日本研究の先輩、後輩として互いに認めあい、敬しあった二人だったが、ハーンの死後、チェンバレンのハーン評価は突如大きく変わった。
日本理解とは西洋人をまきこむ精神のドラマである。
平川祐弘は堂々と挑発する。ライシャワー博士退休記念シンポジウムに招かれた1988年、並み居る博士以下の米国日本研究者を前にしてWho Was the Great Japan Interpreter, Chamberlain or Hearn?という講演をした。英語世界で日本解釈者として誰が偉大か、というデリケートな問題をあえてとりあげたのである。―では本書を読んで日本の皆さまはハーンとチェンバレンのいずれを良しとするか。日本理解とは西洋人学者をもまきこんだ精神のドラマだが、この種の人間関係を読み解くことで、世界の中の日本の位置が初めて見えてくるのではあるまいか。