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寺田寅彦は、金平糖の結晶やガラスの割れ目など偶然に見える現象に法則を見いだそうとし、二葉亭四迷・夏目漱石をはじめとする近代作家たちは、文学作品のうちに隠された法則を探ろうと苦闘した。小説のなかに働く力学と、20世紀後半に確立したカオス、フラクタル、セルオートマトンといった複雑系の科学。芥川龍之介、谷崎潤一郎、村上春樹といった作家たちの文学と科学とをつなぐ、物語生成の法則を考察する。附録に、全集未収録の横光利一「文学と科学」、寺田寅彦の書簡も掲載。
千葉俊二(ちば・しゅんじ)昭和22年、宮城県に生まれ、のち横浜に育つ。早稲田大第一文学部卒業、同大学院文学研究科博士課程中退。早稲田大学教育・総合科学学術院教授。専門は日本近代文学。著書に『物語の法則』、『物語のモラル』など。中央公論新社から刊行されている決定版『谷崎潤一郎全集』の編集委員も務める。