最新の仏教学を学ぶために唐に渡った弘法大師空海が、当地の仏教経典・儀軌類を書写し、日本に随身秘蔵してきた冊子本、国宝「三十帖冊子」。
第六世守覚法親王の時代より京都・仁和寺にて尊ばれ、伝持されてきた同書は、空海の入唐中の学問のありかたを伝える密教将来の至宝として、また、空海や橘逸勢ほか、多くの唐の写経生がその書写に関わり、かつ冊子のかたちとして最も古い装訂とされる粘葉装(でっちょうそう)の日本最古の例として、文化財としても特筆すべき意義を有している。
国宝「三十帖冊子」は、どのように守られ、伝えられてきたのか。
6か年の歳月をかけて行われた修理の全容と、それによって見えてきた新知見を多くのカラー図版とともに紹介。
さらには、「三十帖冊子」の伝来と流転、奈良朝経典訓読や漢籍訓読の諸問題、空海の学問と書、高解像度デジタル顕微鏡による料紙分析と写本学とのコラボレーション、文化財修理のこれまでとこれから等、多角的な観点から「三十帖冊子」を把捉する決定版。
掲載図版300点超!