江戸時代には数多の「随筆」が書かれ、流通していた。
しかし、現在のジャンル感覚でこれらの著作を見てみると、とてもその枠組みには収まらない知の地平を有していることがわかる。
天下国家を論じたものから、市井風俗の歴史を考証したもの、体系的な学問・芸道論からは零れ落ちるが、捨てておくには惜しい知識や逸話、公的な著述のなかでは記すのは憚られるが、書きつけないではいられなかった本音や悪口――
筆の赴くままに、自由に描かれたその作品たちは、近世の人びとの文化・思想・歴史観を今に伝えるタイムカプセルである。
鵺のごとき「近世随筆」を把捉するために、文学・思想史・歴史など諸ジャンルの一線で活躍する研究者16名を糾合、「近世随筆」という沃野を耕していくための基盤を提示する意欲的成果。