中世の太子像生成と太子信仰の根本資料。
歴史学・文学・宗教学のみならず日本文化を考える上で必携の書。
「聖徳太子伝」はおよそ40年前から慶應義塾大学附属研究所斯道文庫で主要な研究課題の一つとされてきた。現在でも7系統に分類した各々から、代表する24本を選び、輪読・校勘作業を進めており、諸本の関係や文化史上の位置、また「太子伝」の製作や伝播に携った人々等が明らかになりつつある。悉皆調査を経て校勘作業に至るまでの礎として、これまでの太子伝諸本本文の紹介・出版状況を勘案し、7系統のうちから「伝暦」と寛文刊本を除き、中・近世期に最も通行し、及ぼした影響も大きい増補本・いわゆる文保本系の5系統10点にしぼって、資料性に留意しつつ精密な影印を行い学界に提供する。