美術史、茶華香道の研究に必備の書。多種多様な芸道伝書の成立と展開過程を数量化理論を応用して解明。座敷飾の聖典であり、花伝書の母胎であった『君台観左右帳記』現存本は、150件あまりにのぼり、それらを整理・分類し解題する。また関連する印譜・茶書・花書・香書50件を解題し、「文阿彌花伝書」「専応口伝」の諸本を系統づけるもので、江戸初期の柳営御物202件を決定し、特に将軍家光甍去時の御物の状況がわかる。さらに「玩貨名物記」は正保3年の情報を元にしたものと解明された。
・影印篇55件(330頁)は『君台観左右帳記』天文五年写本を始めとして、東北大学本に遡るもの、中期型、類従本原形、「御飾書」祖本、主要名物記を全巻影印し、かつ幕末に至る座敷飾の主要文献を参考資料として掲げる。新出資料、初紹介資料が多い。
・翻刻篇19件(二段組110頁)は、『君台観左右帳記』未翻刻本、宗珠所伝室町写本、主要名物記、古茶書、謡曲までを含む。
・研究篇(360頁)では、『君台観左右帳記』各部分の詳細な比較を行い、諸本鑑別の基準を与える。さらに柳営御物の詳細な表を含み、江戸初期の202件を決定し、かつ諸本での記載対照表を掲載する。『君台観左右帳記』の全体像、並びに柳営御物全体像の初めての総合研究。