ニホンジンノドクショ

日本人の読書

古代・中世の学問を探る
佐藤道生 著
ISBN 978-4-585-39033-6 Cコード 3091
刊行年月 2023年9月 判型・製本 A5判・上製 520 頁
キーワード 書物史,出版,古典,古代,中世

定価:13,200円
(本体 12,000円) ポイント:360pt

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書籍の詳細
人びとは何を読み、どのように学んできたのか――

古代・中世の日本において、書物を読み、解釈し、伝えていくことは、限られた人びとにのみ許される特権的な営みであった。
特に中国大陸ないしは朝鮮半島経由で伝えられた漢籍(漢語で書かれた書物)は、国家を支える政治や法、さらには思想や文化体系を伝える最先端のものとして重要視された。
中国の文化全般を学ぶことを目的としたこれらの学問―漢学―は、国家の制度のなかにも位置付けられ、それを担う家では、書写・刊行された諸種の漢籍を入手し、独自の学問を形成していった。
書物に残された注釈の書き入れ、来歴を伝える識語、古記録や説話に残された漢学者の逸話など、漢籍の読書の高まりをいまに伝える諸資料から古代・中世における日本人の読書の歴史を明らかにする。

貴重資料の図版収録点数総50超!
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本書ではじめてフルカラー公開する資料
『清涼山伝』
『文選集注』巻七断簡
『文選集注』巻百十一断簡
金澤文庫本『文選集注』巻六十一残簡
「佐保類切」『施氏七書講義』断簡
「佐保類切」『施氏七書講義』残簡
「道徳経切」『老子道徳経』断簡

 

 

目次
カラー口絵

本 篇
第一章 古代・中世 日本人の読書
はじめに
一、訓説の伝授
二、ヲコト点から仮名点へ
三、抄物の登場
四、伝統的な読書法の終焉
五、日本の漢文
六、本書の構成

第二章 日本に現存する漢籍古写本―唐鈔本はなぜ読み継がれたのか
はじめに
一、唐鈔本と宋刊本
二、博士家の証本
三、興福寺の蔵書

第三章 古代・中世 漢文訓読史
はじめに
一、平安時代の訓読―清原頼業の定めた『毛詩』の訓点を例として
二、仮名点の出現―北条時頼筆『白氏文集』巻三断簡を例として
三、抄物の登場―清原宣賢筆『長恨歌並琵琶行秘抄』を例として
四、結語

第四章 平安貴族の読書
はじめに
一、読書の初歩的段階
二、幼学書の修得以後
三、読書の成果

第五章 藤原道長の漢籍蒐集
はじめに
一、道長の蒐書
二、令写と受贈
三、入宋僧による宋版将来
おわりに―道長の蒐書がもたらしたもの

第六章 藤原兼実の読書生活―『素書』と『和漢朗詠集』
はじめに
一、『玉葉』に見える読書の記事
二、『素書』に対する関心
附、『素書』の成立時期

第七章 養和元年の意見封事―藤原兼実「可依変異被行攘災事」を読む
はじめに
一、執筆の経緯(七月十三日)
二、執筆の経緯(七月十四日)
三、内容の検討(第一段)
四、内容の検討(第二段と第三段)
五、意見封事から窺われる読書の傾向
六、『貞観政要』と『帝王略論』
七、結語

第八章 『論語疏』中国六世紀写本の出現
はじめに
一、日本に於ける『論語』の受容
二、『論語疏』中国六世紀写本の概要
三、本写本の価値

第九章 平安時代に於ける『文選集注』の受容
はじめに
一、式家の『文選集注』利用
二、鳳来寺旧蔵『和漢朗詠集』の書入れに見られる『文選集注』
三、摂関家と『文選集注』

第十章 金澤文庫本『春秋経伝集解』、奥書の再検討
はじめに
一、補配の四巻中、巻二十三・巻二十六は北条顕時の書写か
二、本体の二十六巻を教隆本・俊隆本と校合したのは清原直隆か

第十一章 室町後期に於ける『論語』伝授の様相―天文版『論語』の果たした役割
一、問題の所在
二、慶應義塾図書館蔵『論語』天文二年跋刊本
三、架蔵『論語』大永六年・七年清原業賢写本
四、業賢写本と天文版との比較
五、結語

第十二章 清原家の学問と漢籍―『論語』を例として訓点と注釈書との関係を考える
はじめに
一、訓点と注釈書との対応関係
二、『論語』清原家本に施された訓点
三、結語

