テンジンノモノガタリ ワカ カイガ

天神の物語・和歌・絵画

中世の道真像
山本五月 著
ISBN 978-4-585-22029-9 Cコード 3021
刊行年月 2012年2月 判型・製本 A5判・上製 344 頁
キーワード 美術,宗教,中世,中古

定価:10,450円
(本体 9,500円) ポイント:285pt

 品切 
書籍の詳細

この世に生を受け、左遷の憂き目にあい、苦悩の後に死んで神となった菅原道真―
現実の苦悩を経た者への共感や鎮魂の念が、「死者が生者の世を支配していく」構造、「現人神」としての信仰へと結実し、多種多様の物語、和歌、絵画が生み出された。
社会の広範な層に浸透した中世天神信仰は如何に形成されたのか。
諸資料の多角的な読み解きにより、日本人の宗教観・精神史における天神信仰の意義を解明する。

推薦のことば(小峯和明(立教大学))
本書は、日本の文学・文化史に重要な位置をもつ「天神縁起」に果敢に取り組んだ故山本五月氏の既発表論文を中心にまとめた論文集である。
山本氏は「天神縁起」の形成に日蔵上人の地獄めぐりを語る「日蔵夢記」がおおきくかかわっていたことを明らかにし、さらにおびただしい絵巻を精査して、カノン化されていた承久本ではなく、むしろ室町期の絵巻こそ重要な役割をはたしたことを立証し、その延長に作られたお伽草子系の『天神の本地』にも初めて総合的な検証を加えた。また、経典と同様の機能を持った天神和歌の重要性についても言及しており、「天神縁起」の文学研究としては初めての本格的な業績といえる。
徹底した文献博捜による緻密な分析、図像イメージの解析、和歌や託宣の解読などを縦横に試みた重厚な本書によって、「天神縁起」研究は新段階に至った感があり、文芸はもとより、歴史、美術、宗教他、隣接諸学にもおおきく寄与することが確信できる。関連分野の方々にもひろく一読を薦めたいと思う。

 

 

目次
刊行にあたって・・・小峯和明

序章 菅原道真の生涯とその神格化

第一部 天神縁起絵の生成
『日蔵夢記』の成立―『北野文叢』所収永久寺本を中心に
道賢(日蔵)伝承の展開
日蔵説話の変容と『北野天神縁起』―メトロポリタン美術館本を中心に
『日蔵夢記』に見る道真像―太政威徳天の姿
追憶する神―延慶本における天神の託宣

第二部 室町絵巻の改変
『日蔵夢記』と天神信仰の形成―太政威徳天の姿と言葉
『北野天神縁起』「日蔵冥界巡歴」の段をめぐって―室町絵巻に描かれた帝釈天
道明寺天満宮蔵「北野天神縁起絵扇面貼交屏風」の特質―モチーフ絵画化の観点から
第三部『天神の本地』の物語・和歌・絵画
『天神の本地』の基礎的研究―東洋文庫蔵慶安版本を中心に
思ひきる心の剣―天理二巻本系統の呪歌
雪につつめる鶯の声―天神和歌の寓意
天神異聞
天神と童子―中世天神信仰の物語と図像

山本五月業績一覧

山本五月のこと・・・山本 勉

索 引
プロフィール

山本五月(やまもと・さつき)
1956年横浜市生まれ。1977年、横浜国立大学教育学部卒業。
卒業後、横浜訓盲学院普通部教諭を経て、1990年、慶應義塾外国語学校卒業1993年、慶應義塾大学文学部(通信教育課程)卒業、1997年、慶應義塾大学大学院文学研究科・国文学専攻修士課程修了。
立教大学大学院文学研究科・日本文学専攻博士課程後期課程在学中の2006年3月3日没。

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