アジア遊学146
ミンコクキビジュツヘノマナザシ

民国期美術へのまなざし

辛亥革命百年の眺望
瀧本弘之 編
ISBN 978-4-585-22612-3 Cコード 1320
刊行年月 2011年10月 判型・製本 A5判・並製 240 頁
キーワード 美術,中国

定価:2,640円
(本体 2,400円) ポイント:72pt

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書籍の詳細
国家が変わるとき、芸術も変わる

いかなる体制も、交代すると自己の正当性の確立のために、前体制の価値観を否定する。これは繰り返されてきた歴史の法則である。
明治維新のとき、徳川幕府は悪者にされた。清朝を倒した中華民国ができたとき、封建体制は全否定された。
全く同様に、1949年の新中国の創設でも、民国時代の政治・文化・経済・社会は、みんな暗黒のものとされた。
かつてほぼ「価値のない」「ブルジョアの」「腐敗した」と決め付けられていた、民国期の美術を取り扱うときには、ひととおりそのことを頭の隅に入れてかからねばならない。
とくに文革終結以前の大陸では、戦前の文化に就いては日本のそれも含めてほぼ全否定であった。弁証法的な発展史観では、そうでなければ自国文化の存在証明ができなかったのだ…。

日本美術の影響下に覚醒し、ソ連美術の影響下のもとに成長した中華民国期の美術。
新中国の体制下で見失われていたその豊穣を新たな目で検証する。

*「民国期美術」とは…
「民国」は「中華民国」のことであり、やや厳密に定義すると「清末から民国初年を始まりとして中華人民共和国成立時期頃までの美術をここでは『民国期美術と定義する」ということになる。そして扱う地域は、大陸中心にその影響の及ぶ地域を含めている。

 

 

目次
序説 民国期美術に向けた「断想」  瀧本弘之

一、伝統藝術の地殻変動
 金城と一九二〇年代の北京画壇  戦暁梅
 日中美術交流最盛期の様相  吉田千鶴子
 書画文墨趣味のネットワーク  松村茂樹
 民国期における書画骨董の日本への将来をめぐって
  ─アロー号事件から山中定次郎・原田吾朗まで  風見治子
 ある外交官が見た中国近代絵画
  ─須磨弥吉郎の東西美術批評を手がかりに  呉孟晋

二、新興藝術の動向
 魯迅と中国新興版画  奈良和夫
 傅抱石と新興版画の周辺
  ─『木刻的技法』の出版をめぐって  瀧本弘之
 劉海粟と石井柏亭
  ─『日本新美術的新印象』と「滬上日誌」をめぐって  東家友子
 中華独立美術協会の結成と挫折
  ─一九三〇年代の広州・上海・東京の美術ネットワーク  蔡濤(大森健雄・訳)
 中国人留学生と新興木版画
  ─一九三〇年代の東京における活動の一端を探る  小谷一郎

三、美術における周縁分野の拡大
 戦前に「剪紙の美」を追い求めた日本人
  ─柳宗悦、中丸平一郎から伊東祐信まで  三山陵
 「アジアの旅人」エリザベス・キース
  ─英国人女性浮世絵師誕生までの活動を追って  畑山康幸
 満洲に活躍した異色玩具コレクター
  ─須知善一の数奇な生涯とその遺産  中尾徳仁
 海を超えた美術
  ─廈門美専・南洋美専の創始者、林学大をめぐって  羽田ジェシカ

あとがき  瀧本弘之
プロフィール

著述家、中国版画研究家。
古版画のみならず、近現代版画にも深い関心を寄せる。並行して中国美術の国際交流にも目配りを忘れない。
著書に、『蘇州版画』(共著、駸々堂 1992年)、『中国抗日戦争時期新興版画史の研究』(共著、研文出版 2007年)、また、近著として『中国歴史名勝図典』(遊子館 2011年)。

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