語りの文学『源氏物語』、その原点に立ち返る。
本文に忠実でありながらよみやすい。
最上の現代語訳!
第八冊は匂宮巻~総角巻。薫十四歳~二十四歳の年末までの出来事。
光源氏薨去後、一族の中で、薫と匂宮という二人の貴公子の評判が高かった。薫は自らの出生に疑問を持ち、仏道に傾倒する。そんな中、俗聖のように暮らす、宇治の八の宮の許へ通うようになる。そこで、八の宮の二人の姫君、大君と中の君を知り、匂宮も興味を示す。光亡き後の世界を彩る、「宇治十帖」の幕開けである。
巻末の論文では『源氏物語』の遡及表現を取り上げる。『源氏物語』は長編の物語ゆえに、ある過去の出来事について、その過去の時点では全く触れられず、後になって改めて物語られたり、説明を加えられたりすることがある。これを、『源氏物語』の一つの表現方法として認めて、「遡及表現」と呼び、その具体例を紹介する。そして、物語における効果を考察する。