アジア遊学155
モウヒトツノコテンチ

もう一つの古典知

前近代日本の知の可能性
前田雅之 編
ISBN 978-4-585-22621-5 Cコード 1391
刊行年月 2012年7月 判型・製本 A5判・並製 256 頁
キーワード 古典,近代,近世,中世,中古

定価:2,640円
(本体 2,400円) ポイント:72pt

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書籍の詳細
豊穣なる「知」の世界へ

かつての日本では、「古典」に対する「知」を紐帯とする文化圏が公家・寺家・武家を中心に形成されていた。それらは、漢詩文・和歌の詠作やそれにともなう本文研究・註釈といった学的営為の中で連綿と継承されていった。
しかし、そのような「正統」とされる「知」が形作られる一方で、新たな文化圏を形成する知の蠢動があった。
これらの「もう一つの古典知」が、中世・近世社会をどれだけ豊穣にしていったのか、さらに、近代日本にどのような影を投げかけたのか。多面的な「知」の諸相やダイナミックに変容する「知」のありようを照射することで、豊穣なる日本の知の動態を捉える。

 

 

目次
序言 もう一つの古典知への誘い 前田雅之

中世日本と複数の公共圏 樋口大祐
日羅渡来説話からみた聖徳太子伝の「古典知」 松本真輔
コラム「北叟」と「塞翁」 内田澪子
「師子」と幸若舞曲―『元徳二年三月日吉社并叡山行幸記』を始点として 清水眞澄
楊貴妃の双六―幸若「和田酒盛」の世界 渡瀬淳子
褻の和歌と「俳諧」―『再昌草』の贈答歌を読む 松本麻子
コラム 和漢聯句―後土御門天皇の内々御会をめぐって 小山順子
鷹書における恋と女の秘伝―『女郎花物語』を端緒として 大坪舞
コラム 往来物―もう一つの古典知 綿抜豊昭
ゴシップの公共圏 前田雅之
コラム 絵本・絵巻に見る古典知 石川透
元和版『下学集』と『太平記鈔』―近世極初期辞書の増補資料の一端と〈もう一つの古典知〉同士の交叉をめぐって  野上潤一
「太平記」を纏う物語の展開 ―実録『慶安太平記』を軸として 和田琢磨
コラム 太平記読み―『太平記評判秘伝理尽鈔』の位置 若尾政希
異国戦争を描く歴史叙述形成の一齣―〈薩琉軍記〉の成立と享受をめぐって 目黒将史
コラム 孝行者日本代表の選出―林羅山「十孝子」をめぐって 勝又基
江戸時代の西本願寺と出版 万波寿子
雑纂という形式―近世真宗における絵解き本と図会物 塩谷菊美
コラム 江戸狂歌におけるもう一つの古典知―『山海経』と『狂歌百鬼夜狂』のことなど 石川了
紀州藩蔵書形成の一側面―伴信友と長沢伴雄 亀井森
コラム 「開放の平田国学」とその断絶―羽田八幡宮文庫 森瑞枝
古典知としての近世観相学―この不思議なる身体の解釈学 青山英正
コラム 「年代記」覚書 鈴木俊幸
幕末明治のかわら版と公共性 山田俊治
コラム 三遊亭円朝―「闇夜の梅」をめぐって 延広真治
コラム 歓待と忌避の境界に生きて―日本のモノモライ習俗から 西海賢二
コラム 耕土と生類への眼差し―椎葉の鍬祓い・焼畑の祭文と大関松三郎詩集『山芋』 増尾伸一郎
プロフィール

前田雅之(まえだ・まさゆき)
明星大学人文学部日本文化学科教授。専門は中古・中世文学、古典学。
著書・論文に『今昔物語集の世界構想』(笠間書院、1999年)、『記憶の帝国』(右文書院、2004年)、『古典的思考』(笠間書院、2011年)、『中世文学と隣接諸学5 中世の学芸と注釈』(編著、竹林舎、2011年)、「僧侶の恋歌(3)勅撰集編(下・1)」(『明星大学研究紀要―人文学部―日本文化学科』20、2012年3月)などがある。

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