メイジノイッパツヤゲイニンタチ

明治の一発屋芸人たち

珍芸四天王と民衆世界
永嶺重敏 著
ISBN 978-4-585-27058-4 Cコード 0076
刊行年月 2021年1月 判型・製本 四六判・上製 284 頁
キーワード 文化史,日本史,明治,近代

定価:3,850円
(本体 3,500円) ポイント:105pt

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書籍の詳細
四天王はなぜ消えた?

「ステテコ」の円遊、「ヘラヘラ」の万橘、「ラッパ」の円太郎、「テケレツ」の談志。
全国的な熱狂を引き起こしたにもかかわらず、歴史の狭間に消えた「珍芸四天王」たちの実像に迫る!

死者十万人・罹患者十六万人という未曽有のコレラ大流行に見舞われていた明治十年代、四人の落語家により披露された一風変わった芸が民衆の心を鷲づかみにした―。「ステテコ」の円遊、「ヘラヘラ」の万橘、「ラッパ」の円太郎、「テケレツ」の談志。のちに「珍芸四天王」と称された彼らの芸は全国的な熱狂を引き起こしたものの、落語界の黒歴史とされたのか、その芸の実際の内容や誕生過程、流行過程については、謎のヴェールに包まれている。
なぜこのような時期に一発屋芸人とも言える彼らが人気を博すこととなったのか。新聞・雑誌・錦絵等、諸種の同時代メディアに目を向け、都市の民衆の視点、さらには民衆の織り成す路上文化や生活世界の地点から明治前期の民衆世界を炙り出す刺激的な一冊。

 

 

目次
はじめに

序 章 明治前期の落語界と新奇性の追求
 落語家の人数
 寄席と劇場と観客
 寄席の取り締まりと新奇性の追求

第一部 珍芸の誕生とその民衆的起源
 第一章 ステテコ踊りの「新手」の誕生
  1 ステテコ踊りとは
   ステテコ踊りの画像資料
   十一種類のステテコ踊り
   ステテコ踊りの歌
  2 ステテコ踊りの起源に関する定説
   ステテコの乞食起源説
   林家正蔵の「すててこ誕生」
   『浮世床』にステテコ登場
    ステテコ踊りは明治三年に初出
    乞食起源説の検証
  3 円遊の真打ち昇進とステテコ踊りの「新手」の誕生
   駆け出し時代の円遊
   小林大助の「嵩天子舞」
   円遊の真打ち昇進とステテコ初披露
   「薬研の棒」からステテコを発明
   ステテコ踊りの「新手」の誕生
  4 ステテコ踊りの歌の変遷
   ステテコ初披露と歌
   「夕べ風呂の上がり場で」
   「お染久松 質店の段」の人気ぶり
   「さても酒席の大一座」
   「向こう横町」は明治三十四年に登場
 第二章 ヘラヘラ・ラッパ・テケレツパアの誕生―都市路上の再現
  1 ヘラヘラ踊りは大道芸に起源
    赤で売り出すヘラヘラ踊り
    ヘラヘラ踊りの歌
    万橘の略歴
    ヘラヘラ踊りの初出
    関謙之の「万橘坊主ノ伝」
    豊年踊りの強い影響
    客の抱腹絶倒ぶりとヘラヘラの淵源
  2 ラッパの円太郎―東京の路上の再現
    円太郎のラッパ芸とは
    乗合馬車のリアルな再現
    円太郎の略歴
    落語家としての力量とラッパ芸への依存
  3 談志は「郭巨」の故事を実演
   「郭巨の釜掘」の故事
    談志のテケレツパアの画像
    テケレツパアの口上文句
    談志の略歴
    「真面目なる」談志
    テケレツパアの語源

