ツレヅレグサヘノミチ

徒然草への途

中世びとの心とことば
荒木浩 著
ISBN 978-4-585-29123-7 Cコード 3095
刊行年月 2016年5月 判型・製本 A5判・上製 440 頁
キーワード 思想,古典,中世

定価:7,700円
(本体 7,000円) ポイント:210pt

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書籍の詳細
心に思うままを書く草子、『徒然草』―

日本文学史に燦然と輝くこの類まれなる作品は、如何にして出来したのであろうか。
中世びとの「心」をめぐる意識を和歌そして仏教の世界にたどり、『源氏物語』『枕草子』などの古典散文との照応から、〈やまとことば〉による表現史を描きだす。

 

 

目次
序 章―本書へのいざないと展望
 一 一つのカラダに二つの心
 二 外にある心
 三 妄心のいたりて狂せるか―〈心〉と〈外部〉
 四 魔と文芸
 五 自分の内なる二つの心―真心と妄心
 六 心と鏡―妄心こそ悟りの証し
 七 本書への展望

第一章 心に思うままを書く草子―徒然草とは何か
 一 『徒然草』成立伝説が示唆すること
 二 つれづれなるままに
 三 『徒然草』序段表現の典拠再考―『枕草子』跋文をめぐって
 四 序段謙退の構造
 五 心に浮かぶことを書き付ける系譜
 六 手習・反古と思うままを書く草子
 七 『徒然草』序段と『源氏物語』―「硯にむかふ」手習
 八 『徒然草』序段と『源氏物語』―「そこはかとなく書きつくる」手習
 〈補論〉
 その一 「ものぐるほし」について
 その二 「硯にむかふ」女
 その三 兼好と「小野」

第二章 心に思うままを書く草子―〈やまとうた〉から〈やまとことば〉の散文史へ
 一 『源氏物語』の手習から『徒然草』へ
 二 心に思うことを書くことと『古今和歌集』
 三 心に思うままを詠む京極派への批判が拓く散文表現の可能性
 四 兼好の『古今和歌集』注釈と『徒然草』
 五 歌人としての兼好と「随意」なる「やまとことば」の提唱
 六 思う心と綴ることば―『徒然草』の選択と方法
 七 『徒然草』という達成―中世散文史へ向けて

第三章 徒然草の「心」
 一 心に動く―問題の所在
 二 心にうつりゆく―『徒然草』序段の解釈
 三 心に「うつりゆく」と鏡の譬喩
 四 心と鏡の中世
 五 『徒然草』二三五段の譬喩をめぐる
 六 『徒然草』と禅的表現―『仏法大明録』をめぐって
 七 『明心』が提起する視界
 八 真心と妄心の構造―『徒然草』への途
 九 心と詞―鏡の比喩がもたらすもの

第四章 徒然草と仮名法語
 一 『徒然草』と禅宗との関係
 二 『徒然草』と仮名法語の類似性
 三 仮名法語の体用論をめぐる問題と『徒然草』
 四 『徒然草』と禅という視点
 五 聖一国師仮名法語について

第五章 ツクモガミの心とコトバ
 一 ちいさきもの―ヒアシンスハウスの心
 二 物に宿る精気、変化するツクモガミ
 三 ツクモガミと『伊勢物語』古注
 四 「作物所」とツクモガミ

第六章 和歌を詠む「心」
 一 『撰集抄』に於ける和歌と唯識
 二 唯識を説く『古今和歌集』注釈書
 三 『沙石集』の歌論が示唆するもの
 四 和歌を詠む〈二つの心〉と唯識論
 五 外から来る心と散文の成立
 六 和歌と散文―根拠と離脱へ

第七章 和歌と阿字観―明恵の「安立」をめぐって
 一 明恵『遣心和歌集』の「安立」
 二 仏教語「安立」再考と為兼歌論「相応」との連続
 三 「安立」が導く阿字観と和歌の関係
 四 『遣心和歌集』の「安立」再読―阿字観との関わり
 五 阿字観と『古今和歌集』
 六 阿字観と明恵

第八章 沙石集と〈和歌陀羅尼〉説―文字超越と禅宗の衝撃
 本論の前提―はじめにかえて
 一 和歌陀羅尼説について
 二 『沙石集』の和歌陀羅尼説
 三 『沙石集』に先行する和歌陀羅尼説と意味―三国言語観をめぐって
 四 『沙石集』の言説と神道・真言・天台、そして禅宗
 五 マルチ言語としての三国言語観とハイパー言語としての以心伝心―和歌陀羅尼観のゆくえ

第九章 仏法大明録と真心要決―沙石集と徒然草の禅的環境
 一 無住『沙石集』と兼好『徒然草』―その類似と禅的環境
 二 聖一国師円爾に於ける『宗鏡録』と『仏法大明録』
 三 虎関師錬の『仏法大明録』忌避
 四 普門院蔵の宋版『仏法大明録』と古写本が示すこと
 五 良遍著『真心要決』における『仏法大明録』引用
 六 良遍『真心要決』の成立と円爾そして『仏法大明録』所引のこと
 七 「真心」と「妄心」をめぐる『宗鏡録』と『仏法大明録』の位置
 八 『真心要決』に対する『仏法大明録』のさらなる影響について
 九 『沙石集』の「真心」について
 十 無住と円爾―『宗鏡録』と『仏法大明録』をめぐって
 十一 無住論の行方―おわりにかえて

第十章 『徒然草』というパースペクティブ
 一 『徒然草』前半部と『枕草子』―問題の所在
 二 「法師」をめぐる
 三 山極圭司の『枕草子』影響論
 四 堺本「めでたきもの」と『徒然草』第一段
 五 堺本再評価と前田家本独自箇所の位置づけ
 六 中世に於ける堺本の流行と『徒然草』
 七 堺本から見た「法師」論
 八 『徒然草』の地平と視界
 九 第一九段から見えること
 十 『徒然草』のパースペクティブ―都・あづま・片田舎の発見


あとがき
初出一覧
引用本文等一覧

索 引
 人名索引
 書名・事項等索引
 徒然草章段・諸本索引
プロフィール

荒木浩(あらき・ひろし)
1959年生まれ。京都大学文学部卒、同大学院博士後期課程中退。京都大学博士(文学)。大阪大学教授などを経て、現在国際日本文化研究センター教授・総合研究大学院大学教授。
著書に、『日本文学 二重の顔―〈成る〉ことの詩学へ』(大阪大学出版会、2007年)、『説話集の構想と意匠―今昔物語集の成立と前後』(勉誠出版、2012年)、『かくして「源氏物語」が誕生する―物語が流動する現場にどう立ち会うか』(笠間書院、2014年)などがある。

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