豊穣なる「知」の世界へ
かつての日本では、「古典」に対する「知」を紐帯とする文化圏が公家・寺家・武家を中心に形成されていた。それらは、漢詩文・和歌の詠作やそれにともなう本文研究・註釈といった学的営為の中で連綿と継承されていった。
しかし、そのような「正統」とされる「知」が形作られる一方で、新たな文化圏を形成する知の蠢動があった。
これらの「もう一つの古典知」が、中世・近世社会をどれだけ豊穣にしていったのか、さらに、近代日本にどのような影を投げかけたのか。多面的な「知」の諸相やダイナミックに変容する「知」のありようを照射することで、豊穣なる日本の知の動態を捉える。