「人生は短い。人はどんどん死んでいる。そんなつまらぬ本を読んでどうする」
そう言って憚らぬ著者が、戦前・戦後の懐かしい書物を語り、歴史の裏表にふれる。
学際的・国際的に活躍した平川の随筆は反大勢(ハンタイセイ)的で「偏見」まで面白い。
初版本未収録の記事二百余点がこの決定版第三十三巻に新たに加えられる。
書物の声を聴くとは、歴史の声を聴くことである。複数の言葉を学び、複数の書物を読めば、たとえば『毛沢東語録』しか読まない人と違って、人の道を踏み違えることも少なかろう。また日本と西洋と非西洋の三点測量を行なえば、たとえば『朝日新聞』しか購読しない人と違って、世界の中の日本が進む道を間違えることが少なかろう。言ってみればこうした当り前のことを、著者平川ははっきりと言う。時間と空間を自在に旅する著者は、日本の閉ざされた言論空間の壁の外へ出る。言論の自由を守るとはそんなタブーとしての「政治的公正」political correctnessを破ることではあるまいか。