アジア遊学295
ソシュウハンガ

蘇州版画

東アジア印刷芸術の革新と東西交流
青木隆幸・板倉聖哲・小林宏光 編
ISBN 978-4-585-32541-3 Cコード 1371
刊行年月 2024年10月 判型・製本 A5判・並製 320 頁
キーワード 美術,中国,東アジア,世界史

定価:3,520円
(本体 3,200円) ポイント:96pt

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書籍の詳細

芸術文化の古い歴史を持ち、経済的繁栄をきわめていた17、18世紀の中国・蘇州市に生まれた「蘇州版画」。
吉祥的な画題のみならず、教訓、歴史故事、名所旧跡、通俗文学や詩の絵解きなどさまざまな題材をとり上げ、当時の都市のにぎわい、市民の暮らしぶりを大きな画面に描き伝える貴重な視覚資料でもある。
技法も多彩で、濃淡の墨摺にはじまり、複数色の色刷り、さらに手彩色によって色数を増やし、また、舶載された西洋銅版画などの陰影法や透視図法も積極的に応用する。
これらの蘇州版画は、江戸時代には長崎に大量にもたらされ、ヨーロッパにも輸出されて宮殿の室内を飾り、美術工芸品への応用が注目されてきた。
近年新たな発見や蒐集が進み、内外で学際的な関心の対象として注目を集めている蘇州版画。
中国版画史を突出して彩るその歴史と世界的広がりを、国内外の第一線の論者が多数の図版を交えて明らかにする貴重な一書。

2023年、海の見える杜美術館にて開催され、美術ファン・研究者に大きな衝撃を与えた『蘇州版画の光芒ー国際都市に華ひらいた民衆芸術』展。そのエッセンスと関連シンポジウムの成果を収録。

 

 

目次
カラー口絵
はじめに 小林宏光

Ⅰ 蘇州版画の前史と展開
北宋時代の一枚摺と版画による複製のはじまり 小林宏光
十八世紀蘇州版画にみる国際性 青木隆幸
蘇州と杭州、都市図の展開から見た蘇州版画 板倉聖哲
中国版画の末裔としての民国期ポスター―伝統の継承と変化を中心として 田島奈都子
蘇州版画の素材に関する科学的調査報告 半田昌規

Ⅱ 物語と蘇州版画
物語と蘇州版画 大木康
将軍から聖帝へ―関羽像の変遷と三尊形式版画の成立 小林宏光
人中の呂布と錦の馬超―『三国志演義』のイケメン枠 上原究一
蘇州版画と楊家将―物語と祈りの絵図 松浦智子

Ⅲ ヨーロッパに収蔵される蘇州版画
文化の一形態としての技法―蘇州版画に「西洋」を創る 賴毓芝(翻訳:田中伝) 
十八世紀一枚摺版画の図像(花器、書斎道具、花果)の展開と、その起源となる絵画 アン・ファラー(翻訳:都甲さやか)
西洋宮殿と蘇州版画    ルーシー・オリボバ(翻訳:中塚亮)
レイカム(Leykam Zimmer)の間の中国版画 李嘯非(翻訳:張天石)
十八世紀欧州にわたった「泰西の筆法に倣った」蘇州版画について 王小明(翻訳:中塚亮)

編集後記 青木隆幸
プロフィール

青木隆幸(あおき・たかゆき)
海の見える杜美術館学芸員。1985年から海の見える杜美術館(旧王舍城美術寳物館)の運営と作品の収集・保存・研究・公開に携わる。蘇州版画の公開に関しては、展覧会「蘇州版画 清代・市井の芸術」(王舍城美術寳物館、1986年)、「蘇州版画の光芒―国際都市に華ひらいた民衆芸術」(海の見える杜美術館、2023年)などに携わる。

板倉聖哲(いたくら・まさあき)
東京大学東洋文化研究所教授。専門は中国を中心とした東アジア絵画史。主な著書に『李公麟「五馬図」』(羽鳥書店、2019年)、『アジア仏教美術論集 東アジア4(南宋・大理・金)』(共著、中央公論美術出版、2020年)、『コレクションとアーカイヴ―東アジア美術研究の可能性』(共編著、勉誠出版、2021年)などがある。

小林宏光(こばやし・ひろみつ)
上智大学名誉教授。専門は版画を含む中国絵画史、近世日中美術交流史。主な著書に『中国の版画―唐代から清代まで』(東信堂、1995年)、『中国版画史論』(勉誠出版、2017年)、『近世画譜と中国絵画―十八世紀の日中美術交流発展史』(上智大学出版、2018年)などがある。

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