
これまで図書館というものは、「図書館=利用者に書籍などを提供する場」という認識があったと思われます。
しかし、利用者が資金提供などを通じて図書館をささえ、そして図書館もまた書籍などの資料だけでなく、利用者のニーズに沿った情報や場を提供するという、いわば相互にささえあう新たな「関係」を築いているところも数多くあります。
『ささえあう図書館』では、そうした中から10の図書館をピックアップし、図書館と利用者の「これから」を考えています。
刊行の辞
近年、公共図書館は、情報通信技術の進展、地方分権改革の推進など、世の中の動きに連動して、大きく変わっています。具体的には、図書館利用者の情報入手ルートが激変し、図書館を含めた公の施設に指定管理者制度が導入されるといったことが挙げられます。
こうした状況のもとで、公共図書館は、従来の図書等を貸し出す施設から、地域住民の抱える課題の解決を支援し、地域をささえる情報拠点としての役割を果たす施設に変わりつつあります。さらに、市民や利用者がさまざまな局面で、図書館活動に参画することによって、サービスや運営を支援する状況も見られるようになっています。
本書は、公共図書館の活動と、特定の利用者を対象にしたサービスを取り上げ、当事者自身がそれぞれの活動を紹介することで、近年の図書館をめぐる変化の状況を明らかにすることを試みています。その際、図書館と市民・利用者との関係を「ささえあう」と捉えることで、図書館の果たす役割、両者のあり方や今後の関係を考える手掛かりとしました。
本書は、序章、本編、終章で構成されています。序章では、編者が読者の理解を助けるために「ささえあう図書館」の考え方を説明しています。本編は3部で構成し、第Ⅰ部を「利用者が図書館をささえる」、第Ⅱ部を「図書館が利用者をささえる」そして、第Ⅲ部を「図書館を利用者に届ける」として、当事者による事例紹介のかたちを取っています。終章では、編者が本編でなされた紹介事例をもとに、図書館と市民・利用者が「ささえあう」状況を跡づけることで、図書館が「社会装置」として機能し得ることを述べました。
本書は、全国各地において市民を「ささえる」図書館の姿と、さまざまな方法で市民に「ささえられる」図書館の姿を描き出しています。そのため、読者は、これまでの「図書館」のイメージとは異なる多様で奥行きのある図書館サービスの現況を実感することができるでしょう。
『ささえあう図書館』刊行記念イベント開催決定!
図書館と利用者が互いに「ささえあう」事例を紹介した、『ささえあう図書館―「社会装置」としての新たなモデルと役割』の刊行を記念して、監修者の岡本真氏、執筆をご担当いただいた鎌倉幸子氏、そして2014年に『つながる図書館』(ちくま新書)を上梓された猪谷千香氏の3人をお招きして、図書館と利用者の「これから」を語っていただきます。
話題の「TSUTAYA図書館」にも触れていただく予定です。
是非足をお運びください。
★『ささえあう図書館』刊行記念トークイベント 「ささえあう図書館―TSUTAYA図書館からは見えてこないもの」
開催日時:2016年2月26日(金) 19時~(開場18時30分)
開催場所:東京堂書店神田神保町店6階 東京堂ホール
出演者:岡本真、鎌倉幸子、猪谷千香
主 催:東京堂書店・神田神保町
参加方法:参加費800円(要予約・ドリンク付き)
*参加ご希望の方は店頭または電話にて、『岡本さん鎌倉さん猪谷さんトークイベント参加希望』とお申し出いただき、名前・電話番号・参加人数をお知らせ下さるか、東京堂書店ホームページの「お問い合わせ」の専用応募フォームからお申込み下さい。
イベント当日と前日は、電話にてお問い合わせ下さい。(電話:03-3291-5181)
詳細 → http://www.tokyodo-web.co.jp/