800年前の夢の記録
鎌倉仏教に異彩を放つ僧・明恵の精神世界を探る基礎資料。
中世の歴史・信仰・美術・言語、ひいては広く日本文化を解明するための画期的成果。
2015年に刊行後、早々に品切となった同書を増補改訂。新出の夢記4点を含む増補改訂を施した決定版!
【本書の特色】
・高山寺以外の各所に分散所蔵されており、全体を見渡しての研究が困難であった明恵上人の山外本「夢記」をはじめて網羅的に収集。それらの影印・解題・目録及び夢記一点ごとの翻刻・訓読・現代語訳・考察を収載した、明恵上人夢記研究における画期的な基礎文献である。
・夢・思想・宗教・歴史などの分析・検討に広く有用な資料を提供し、文学・思想・宗教・歴史・心理学・精神医学・日本語学・古筆学・美術等、さまざまな研究分野に裨益する必携の一書。
・「Ⅰ影印」ではこれまで全編未紹介であったものを含め、研究上重要である13点の夢記を影印掲載した。
・「Ⅱ解題」では、「明恵上人夢記」の全体像と研究史を概観すると同時に、高山寺蔵の夢記との関係を考察し、さらに大部かつ重要と思われる夢記について詳細な解説を加えた。
・「Ⅲ目録」は、本書収録の夢記計78点の、書誌・内容などの基本情報を一覧できるようにしたものである。本目録によって、高山寺外にある夢記の全体像を把握することが可能になる。
・「Ⅳ訳注」では、上記目録掲載の各夢記について、【翻刻】【訓読】【現代語訳】【語釈】【考察】を掲載した。
・【翻刻】は、可能なかぎり当該夢記の現物調査によって、原態を生かす方法で活字化した。正確な本文の提供は、夢記の根本的研究の始発点として極めて価値が高い。
・【訓読】では、原文を訓読し、適宜句読点や濁点などを付すことで、読みやすく理解しやすくするよう心がけた。訓読については、中世日本語学の専門家の助力も得て、明恵時代の漢文訓読の方式をできるかぎり再現することにつとめたため、日本語学研究の資料としても有用である。
・【現代語訳】では、訓読した夢記を可能な限りわかりやすく現代語に訳した。夢記の現代語訳は初めての試みで、内容の紹介が不十分であった従来の状況を解消するものとして特筆すべきものである。
・【語釈】は、その夢記の理解に必要な語句を立項して説明を付した。中世の歴史・信仰・美術・言語、ひいては広く中世文化を解明するための重要な手掛かりを含む、多くの新知見が盛り込まれたものである。
・【考察】においては、その夢をどのように理解すべきか、また、その夢が生まれる機縁や背景を明恵自身の文脈から考察し、内容理解について掘り下げた。夢記を深く理解し、さらにそれを出発点として中世文化に考察を広げる契機となるものである。
・「Ⅴ資料」には、【夢記年表】【参考文献一覧】【人名一覧】【事項索引】を収め、研究のツールとして有用なものを収載した。
・【夢記年表】には、二種類の年表を掲載した。一つは明恵の夢記から抽出したデータに基づく年表であり、もう一つは明恵の根本伝記である『高山寺明恵上人行状』等の関連資料に含まれる夢記の年表である。夢を時間軸に沿って配列することで、明恵の宗教者・人間としての内的な成熟や変化、状況と夢の関連など多方面からの分析が可能になる。
・【参考文献一覧】は、夢記研究に関する論文や研究書を一覧にしたもので、研究史を容易に捉えることができる。
・【人名一覧】は、夢記に登場する人名を抽出して一覧にし、簡潔な説明を付した、いわば夢記人名辞典である。明恵の人脈や文化圏を理解するための重要なツールとなるものである。
・【事項索引】は、各夢記に登場する事項のうち、神仏名、地名、修法名など、重要と思われるものを抽出して索引とした。この索引によって、明恵の夢のモチーフの淵源などを探ることもできる。