西來寺本『仮名書き法華経』は、現存する『仮名書き法華経』のなかで最も古い鎌倉時代の写本として知られる妙一記念館本『仮名書き法華経』全八巻と類系の本文系統にあり、仏教語をはじめとする重要な語を数多く有することから国語研究において欠かせない資料である。漢字ひらがな交じり文で漢字表記後の右傍には字音ふりがな、左傍には語釈という文章形式をもち漢訳原文の音読・訓読の状況をつぶさに観察することができる。また、左訓に独自の注解、さらに異本校合による真阿宗淵上人自筆の書込みが多くみられることも特徴である。
本索引は、西來寺本の自立語を全抽出し、五十音順に排列したものである。西來寺本と妙一記念館本の語彙及び語註記における記述内容を対比して読み取りができるように工夫した。『源氏物語』や『今昔物語集』、『極樂願徃生歌』などの物語や和歌への影響もみることができることから、国語研究のみならず、日本文学・日本文化研究にも有益である。
西來寺本『仮名書き法華経』の語彙における国語辞書への収録状況を分析し、語の種類や性格を詳細に分析した論考も収録した。