語りの文学『源氏物語』、その原点に立ち返る。
本文に忠実でありながらよみやすい。
最上の現代語訳!
第五冊は蛍巻~藤裏葉巻。源氏三十六歳の五月から三十九歳の十月までの出来事。
源氏に恋情をほのめかされ、戸惑いを隠せない玉鬘。その美しさは多くの貴公子たちを魅了し求婚を受けるが、彼女を得たのは、何と鬚黒の大将であった。一方夕霧と雲居の雁との幼な恋もようやく内大臣の許すところとなる。源氏は准太政天皇の地位にのぼりつめ、帝と朱雀院の六条院への行幸という、この上ない栄誉に世の注目を浴びる。
巻末の論文では物語の地の文において、語り手(作者)が直接発言するなど、読者を意識した姿勢が認められる「草子地」と呼ばれる表現について論じる。『源氏物語』は他の物語文学に比して非常に豊かな草子地表現が見られるため、草子地についての知識を深めると、よりいっそう『正訳源氏』の世界を堪能することができる。
【本書の特色】
1.美しく正しい日本語で、物語の本質である語りの姿勢を活かした訳。
2.物語本文を忠実に訳し、初の試みとして、訳文と対照させ、物語本文を下欄に示す、本文対照形式。
3.訳文に表わせない引歌の類や、地名・歳事・有職などの説明を上欄に簡明に示す。
4.敬語の語法を重視し、人物の身分や対人関係を考慮して、有効かつ丁寧に訳す。
5.物語本文で省略されている主語を適宜補い、官職名や女君・姫君などと示される人物にも適宜、( )内に呼名を示し、読解の助けとする。
6.訳文には段落を設け、小見出しを付けて内容を簡明に示す。また巻頭に「小見出し一覧」としてまとめ、巻の展開を一覧できるようにした。
7.各巻末に源氏物語の理解を深めるための付図や興味深い論文を掲載。