ジョウドシンコウノテンカイ

浄土信仰の展開

菊地勇次郎 著
ISBN 978-4-585-21022-1 Cコード 3015
刊行年月 2014年9月 判型・製本 A5判・上製 500 頁
キーワード 仏教

定価:12,650円
(本体 11,500円) ポイント:345pt

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書籍の詳細

元東京大学史料編纂所所長・大正大学教授の菊地勇次郎の遺稿集。
前著『源空とその門下』に収められていない論文を、生前の構想に基づいて集成。
政治史・社会経済史の亜流ではない、史料と実地調査に基づく宗教史のあるべき研究姿勢を追究した成果がまとめられており、日本浄土教史の研究を中央のみならず地方からの視点を丹念に取り入れた研究は、今なお価値を持つ。

 

 

目次
第一部 念仏の系譜
一 平安時代の浄土教
 1 中国浄土教の伝来と飛鳥・奈良時代の浄土教
 2 天台宗の浄土教と平安貴族
 3 藤原時代の浄土信仰と浄土教美術
 4 山寺・山林の修行と神仙
 5 聖の布教と沙弥・在俗の浄土信仰
 6 別所聖の浄土教
 7 和讃と説話と今様
 8 僧兵の活動と院政時代の仏教

二 『日本往生極楽記』の撰述―往生極楽への憧憬―
 1 慶滋保胤の浄土信仰
 2 源兼明と具平親王
 3 源兼明の法華信仰
 4 慶滋保胤と具平親王
 5 法華と念仏
 6 儒者と僧侶の交わり
 7 『日本往生極楽記』の撰述
三 源空(法然)の生涯
 1 出家
 2 黒谷での修学
 3 聖の念仏
 4 源空(法然)と善導
 5 大原問答
 6 『選択本願念仏集』の撰述
 7 源空(法然)の教え
 8 「七ヶ条の制誡文」と配流
 9 赦免と臨終
 10 源空(法然)没後の浄土教団
四 慈円と隆寛
五 初期念仏者の系譜
 1 空也
 2 教信
 3 源信
六 真言念仏の展開
 1 真言寺院における浄土思想
 2 東大寺における念仏業
 3 興福寺別当定昭の念仏業
 4 興福寺清海の念仏業
 5 源信流念仏の展開と真言寺院
 6 高野山における念仏業
 7 真言念仏と別所的存在
 8 永観と真言念仏
七 鎌倉新仏教の研究 
 
第二部 聖の系譜
一 聖について―『日本国現報善悪霊異記』と『日本往生極楽記』―
 1 古代の「ひじり」
 2 仏教概念としての「聖」
 3 『日本国現報善悪霊異記』における聖の分類
 4 『日本往生極楽記』以降の聖
二 聖と在俗の現世利益
 1 聖の性格
 2 聖の教化と在俗
 3 聖と鎌倉仏教
三 飛行三鈷―『高野山勧発信心集』について―
 1 『高野山勧発信心集』と信堅
 2 飛行三鈷相伝と勧発信心
 3 飛行三鈷の伝承
四 遊行上人と七条道場金光寺
 1 七条道場の成立
 2 金光寺初祖呑海
 3 鎌倉~南北朝期における金光寺の発展
 4 金光寺と清浄光寺
 5 時宗教団の隆盛
 6 室町幕府と金光寺
 7 応仁の乱後の金光寺
 8 豊臣秀吉と金光寺
 9 江戸幕府と金光寺
 10 大伽藍形成と衰退

第三部 浄土信仰の地方的展開
一 武士と社寺―常陸佐竹・太田郷における佐竹氏―
 1 佐竹寺と佐竹氏
 2 臨済禅と佐竹氏
 3 曹洞禅・佐久山方真言宗と佐竹氏
二 常陸における浄土教
 1 天台宗の展開
 2 善光寺信仰の展開
 3 浄土宗の展開
 4 敬仏房の活動
三 親鸞とその門下
 1 親鸞の東国移住
 2 上野国佐貫荘での活動
 3 常陸国下妻郷での活動
 4 常陸国稲田郷での活動
 5 明法房の帰依
 6 『唯心鈔文意』の撰述
四 常陸の時衆―時衆の地方的展開―
 1 智真(一遍)と常陸遊行
 2 在地勢力と時衆―八田氏―
 3 在地勢力と時衆―佐竹氏―
 4 太田浄光寺と那珂湊光明寺
 5 宍戸氏と新善光寺
 むすび
五 時衆と陣僧

第四部 神仏習合と修験
一 神仏の結合について―『更級日記』の場合―
 1 菅原孝標娘の初瀬詣
 2 藤原道綱母の物詣
 3 鏡の奉納
 4 「しるしの杉」信仰
 5 観音信仰と神仏の結びつき
 6 神仏習合の形成
二 石動山の『古縁起』と『新縁起』
 1 『古縁起』と『新縁起』の成立
 2 戦国時代の石動山
 3 『古縁起』と『新縁起』の共通点
 4 白山と石動山
 5 石動山への登り口
 6 天台宗系から当山派へ
三 能登の山林修行
 1 気多大社と宝達山
 2 曹洞宗の展開
 3 乙宝寺
 4 「最勝講」という地名
 5 石動山三升
 6 泰澄と石動山修験
 7 石動山
 8 多根口神明社
 9 白山天台と石動山信仰 1 乙宝寺
 2 真言修験と乙宝寺
 3 延命寺
 4 総持寺
 5 快蔵院と宝蔵寺
 6 光兔山と真言修験
 7 中条氏と真言修験
 むすび
五 最澄と酒呑童子の物語
 1 物語の異動
 2 山伏の役割
 3 伝承の地
 4 酒呑童子と大江山
 5 薬師信仰と神祇信仰
 6 酒呑童子と最澄
 7 物語の源流
 8 最澄伝記の説話性

第五部 仏教と文学
一 軍記物語と中世仏教
 1 『平家物語』
 2 『曽我物語』
 3 『太平記』
二 熊谷直実の伝承
三 雲と夢―捨聖一遍―
 1 智真(一遍)の足跡
 2 智真(一遍)の夢想
四 長楽寺千年
 1 創建
 2 平安時代の文人貴族と長楽寺
 3 女性の参詣
 4 隆寛と浄土教
 5 中世の長楽寺
 6 時宗の寺
 7 幕末・明治期の長楽寺

『浄土信仰の展開』刊行にあたって―菊地勇次郎先生の人と学問―
一 出版までの経緯
二 書名と研究の特色
三 本書の内容
四 本書の出版とその周辺
プロフィール

菊地勇次郎(きくち・ゆうじろう)
大正10年(1921)に生まれる。昭和22年(1947)9月、東京大学文学部国史学科卒業。昭和23年(1948)1月、東京大学史料編纂所の史料編纂勤務につき、文部教官、助教授を経て、同48年(1973)、教授。同54年(1979)4月から同56年(1981)3月まで所長。おもに『大日本史料』第9編・第10編(室町・戦国時代)の編纂に従事した。
昭和57年4月、大正大学教授。『国史大辞典』編纂委員、昭和62年から平成4年まで醍醐寺文化財研究所所長。この間、茨城県、福井市、藤沢市、熱海市、壬生町など数多くの自治体史編纂に携わる。東京大学名誉教授。
平成4年(1992)4月、逝去。

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