近代西洋の外圧に日本人はいかに苦闘し対応したか―
広角な視野に立つ人類文化史
「西洋史」「日本史」の枠を越えた二本足の学者平川祐弘の古典的名著
かつて日本帝国の部隊は守備領域を定め、マークス島、ウェーバー諸島などそれぞれを我が縄張りとして陣地を構築、攻撃に備えた。だが米国機動艦隊は南洋から一挙に北上、サイパンを奪取した。
その様もさながらに、旧帝大出身の学徒がMarx, Weber等について「研究」と称する蛸壺式塹壕を掘る間に、駒場出身のコンパラティスト第一期生の筆者は、複数言語をマスターするや知的機動性を発揮して、日本史・西洋史の枠を超え「西欧の衝撃と日本」という大問題に迫り、具体的な史実と人間を取り上げて鮮やかに叙述した。これは東西両洋の空間を飛翔する巨視的な学問的壮挙だが、文学作品としても真に面白い。察するに研究が丹念な微視的な原典味読、フランスでいうexplication de texteから出発しているからだろう。
著者が「見て、感じて、考える」の順を踏んでいるからこそ、読者も歴史的人物の人格に親しく触れることができるのである。