チュウゴクコテンブンガクニエガカレタカワヤイドカンザシ

中国古典文学に描かれた厠・井戸・簪

民俗学的視点に基づく考察
山崎藍 著
ISBN 978-4-585-29200-5 Cコード 3098
刊行年月 2020年11月 判型・製本 A5判・上製 336 頁
キーワード 民俗学,古典,中国

定価:9,900円
(本体 9,000円) ポイント:270pt

 品切 
書籍の詳細
「境界」を探る―

中国古典文学に描かれる厠や井戸、それにまつわる道具や、井戸の周囲などを「めぐる」という行為には、どのような観念が存在していたのか。
「異空間」のひとつとしても位置づけられている厠、そして厠神の存在。文言小説で描かれる「境界としての井戸」の発想を用いて作られた元稹の「夢井」。白居易「長恨歌」におけるかんざし描写の独自性…古代中国の人々がそれらの場所・道具・行為をどのように認識し、如何にその象徴性を詩歌に反映させたかを綿密な資料調査と分析から考察する。
従来、等閑視されてきた民俗学的視点から、詩歌研究の新たな可能性を探る快著。

 

 

目次
緒 言

第一章 正と負の厠神―中国における厠観―
一 はじめに
二 日本、中国における厠関連研究の整理
三 建築物としての厠
四 害悪をもたらす負の厠神―附・厠での禁忌―
五 正の厠神
六 正と負の厠観の共存―結びにかえて―

第二章 元稹「夢井」考―中国における井戸観―
一 はじめに
二 清らかさ―民を養う井戸―
三 閉塞感―淀んだ井戸―
四 異界への通り道―文言小説における井戸を中心に―
五 故郷の景象と井桐―時の経過と憂愁―
六 元稹「夢井」の位置
七 おわりに

第三章 元稹「夢井」における「遶井」の意味―死者を悼む旋回儀礼―
一 はじめに
二 問題提起
三 「めぐる」行為に関する先行研究の整理
四 「夢井」における「めぐる」行為(一)―「徘徊遶井顧」―
五 「夢井」における「めぐる」行為(二)―「還来遶井哭」―
六 おわりに

第四章 李白「長干行二首 其一」における「遶牀」―婚姻に関する旋回儀礼―
一 はじめに
二 「長干行二首 其一」原文および問題提起
三 「青梅」について―梅と愛、婚姻―
四 めぐる行為と婚姻儀礼―「帳」「廬」と「遶牀」―
五 「長干行」の「牀」―唐代の詩文における井牀と『伊勢物語』―
六 おわりに

第五章 李賀「後園鑿井」考―釣瓶と轆轤に託されたもの―
一 はじめに
二 李賀「後園鑿井」原文と注釈整理
三 李賀「後園鑿井」解釈―第一句から第二句「井上轆轤 牀上転」―
四 李賀「後園鑿井」解釈―釣瓶と轆轤に託されたもの―
五 李賀「後園鑿井」解釈―第七句から第十句・時間と太陽―
六 おわりに

第六章 白居易「長恨歌」の試み―かんざしの喪失と破鏡重円故事―
一 はじめに
二 中国におけるかんざしの名称
三 隋代までのかんざし詩
四 唐代におけるかんざし詩
五 おわりに

附 流れる汗・にじむ汗―白居易における舞妓の汗描写を中心に―
一 はじめに
二 隋までの作品―流れる汗からにじむ汗へ―
三 唐代における汗描写
四 西方音楽の流行―白居易の楽舞詩と汗描写―
五 おわりに

補論一 京都大学人文科学研究所所蔵『天地瑞祥志』第十六翻刻・校注―「醴泉」「井」―

補論二 日本の古典文学における井戸描写概説

結 語
あとがき
主要参考文献一覧
英文摘要・中文摘要
索引 (人名索引・作品名索引・書名索引)
プロフィール

山崎 藍(やまざき・あい)
1977年東京都生まれ。東京女子大学現代文化学部卒業。東京大学大学院人文社会系研究科アジア文化研究専攻修士課程修了、同博士課程単位取得退学。博士(文学)。
明星大学人文学部准教授などを経て、現在青山学院大学文学部准教授。
主な共著書に『穆天子伝・漢武故事・神異経・山海経他』(竹田晃・梶村永・高芝麻子と共著、中国古典小説選1、明治書院、2007年)、主な論文に「元稹悼亡詩《夢井》新釈―以中国古代井観為視点」(『国際漢学研究通訊』第11期、2016年)、「かんざしの喪失と破壊―先秦から唐代に至るかんざし詩の変遷と「長恨歌」の試み」(『日本中国学会報』第70集、2018年)、「流れる汗・にじむ汗―白居易における舞妓の汗描写を中心に―」(『白居易研究年報』第20号(最終号)、勉誠出版、2020年)などがある。

書評・関連書等

★書評・紹介★
香港「明報新聞」(2021年3月7日)にて紹介されました。

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