第十三章 吉田家旧蔵の兵書―慶應義塾図書館蔵『七書直解』等の紹介を兼ねて
はじめに
一、証本の尊さ
二、吉田兼右所蔵の兵書
三、七書の伝授
四、清原家一族による兵書の書写

第十四章 「佐保切」追跡―大燈国師を伝称筆者とする書蹟に関する考察
はじめに
一、伝大燈国師筆断簡の概要
二、道徳経切
三、佐保切
四、佐保類切
五、おわりに

第十五章 伝授と筆耕―呉三郎入道の事績
はじめに
一、宮内庁書陵部蔵『古文孝経』
二、漢籍の伝授
三、呉三郎入道の書写活動
四、呉三郎入道の活動地域
五、呉三郎入道の手になる漢籍古写本
六、呉三郎入道の書風
結語

第十六章 『古文孝経』永仁五年写本の問題点
はじめに
一、書写者の問題
二、加点者の問題
三、尾題の筆蹟の問題

第十七章 猿投神社の漢籍古写本―『史記』『春秋経伝集解』の書写者を探る
はじめに
一、『史記』『春秋経伝集解』の筆蹟
二、渡来筆耕
三、呉三郎入道と清原教有
四、結語

附 篇
第十八章 『朝野群載』巻十三の問題点
はじめに
一、康平年間の二通の秀才申文
二、申文に見られる虚偽の事実
三、本文改変の可能性とその理由
四、巻十三に収める他の文書の検討

第十九章 日本漢学史上の句題詩
はじめに
一、今体詩としての規則
二、本邦独自の規則
三、句題詩の評価基準
四、日本独自の意味を付与された詩語(一)―「秦嶺」
五、日本独自の意味を付与された詩語(二)―「玉山」「藍水」
六、結語

第二十章 『本朝麗藻』所収の釈奠詩―句題詩の変型として
はじめに
一、釈奠詩とは
二、句題詩の表現上の規則
三、釈奠詩の構成方法
四、『本朝麗藻』所収の釈奠詩
五、結語

第二十一章 藤原有国伝の再検討
はじめに
一、有国の生涯
二、参議申文
三、申文の読解
四、申文の執筆・提出時期

第二十二章 大江匡房と藤原基俊
はじめに
一、『今鏡』の記事の検討
二、貴族社会の師弟関係
三、匡房・基俊が師弟関係にあったと考えられる理由
四、結語

第二十三章 大江匡房の著作と『新撰朗詠集』
はじめに
一、大江匡房の「詩境記」
二、藤原基俊の『新撰朗詠集』
三、「暮年詩記」と『新撰朗詠集』
四、結語

第二十四章 平安後期の文章得業生に関する覚書
はじめに
一―一、給料学生から補任される慣例
一―二、菅原清能はどうして学問料を支給されなかったのか
一―三、学問料支給の内挙に関する室町時代の慣例
二―一、補任から献策までの年限
二―二、年限の短縮
二―三、「櫲樟」の表現―朝綱以後
二―四、和習漢語

第二十五章 『玉葉』に見られる課試制度関連記事の検討
はじめに
一、給料学生三名、秀才を争う―治承四年正月二十五日・二十七日条
二、給料学生季光、方略試を請う―養和元年九月十八日条
三、秀才通業、季光に超えられまいとして策試を請う―『吉記』養和元年十一月十八日条

第二十六章 平安時代の詩宴に果たした謝霊運の役割
はじめに
一、本邦詩序から窺われる詩宴の理想像
二、謝霊運「擬魏太子鄴中集詩序」の言う詩宴の理想像
三、謝霊運「擬魏太子鄴中集詩序」の受容例
四、結語

  あとがき
   初出一覧
   図版一覧
   索 引
プロフィール

佐藤道生(さとう・みちお)
1955年生まれ。慶応義塾大学名誉教授。専門は古代・中世日本漢学。
主な著書に『平安後期日本漢文学の研究』(笠間書院、2003年)、『三河鳳来寺旧蔵暦応二年書写 和漢朗詠集 影印と研究』(勉誠出版、2014年)、『句題詩論考―王朝漢詩とは何ぞや』(勉誠出版、2016年)、「『玉葉』に見られる課試制度関連記事の検討」(『変革期の社会と九条兼実―『玉葉』をひらく』勉誠出版、2018年)などがある。

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