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歌う民衆と放歌高吟の近代

放歌民衆から唱歌・軍歌を歌う国民へ
永嶺重敏 著
ISBN 978-4-585-37003-1 Cコード 0073
刊行年月 2022年5月 判型・製本 四六判・並製 288 頁
キーワード 文化史,大正,明治,近代

定価:3,850円
(本体 3,500円) ポイント:105pt

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書籍の詳細
歌うことが「罪」だった時代―

万葉時代に若い男女が愛を歌い交わした「歌垣」、船唄や木遣り歌などの仕事唄など、古来日本人の生活は歌とともにあった。
しかし、明治になり、文明開化の流れの中で、卑猥な歌詞の俗謡、乱酔放歌などの暴行事件などが多発したことにより、放歌―辺りかまわず大声で歌うこと―は野蛮な行為と見なされ、処罰の対象となった。
日常生活のありふれた行為であるがゆえに、意識されず、記録に残されることの少なかった「放歌」の歴史を、犯罪記録として残った資料、多数の図版とともに丹念に紐解く。
明治の民衆の「歌う文化」を見つめなおす格好の一冊!

 

 

目次
序章 「歌う行為」の歴史と「放歌」という視点

第一部 明治の路上放歌と歌う民衆の世界
第一章 「路上で歌う行為」が犯罪となった時代―放歌罪の成立過程と展開
一 放歌高吟は「開けぬ国」の旧弊
二 前史(明治三―五年)―「乱酔放歌」の禁止
三 違式詿違条例(明治五―十四年)―道府県単位での放歌罪
四 旧刑法の違警罪―放歌罪の全国化(明治十五―四十年)
五 街路取締規則と放歌規制
六 放歌罪目の消失―現行刑法と警察犯処罰令(明治四十一年―)
第二章 路上放歌をめぐる民衆と巡査の市中攻防戦
一 警察統計と五百人の放歌犯
二 放歌犯の実態
三 侮辱放歌による民衆の反撃

第二部 生活や労働の中に根付く「歌う文化」
第三章 湯屋という放歌空間
一 湯屋取締規則と湯屋の構造
二 湯屋での放歌と「芸尽し」
三 汽車・人力車や花見、監獄での放歌
第四章 仕事唄を歌う明治の労働者―来日西洋人による「歌う民族」の発見
一 仕事唄と来日西洋人の見聞記
二 西洋人を驚かせた歌う船乗りと馬方
三 地搗きと木遣りの工夫も歌う
四 工場内で放歌する女工たち

第三部 放歌世界から教育訓練型の歌の世界へ
第五章 放歌世界と唱歌・軍歌の導入
一 俗謡と放歌世界の特徴
二 唱歌教育の導入と俗謡改良
三 軍歌を歌う兵士の誕生
四 兵士と放歌
第六章 学生の放歌高吟文化の形成過程
一 明治十年代の学生生活と放歌高吟の禁止
二 明治二十年代の寮生活と「花は桜木」の誕生 
三 一高的伝統の始まりと寮歌の誕生
四 放歌高吟文化の制度化

結び 路上の歌声の変貌―明治から大正へ
終章 デモ行進歌の誕生と展開―政治・社会運動と歌の利用
一 民権運動と歌と行進の利用 
二 デモ行進歌の誕生
三 「社会主義の歌」と「革命歌」
四 大正以降の展開―普選歌とメーデー歌の高唱

おわりに
プロフィール

永嶺重敏(ながみね・しげとし)
1955年、鹿児島県生まれ。九州大学文学部卒業。出版文化・大衆文化研究家。
日本出版学会、日本メディア学会、メディア史研究会、日本ポピュラー音楽学会会員。
主な著書に『読書国民の誕生―明治30年代の活字メディアと読書文化』(日本エディタースクール出版部、2004年)、『「リンゴの唄」の真実―戦後初めての流行歌を追う』(青弓社、2018年)、『明治の一発屋芸人たち―珍芸四天王と民衆世界』(勉誠出版、2020年)などがある。

書評・関連書等

★書評・紹介★
「日本経済新聞」(2022年6月18日)に紹介文が掲載されました。
「読売新聞」(2022年9月25日、10面文化欄)に書評が掲載されました。 
 →評者:金子 拓氏(歴史学者・東京大学准教授)
「Wedge」2023年5月号(2023年4月20日発売)に書評が掲載されました。 
 →評者:筒井清忠氏 (帝京大学文学部長)

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