中世日本の絵巻をめぐる、人文学研究の “知の興宴”
十六世紀前半、狩野元信とその工房により制作された『酒飯論絵巻』。
酒好きの公家、飯を好む僧侶、酒も飯も程々がよいと中庸を重んじる武士がそれぞれの自説を展開し、優劣を争うというストーリーを持つ。
詞は、詠歌による言語遊戯として展開され、さらには宗論にまで発展する。
絵では、飲食・調理・宴会の情景が丹念に描かれ、その豊かな食の風景からは、平和な世界への願いが読み取れる。
室町時代と江戸時代の過渡期に制作されたこの絵巻は、江戸における新たな表象文化誕生を導いた重要な資料でもある。
文学史のみならず、美術史・歴史学・食文化史など、様々な分野から『酒飯論絵巻』を読み解く。