ゲンジモノガタリトヘイアンチョウカンブンガク

源氏物語と平安朝漢文学

長瀬由美 著
ISBN 978-4-585-29173-2 Cコード 3095
刊行年月 2019年2月 判型・製本 A5判・上製 336 頁
キーワード 漢文,古典,平安,中古

定価:7,700円
(本体 7,000円) ポイント:210pt

 品切 
書籍の詳細
交響する和と漢

平安時代の文人貴族にとって、漢の思想・文化は、ある種の規範かつ憧憬の対象としてあった。
なかでも白居易の詩文は日本に舶載されて以来、広く愛され、日本の漢文世界に深く根をおろすとともに、『源氏物語』などの物語文学を育む豊かな土壌となった。
仮名文学が興隆して国風文化が開花し、また一方で、漢文学的な文化潮流が再興し頂点に達した一条朝の時代―。その時代に花開いた和漢の作品を丁寧に読み込み、そこにあらわれる表現を丹念に分析することで、和の内なる漢のあり方、和漢の交響を文学史上に位置付ける。

 

 

目次


Ⅰ 白居易の文学と平安中期漢詩文
 第一章 一条朝前後の漢詩文における『白氏文集』諷諭詩の受容
   一 問題の所在
   二 平安時代中期における白居易諷諭詩受容の様相
   三 具平親王詩と白居易諷諭詩
   四 慶滋保胤の文
   おわりに
 第二章 菅原文時「封事三箇条」について
   はじめに
   一 文時意見封事の構成と内容
   二 結びの文言の不審
   三 白居易擬制の方法との関連
   おわりに
 第三章 一条朝文人の官職・位階と文学―大江匡衡・藤原行成・藤原為時をめぐって
   一 匡衡と行成の書状
   二 藤原行成および大江匡衡の詩
   三 藤原為時および大江匡衡の詩
 第四章 一条朝の文人貴族と惟宗允亮―源為憲詩を起点として
   はじめに
   一 源為憲詩と藤原行成『権記』
   二 惟宗允亮『政事要略』と白氏受容
 第五章 平安時代の「長恨歌」受容―金澤文庫本『白氏文集』の訓から
   はじめに
   一 「但教心似金鈿堅 天上人間会相見」の解釈 一―輪廻転生の発想
   二 「但教心似金鈿堅 天上人間会相見」の解釈 二―金澤文庫本の訓点
   三 金澤文庫本の訓点の由来 一―願文の表現
   四 金澤文庫本の訓点の由来 二―謫女仙の発想
   おわりに

Ⅱ 『源氏物語』と漢詩文世界
 第一章 『源氏物語』准拠の手法と唐代伝奇・中唐の文学観
   はじめに
   一 唐代伝奇の手法
   二 中唐の文学観
   三 『源氏物語』の物語論と中唐の文学観
 第二章 『源氏物語』と中国文学史との交錯―不可知なるものへの語りの方法
   はじめに
   一 不可知なるものに対する合理的な態度
   二 不可知なるものに対する非合理的な態度
   三 『源氏物語』と唐代伝奇及び「長恨歌」
   おわりに
 第三章 『源氏物語』と史書の接点―童謡の方法
   はじめに
   一 賢木巻の正月司召について
   二 韻塞の負態の饗宴場面
   三 史書における「童謡」
   おわりに

Ⅲ 白居易の文学と『源氏物語』
 第一章 中唐白居易の文学と『源氏物語』―諷諭詩と感傷詩の受容について
   一 白居易諷諭詩と『源氏物語』
   二 白居易恋愛詩と『源氏物語』―(一)感傷と諷諭
   三 白居易恋愛詩と『源氏物語』―(二)仏教に救いを求める姿勢
   おわりに
 第二章 『源氏物語』と「長恨歌」―正編から続編へ
   はじめに
   一 『源氏物語』と「長恨歌」
   二 桐壺巻の桐壺帝と「長恨歌」
   三 幻巻の光源氏と「長恨歌」
   四 宇治十帖世界の「長恨歌」
 第三章 朝顔巻の紫の上―月と人と 白居易詩のこころへ
   はじめに
   一 朝顔巻の紫の上歌について
   二 紫の上歌と「琵琶行」
   おわりに
 第四章 荒廃した邸宅と狐―『源氏物語』蓬生巻と白居易「凶宅」詩
   一 蓬生巻と白居易「凶宅」詩
   二 「凶宅」詩の受容について
   三 中世の受容との相違

付 章 『紫式部日記』の思考の姿―白居易詩「身」と「心」詠との関連において
   はじめに
   一 池上の水鳥をみつめる白居易詩
   二 白居易「身」と「心」詠について
   三 白居易「身」と「心」詠と『紫式部日記』

あとがき
初出一覧
索 引
プロフィール

長瀬由美(ながせ・ゆみ)
1975年生まれ。都留文科大学文学部国文学科教授。専門は平安朝文学。
主な論文に「『源氏物語』と中唐白居易詩について」(『2014年パリ・シンポジウム 源氏物語とポエジー』青簡舎、2015年)、「『源氏物語』准拠の手法と唐代伝奇・中唐の文学観」(『中古文学』第95号、2015年6月)、「『源氏物語』と「長恨歌」―正編から続編へ」(『源氏物語 煌めくことばの世界 2』翰林書房、2018年)などがある。

★受賞★
「紫式部学術賞」を受賞しました。

書評・関連書等

★書評・紹介★
「和漢比較文学」(2020年2月号)に書評が掲載されました。
 →評者:河野貴美子(早稲田大学文学学術院教授)
★受賞★
「紫式部学術賞」を受賞しました。

★広告情報
「朝日新聞」(2019年3月9日)に5段12割広告を掲載しました。

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