近世初期、仏教界のみならず、文学そして出版界にも名を馳せたひとりの学僧がいた
京都深草に庵を結んだ元政上人である。
当時の人びとに愛され数多くの著作が版行された元政の文学の精髄を集めた詩文集『草山集』の全編を読みやすい読み下し文にして収載。元政そして『草山集』の魅力を伝える解説を附した。
「ことば」によって「いのち」を紡ぎ、人の心を伝えていった元政。350年を経て今なお褪せることのないそのことばの力を味読する。
*深草元政上人(1623-1668)
江戸時代前期の日蓮宗の僧。
武士の子として京に生まれ、彦根藩士となるも生来病弱のため26歳で致仕出家、その後、深草に庵を結び、46歳で遷化するまでの歳月を、祖師日蓮上人と法華経の教えに従い、戒律を守りひたむきな仏道修業に生きた人として知られている。
幼少のころより古典を愛し、文学の人としても著名。松永貞徳や熊沢蕃山、北村季吟、石川丈山など様々な分野の人びとと交友関係を有し、その多岐にわたる著作は多くが出版され、広く読者を得た。
主要著作に『龍華歴代師承伝』『本朝法華伝』『釈氏二十四孝』『扶桑隠逸伝』『身延道の記』『温泉遊草』『温泉再遊』『元元唱和集』『聖凡唱和』『草山和歌集』などがある。