第二部 珍芸ブームの全国的拡大と民衆世界
 第三章 珍芸ブームの展開過程
  1 ヘラヘラ・ステテコが珍芸ブームを先導
   歌舞伎にヘラヘラ踊り登場
   錦絵にもヘラヘラ踊り
   ヘラヘラおこしとステテコおこし売り
  2 七人男ブームの誕生
   七人男とは
   「声色使い」の白魚
   「朝三小僧」
   「生人形」と「たこおどり」の鶴枝
   七人男ブームの衰え
   燕寿のステテコ踊り
  3 四天王ブームへの移行
   大一座スタイルの始まり
   四天王ブームの盛り上がり
   円遊の十九軒掛け持ち伝説
  4 落語界から反発の声上がる
   ヘラヘラ禁止の要求
   円朝の万橘への説諭
   円朝の円遊擁護
 第四章 珍芸ブームが全国へ拡がる
  1 珍芸の市中への拡がり
   ヘラヘラが宴会の隠し芸に
   「テケレツパア」「パア」が流行語に
   「円太郎馬車」の誕生
  2 珍芸の地方への伝播
   万橘のニセモノ出現と「ヘラヘラ踊り教授所」
   ステテコが歌舞伎に登場
   万橘が大阪で大人気
  3 関西の女芸人によるヘラヘラブーム
   常の家重尾のヘラヘラ踊り
   ヘラヘラの大阪進出
   女芸人のヘラヘラ踊りの歌

第三部 四天王の凋落と新たな芸人の登場
 第五章 四天王の凋落
  1 大一座の解体
   四天王の高座外への進出
   談志の死
  2 万橘の「田舎稼ぎ」
   ヘラヘラ人気の衰え
   帰京後の万橘の苦境
   「ナット踊り」と「ウワハイ節」
   万橘の「田舎稼ぎ」と夜逃げ報道
   万橘と円太郎の「鄙歌」に当惑
   万橘の死
  3 ラッパ芸に生きた円太郎
   円太郎の位置と芸風
   円太郎の死と盟友としての円遊
  4 円遊は落語界の重鎮へ
   珍芸芸人から滑稽落語の開拓者へ
   円遊の高座ぶり
   三遊派の副頭取へ
   落語界の内部抗争と円遊
  5 落語研究会と円遊の凋落
   落語研究会の発足と時代に遅れた円遊
   円遊の死とにぎやかな葬儀
   漱石と円遊と小さん
   円遊のレコード音源
 第六章 明治二十年代の新たな芸人と歌の流行
  1 川上音二郎と「オッペケペー節」
   「オッペケペー節」とは
   「オッペケペー節」の始まり
   「オッペケペー節」が東京市中で大流行
   「オッペケペー節」の地方への伝播
   「オッペケペー節」が初期演歌のモデルに
  2 春風亭双枝と「ヤッツケロ節」
   「ヤッツケロ節」の始まり
    歌詞は数え歌の形式
   「ヤッツケロ連」の出現
    警官の臨席と版権登録
    ヤッツケロ壮士の流行と取り締まりの強化
    双枝と「ヤッツケロ節」のその後
  3 徳永里朝と「縁かいな」
   「縁かいな」の起源
    里朝の上京
   「縁かいな」の流行
    流行の拡大
    女中や馬丁が台所で歌う
    里朝は徳永徳寿検校に
    「縁かいな」のその後

おわりに

参考文献
挿図一覧
資料1 「万橘坊主ノ伝」  槎盆子(関謙之)
資料2 四天王の口演速記演目リスト(明治期刊行分)
資料3 円遊口演の録音資料
プロフィール

永嶺重敏(ながみね・しげとし)
1955年、鹿児島県生まれ。九州大学文学部卒業。
東京大学図書館職員として、経済学部図書館、法学部附属明治新聞雑誌文庫、史料編纂所図書室等に35年間勤務して定年退職。
出版文化・大衆文化史研究家。
日本出版学会、日本マス・コミュニケーション学会、メディア史研究会、日本ポピュラー音楽学会会員。
著書に『雑誌と読者の近代』(日本エディタースクール出版部、1997年、日本出版学会賞)、『読書国民の誕生―明治30年代の活字メディアと読書文化』(日本エディタースクール出版部、2004年)、『怪盗ジゴマと活動写真の時代』(新潮新書、2006年、内川芳美記念マス・コミュニケーション学会賞)、『オッペケペー節と明治』(文春新書、2018年)、『「リンゴの唄」の真実―戦後初めての流行歌を追う』(青弓社、2018年)、『歌う大衆と関東大震災―「船頭小唄」「籠の鳥」はなぜ流行したのか』(青弓社、2019年)などがある。

書評・関連書等

★書評・紹介★
「東京かわら版」(2021年4月号)「演芸Bookコーナー」にて紹介されました。
「週刊読書人」(2021年3月26日号)に書評が掲載されました。
 →評者:西条昇氏(江戸川大学メディアコミュニケーション学部教授・日本芸能史)

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