多角的視点から中世陰陽道の実態を探る
本書は、陰陽道研究史上の重要な課題である中世陰陽道の実態について、その社会的役割と近世への連続性を念頭に置き、如何なる形で陰陽道が存続するに至ったのかを論じるものである。
古代日本において、陰陽寮は、中国から数多の知識・技能等を受容し、国家機構に組み込む過程で成立した。その後、陰陽・天文・暦の三部門を中核とし、「陰陽道」と称される日本独自の大系へと発展を遂げる。
この古代から近世に至る発展の実態については、様々な角度から研究されてきたものの、 中世(室町中後期を中心)から近世への移行期について、今なお未解明の問題が残されている。
そこで本書では、これまで看過されてきた寺院史料や新出史料・未刊史料など、多角的な資料を積極的に活用することで、室町時代の基礎的史料を広く提供し、総合的な分析から陰陽道研究における新たな視座を提示した。