本書は、3部よりなり、江戸時代に本居宣長が『ひも鏡』を出版して以降、種々議論のおおい〈かかりむすび〉について、多面的に考察し、従来の説を再検討する。
第1部は、本居宣長による〈かかりむすび〉の法則についての著書である『ひも鏡』と『詞の玉緒』、特に『ひも鏡』について、その成立事情を考察する。
第2部は、宣長が『ひも鏡』で提示し、『詞の玉緒』によって国学者間に普及した〈かかりむすび〉の法則が、江戸時代において実際はどのように理解されていたか、またそれが、明治以降、特に山田孝雄によってどのように理解されて、その説が現在にどのような影響をおよぼしているかを、主に〈かかり〉の「は」「も」「徒」および「何」をめぐってあきらかにする。
第3部は、日本の古代語に特有の語法であり現代語には存在しないとされる〈かかりむすび〉について、古代語のそれと似たような呼応現象が現代日本語にも存することを指摘し、これによって〈かかりむすび〉とおなじような語法が現代語に再生していると思われることを論述する。