較的サイズが小さい。この技術は、コンピュータ・データテープにも使用されている。

以上のことを要約する。ビデオテープには様々なフォーマットが存在する。1956年に商業フォーマットとして登場して以来、その技術は継続的に発展してきた。今ではもはや使われなくなったビデオのフォーマットも多数存在する。

■ビデオとフィルムの共同作業〔※〕

ビデオとフィルムの制作は、しばしば密接な関係にある。商業作品の制作プロセスとして現在も行われるのが、フィルムで撮影してからビデオにする方法で、テレシネとして知られている。テレシネによって作成されたビデオテープは、撮影テープや〈ラッシュ〉と同等に扱われる。テレシネされたビデオテープは、撮影テープのタイムコード、もしくはタイムコード付のデジタル編集システムによって取り込まれたタイムコードと共にコピーされるか、〈ダビング〉される。このプロセスの結果、様々な世代が生まれる。ラッシュ、サブマスター、マスター、ダビングと記された素材を見かけることになるだろう。

※Watson, David 2007, ‘A Review of Digital Cinema, The quest for a digital strategy – quixotic or realistic?’, NFSA Journal, Journal of the National Film and Sound Archive, Australia, Vol.2, No.1, pp2-3.

テレシネによってフィルムを一旦ビデオ化すると(もしくは、理論上はそのままデータファイル化すると)、そこからは全ての意思決定をビデオ上で(もしくは電気的に)行うことになる。フィルムの場合、デジタル・インターメディエイトのプロセスとは、完成版をビデオで作成することを意味する。最終工程として、劇場での上映用に映画フィルムにレコーディングする。劇場にデジタル・プロジェクターが設置されてれば、このレコーディングの工程は省くことができる。これがデジタルシネマのモデルだ。ここ5年間で、デジタルシネマのための配給モデルが随分と議論されてきた。

■アマチュアの制作プロセス

前述のように、上記プロセスの規模を縮小するとアマチュアの制作工程となる。フッテージはカメラで撮影される。一般的に好まれるフォーマットにVHS、Hi8、miniDV、DVDがあり、中でも増加傾向にあるのがHDDだ。続いてフィルムが使用されるか、もしくはそのままアーカイブズに送られるかもしれない。あるいはコンピュータ用にマイグレートされ、編集されることもあるかもしれない。一般的にはその後、上映、アクセス、もしくはオンライン公開のため、DVDやminiDVなど他のキャリアに出力されるだろう。

■世代とは何か?

ある特定のコンポーネントがカメラ・オリジナルからどの程度離れているかを指す。例として、ベータカムSPテープのVHSは、オリジナルから3世代離れていることも考えられる。フィルムやビデオにおいて、〈世代〔ジェネレーション〕〉とは、制作プロセスにおける複製やコピーの使用を反映するものだ。

第一世代 ●カメラテープ
●テレシネテープ(フィルムがビデオにテレシネされた場合)
第二世代 ●オフライン編集(デジタル編集前に使用される)
●オンライン編集サブマスター
●サブマスターが無い場合は、オンラインの最終マスター。
第三世代 ●サブマスターがある場合のオフライン編集最終マスター
●ダビング(最終マスターのコピー)。
第四世代 ●サブマスターが使われている場合、ダビング(最終マスターのコピー)。

【表18.2:制作プロセスにおける複製コピー】

 

(第13回につづく)

Keeping Archives, 3rd

Copyright (c) The Australian Society of Archivists, 2008.

First published by The Australian Society of Archivists.

オーストラリア・アーキビスト協会からのご配慮に厚く御礼申し上げます。

 

翻訳者プロフィール

NPO法人映画保存協会

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映画保存協会(Film Preservation Society, FPS)は映画フィルムを文化財として保存する活動に取り組むNPO法人です。

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