〈如法〉への回帰がもたらした歴史的展開とは何か―
鎌倉時代初期、戒と律が衰退する日本仏教社会の刷新を企図し、我禅房俊芿により京洛東山に開かれた泉涌寺。
宋代仏教との交渉のなかで、僧侶本来のあり方への回帰を目途し、同寺にもたらされ、実践された宋式の僧制・規則・儀礼は、それに関わる文物の移動や受容を伴いつつ、寺院間のネットワークのなかで広く伝播していった。
寺院社会における僧の生活規範を示す「清規」書や儀礼次第書、そして儀礼の場で用いられた仏像や仏画などの文物に着目し、東アジア世界とのかかわりの中で展開した鎌倉仏教の宗教史的・美術史的・文化史的意義を総合的な視点から解明する。