ゲンジモノガタリノカンシブンヒョウゲンケンキュウ

源氏物語の漢詩文表現研究

笹川勲 著
ISBN 978-4-585-29139-8 Cコード 3095
刊行年月 2017年2月 判型・製本 A5判・上製 384 頁
キーワード 漢文,詩歌,古典,平安,中古

定価:11,000円
(本体 10,000円) ポイント:300pt

 品切 
書籍の詳細
『源氏物語』における漢詩文表現の意義とは何か

漢詩文の学識を備えた紫式部の著した『源氏物語』には、多くの漢詩文が典拠として用いられるとともに、物語独自の表現としての漢詩文をもみることができる。
作中人物の詠む漢詩文や催す詩宴から、作中人物の漢学や漢詩文の素養、出典・引詩文までを「漢詩文表現」として体系的に論じ、漢詩文が物語の主題や構想、表現の形成にいかにかかわっているのかを明らかにする。
また、他の物語文学が描出しえなかった政治や社会、人間の生き方の諸相などを描出する方法として漢詩文が機能していたことを提示する。

 

 

目次
凡 例


一 『源氏物語』の和漢比較文学研究概観―研究史と課題―
二 本書の構成と概要

第一篇 物語の展開と漢詩文表現―〈漢才〉を視点として―
第一章 『源氏物語』の「才」と〈漢才〉

一 平安時代語「才」について―漢語「才」との比較―
二 『源氏物語』の「才」
三 『源氏物語』の〈漢才〉


第二章 光源氏の政治家像と〈漢才〉

一 臣籍降下と〈漢才〉習得
二 桐壺帝の聖断と光源氏の〈漢才〉習得
三 政治家光源氏の基底と〈漢才〉


第三章 夕霧の呼称と〈漢才〉

一 「人の親の」歌と光源氏―朱雀院との対比から―
二 帝、后と「中の劣り」―「御子三人」の中の夕霧の位相―
三 元服の場
四 「大殿の若君」から「大学の君」へ


第四章 柏木の言葉と〈漢才〉

一 柏木の言葉に見える漢詩文表現
二 平安朝貴族社会と『孝経』・『論語』
三 『源氏物語』の「孝」と〈漢才〉
四 柏木物語と『伊勢物語』


第五章 宇治八の宮の「才」と〈漢才〉

一 「橋姫」巻の「才」
二 『源氏物語』続篇の〈漢才〉と人物形象
三 続篇の博士・儒者と「才」―大内記道定を中心に―
四 続篇の冷泉院と「才」―八の宮との対比から―


第二篇 政治の主題と漢詩文表現
第一章 「桐壺」巻の予言と漢詩文表現―鴻臚館の光る君―

一 「高麗人」と「鴻臚館」
二 鴻臚館と菅原文時「封事三箇条」
三 右大弁と菅原道真―元慶度渤海贈答詩の表現から―
四 菅原道真「鴻臚贈答詩序」と光源氏―「党」の語を視座として―
五 大江朝綱「夏夜於鴻臚館餞北客詩序」と光源氏


第二章 朱雀帝御世の政治と漢詩文表現

一 諷諭と王沢讃美
二 朱雀帝御世の政情
三 光源氏の詩と文事―「賢木」巻の作文と韻塞―
四 朱雀帝御世の詩と文事―「内宴」を視座として―
五 桐壺帝御世の詩と文事―「花宴」巻の南殿の桜の宴の意義―


第三章 「澪標」巻の譲国と漢詩文表現―致仕大臣の招聘と光源氏の政治構想―

一 致仕大臣と四皓
二 冷泉帝と孝恵帝
三 成年天皇と摂政設置
四 「留侯世家」と「呂后本紀」―呂后典拠の多面性―

第四章 「松風」巻の漢詩文表現と『伊勢物語』八十二段―桂の院の光源氏―

一 『伊勢物語』から『源氏物語』へ
二 「山崎のあなた」と「嵯峨野」・「大堰」・「桂」
三 「やまと歌」と「絶句」
四 「沈む月」と「昇る月」


第三篇 作中人物の形象と漢詩文表現
第一章 「蓬生」巻の漢詩文表現―叔母北の方の形象と新楽府「塩商婦」―

一 「蓬生」巻と漢詩文―表現と主題―
二 新楽府「塩商婦」と叔母北の方
三 平安朝文学の「塩」
四 塩商の富
五 受領の富・大弐の富


第二章 藤壺宮の形象と漢詩文表現―「朝顔」巻末と尤物論―

一 尤物の主題史と表現史
二 尤物としての桐壺更衣と藤壺宮
三 「朝顔」巻末の藤壺宮と尤物―「鴬鴬伝」を中心に―


第三章 「御師の大内記」の形象と漢詩文表現―『源氏物語』の儒者たち―

一 冷泉朝〈聖代〉の定位と動揺―「少女」巻前史―

二 夕霧大学寮入学と大内記
三 大内記の形象
四 文章博士の形象
五 「すげなし」の系譜
六 「累代」と「起家」


第四篇 寛弘期の文学と漢詩文表現
第一章 『紫式部日記』の漢詩文表現

一 「寛弘」という時代と『紫式部日記』
二 作中人物と〈漢才〉記事―為時・道長・一条天皇―
三 「物語を書く〈私〉」とその時代


第二章 『本朝麗藻』の釈奠詩と『源氏物語』の漢詩文表現

一 『本朝麗藻』の釈奠詩―道真・忠臣の釈奠詩と比較して―
二 「葵」と「向日」
三 『本朝麗藻』と『源氏物語』―国際意識と聖代観―




初出一覧

後 記

索 引
プロフィール

笹川勲(ささがわ・いさお)
1975年11月東京都豊島区生。1998年3月二松學舎大学文学部中国文学科卒業。2015年3月國學院大學大学院文学研究科博士課程後期日本文学専攻修了。博士(文学・國學院大學)。現在、國學院大學兼任講師。専門は、平安朝文学、和漢比較文学。
主な論文に、「『源氏物語』「澪標」巻の譲国と准拠―致仕大臣の招聘と光源氏の政治構想―」(『文学・語学』第204号、2012年11月)、「『源氏物語』「朝顔」巻末と漢詩文―尤物の受容と藤壺宮の形象―」(『和漢比較文学』第53号、2014年8月)、「長保・寛弘聖代観の形成―藤原行成と大江匡衡の詩文から―」(『むらさき』第53輯、2016年12月) などがある。

書評・関連書等

「國學院雑誌」第119巻第6号(2018年)にて、本書の紹介文が掲載されました。(評者:津島昭宏(國學院大學栃木短期大学))

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