貴重な史資料が織りなす「かたち」と「わざ」の日本建築史
建築は多くの異なる部分が集合して全体が編成される。
組物や彫物、座敷飾りなどの実在の建築を成立させる「モノ」、あるいは、モノや人間とのさまざまな相関により拡がる「空間」。
時間や場所、文脈を超えながらそれぞれに取捨選択され、その組合せが多種の「かたち」を織りなすことで、豊かな建築の世界を創り出していった。
そして、この建築の「かたち」を繰り出し、伝えていくためには、大工技術や図面表記法をはじめとする、さまざまな「わざ」の工夫があった。
各地に残る建築の歴史に関わる諸種の資料は、これら「かたち」と「わざ」相互の反復運動が、時代とともに建築の歴史の一端を紡いでいったことを如実に示している。
日本建築史を彩る素晴らしい「かたち」と「わざ」の世界を、190点を超えるカラー図版とともに読み解く画期的な一冊
【第一部 伝わるかたち】
建築はさまざまな要素の組合せで成立している。
そして、この組合せが多種の「かたち」を織りなし、時間や場所や文脈を超えながら伝わった。
極彩色に彩られた組物、植物や動物に象られた彫物、建具や道具や絵画で設えられた空間、層塔や社殿や仏殿などの外観、裏や伽藍などの建造物群―。
各々の「かたち」がときに偶然に、ときに意図的に取捨選択され、再び新たな建築を生み出す端緒を開いたのである。
この部では、建築の部材、建築の空間、建築の外観へと徐々にスケールを大きくしながら、建築の豊かな「かたち」と個別の系譜を紐解いてみよう。
【第二部 伝えるわざ】
建築の「かたち」を伝えるための、さまざまな「わざ」の工夫があった。
「かたち」を繰り出す大工道具にとどまらず、特定の「かたち」に象られた部材そのもの、実物を縮小したミニチュア、「かたち」を二次元に表現した図面、空間を再現する起し絵図、「かたち」の仕組みや制作方法を記す書物、多様な空間を追体験する絵図―。
建築の情報を他者に伝え共有するため、観察・視覚・加工の技法が試行錯誤されてきたのである。
この部では、建築の情報を伝える道具とメディアを通して、さまざまな「わざ」の工夫と系譜を垣間見てみよう。