ウサギトカメノドクショブンカシ

「ウサギとカメ」の読書文化史

イソップ寓話の受容と「競争」
府川源一郎 著
ISBN 978-4-585-23052-6 Cコード 0037
刊行年月 2017年4月 判型・製本 四六判・並製 256 頁
キーワード 現代社会,文化史,社会学,昭和,大正,明治,近現代

定価:2,640円
(本体 2,400円) ポイント:72pt

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書籍の詳細

明治時代に日本に輸入された「ウサギとカメ」はどのように受容され、どのような「教訓」が付されていったのか。
『イソップ寓話集』の享受の様相をたどると同時に、教育に係わる様々な「競争」の話題とをより合わせて読書と教育の問題を考える。

 

 

目次
はじめに

一、日本初の翻訳文学―近代以前
 近代以前の「イソップ寓話」邦訳の様相
二、近代教育への導入―明治初頭
 イソップ寓話採用の理由―近代学校の教科書教材として/ 初めての翻訳―渡部温の『通俗伊蘇普物語』/「蝉」から「キリギリス」へ―変換されるイソップ寓話/ウサギとカメと「キツネ」がいた―福沢英之助の『訓蒙話草』
三、競争と試験の時代
 「競争」という意識/誰が「ウサギ」で、誰が「カメ」か?―試験による差異化と「競争」/落第者の存在/「エリート」になるために―新たな進学競争の発生
四、明治国語読本の教訓
 明治期国語教科の変遷/国語読本に掲載されたイソップ寓話/「寓意」と「下心」/様々な学習活動の工夫
五、平易な文体へ
 姿を消すあからさまな教訓/平易な文体とことばの教育/「競争」のルーツとしての平易な国語
六、海外での読まれ方
 英米のリーダーの影響/アメリカの読本―プラグマティックな教科書/イギリスの読本―教養主義と文化主義/ドイツの読本―日本に大きな影響を与えた国
七、修身教育の素材として
 修身教育と修身教科書/修身教科書とイソップ寓話/修身読み物とイソップ寓話/子ども向け修身読み物とイソップ寓話/滑稽譚や説教話/「動物競争」のあれこれ
八、「唱歌」の中のウサギとカメ
 韻文のウサギとカメ/「もしもしかめよ」の詞と曲/音楽劇の「ウサギとカメ」
九、子どもの読み物として
 年少者に向けた翻訳書/巌谷小波の仕事/教養層向けの子ども図書/全集類の中の「ウサギとカメ」/多層化するイソップ寓話の受容
一〇、国定教科書での扱われ方
 国定国語読本の「ウサギとカメ」/戦後直後、最後の国定国語教科書
一一、戦後の変遷
 戦後の子ども向けイソップ寓話/子ども読書材としてのイソップ寓話/「ウサギとカメ」の書き換え活動
一二、現代の競争社会の中で
 戦後社会の転換点/高度経済成長から「ゆとり」の時代へ/「徒競走」という思想/国際競争とPISA学力
  
あとがき
巻末資料:明治・大正・昭和・平成の『イソップ寓話翻訳』出版点数/「ウサギとカメ」をめぐる略年表
索引
プロフィール

府川源一郎(ふかわ・げんいちろう)
1948(昭和23)年。東京に生まれる。横浜国立大学大学院教育学研究科修了。
川崎市の公立小学校で普通学級、障害児学級(ことばの教室)担任の後、横浜国立大学教育学部附属鎌倉小学校教諭を経て、横浜国立大学教育人間科学部教授。現在、日本体育大学教授。博士(教育学)。
日本文学協会、全国大学国語教育学会、日本国語教育学会、日本読書学会、日本児童文学学会、日本教育学会、NIE学会などに所属。
主な著書に、『消えた「最後の授業」―言葉・国家・教育』(大修館書店 1992年)、『「稲むらの火」の文化史』(久山社 1999年)、『「ごんぎつね」をめぐる謎―子ども・文学・教科書』(教育出版 2000年)、『私たちのことばをつくり出す国語教育』(東洋館出版社 2009年)、『明治初等国語教科書と子ども読み物に関する研究―リテラシー形成メディアの教育文化史』(ひつじ書房 2014年)など。

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