語りの文学『源氏物語』、その原点に立ち返る。
本文に忠実でありながらよみやすい。
最上の現代語訳!
第六冊は若菜上巻・若菜下巻。源氏三十九歳の冬から四十七歳の年末までの出来事。
朱雀院の皇女女三の宮が源氏に降嫁するも、その幼さは源氏を失望させ、さらに、六条院の蹴鞠で、柏木に垣間見られるという失態まで犯す。その出来事以来、女三の宮への思いを募らせた柏木はついに、六条院が人少なとなった隙に思いを遂げる。二人の密通により源氏は因果応報の恐ろしさに愕然とする。一方、罪の重さに苦悩した柏木は病に臥す…。
巻末の論文では貴族の生活習慣について取り上げる。「夕顔」巻での忍び歩きの実際の人数は何人だったのか? 「若菜」上巻で柏木が女三の宮を垣間見る場面の御簾は、「巻き上がって」いたと解釈するべきか「引き開けられた」と解釈するべきか? など、現代の我々からは理解の及ばない、貴族の生活習慣の実態に迫る。
【本書の特色】
1.美しく正しい日本語で、物語の本質である語りの姿勢を活かした訳。
2.物語本文を忠実に訳し、初の試みとして、訳文と対照させ、物語本文を下欄に示す、本文対照形式。
3.訳文に表わせない引歌の類や、地名・歳事・有職などの説明を上欄に簡明に示す。
4.敬語の語法を重視し、人物の身分や対人関係を考慮して、有効かつ丁寧に訳す。
5.物語本文で省略されている主語を適宜補い、官職名や女君・姫君などと示される人物にも適宜、( )内に呼名を示し、読解の助けとする。
6.訳文には段落を設け、小見出しを付けて内容を簡明に示す。また巻頭に「小見出し一覧」としてまとめ、巻の展開を一覧できるようにした。
7.各巻末に源氏物語の理解を深めるための付図や興味深い論文を掲載。