古代・中世日本における「知」の伝授の様相を伝える貴重伝本を全編原色で初公開。
詳密な訓点・注記・紙背書入を忠実に再現した翻刻、「和漢朗詠集」研究の到達点を示す解題・論考を附した必備の書
『和漢朗詠集』は平安中期、藤原公任(966-1041)によって編纂された詩歌のアンソロジーである。成立当初から貴族社会に流通し、平安末から鎌倉初めの時期には幼学書(誰もが10歳前後に学習する書籍)の一つとなった。
なかでも、ここに影印する『三河鳳来寺旧蔵暦応二年書写 和漢朗詠集』は、以下の特徴を有する学界に未紹介の資料である。
一、本文に詳密な訓点(ヲコト点・傍仮名)が施されていること。
二、行間・欄上に小字注記(内容は多岐にわたる)が多く書き入れられていること。
三、紙背(裏書)に詩語の典拠・用例として漢籍本文が多く引用されていること。
これらの書入れは、平安時代後期から鎌倉時代にかけて主要な博士家(漢学を専門とする家々)で行なわれた『和漢朗詠集』研究の成果を示すものである。
なお、書写者の藤原師英(もろひで)は、式家藤原氏の儒者で、東山御文庫蔵 九条本『文選』の書写者として名高い。本書は師英の奥書より知られるように、『和漢朗詠集』の訓説を第三者に伝授することを目的として、累代の儒者が自ら書写・校合したものである。書入れの存する『和漢朗詠集』古写本は比較的多く現存しているが、大半は伝授を受ける側(学習者)が書写したものであり、この本のような伝授する側のものは殆ど残っていない。古代・中世日本における「知」の伝授のあり方を如実に示す貴重資料であるといえよう。
(本書の特長)
・『三河鳳来寺旧蔵暦応二年書写 和漢朗詠集』(個人蔵)の全編をフルカラーで影印。同書の全編公開は史上初。
・利用の便に供するため、詳密な訓点・小字注記・紙背書入をも忠実に再現した翻刻を附した。
・解題・論考では、「和漢朗詠集」の全体像を明らかにし、国文学史上の位置づけ、朗詠集研究の到達点を示した。
*こちらの商品はニ分冊(分売不可)となっております。