南宋・元代に日中間を渡航した僧(107人)の伝記を一覧とし、重要記事を翻刻集成。東アジア海域交流史研究の基礎資料集。
附篇では、日本近世における僧伝伝来・集積の過程を精緻な調査研究より明らかにし、歴史資料としての僧伝を位置づける。史料論・書誌学研究における画期的成果。
【本書の特長】
◎当該期の日中交通史料の中でも僧伝中には他の史料では知り得ない事実を伝えるものが多々存在する。僧伝の網羅的収集とそれらに対する的確な史料批判により、東アジア海域交流史や仏教文化史研究の基礎史料を提供する。
◎南宋・元代(1127~1368)において日中を往来したとされる僧侶107名の伝記を網羅・集成。伝記中の渡航記事を抽出し、翻刻した。
◎当該僧伝の史料的信頼度を測る指標として、僧侶の示寂年月日・僧伝の選者・僧伝の成立時期の欄を設け、また、備考欄に僧伝の成立事情、撰者・撰述依頼者との関係、僧伝主人公との法系上の関係などを示した。渡航の史実が誤伝と考えられるものはその旨も指摘。
◎当該伝記の収録書(僧伝史料集等)、活字・影印本(古版本・写本含む)とその所在を示し、調査・研究上の利用の便を図った。僧伝史料の所在確認は、豊富な仏教史料の整理が必須であり、また特殊な知識も必要とされる。その点からも重要な基礎資料となるものである。
◎僧伝史料を収集・編纂した「僧伝史料集」の書誌情報・内容紹介および収載書目一覧を附し、史料的位置付けを明確にした。
◎対外関係史上、特に重要と考えられる史料は、諸本との対校の上、翻刻を掲載した。
◎論考篇では、入宋・入元僧や渡来宋元僧を含む禅僧の伝記にどのようなものがあり、それらがいかにして今に伝えられたかを明らかにする。これまで等閑に附されてきた近世における僧伝の収集と編纂という営みにメスを入れ、史料論・アーカイブズ論・書誌学等、諸分野における研究の基盤を提供する。