大寺院の修験道はいかにして継承されたのか。修験道教団はいかにして整えられたのか。
山岳信仰と仏教などが融合した修験道は、今もなお日本人の精神や信仰、生活に密接に関わり続け、また日本独特のものとして海外からも高い関心が寄せられている。しかしその形成と発展の歴史については、重大な転機が明確にされ得ぬまま通説が形成されていると言わざるを得ない。また醍醐寺三宝院門跡が江戸初頭に修験道教団当山派の棟梁となるまでの歴史的背景や、中世醍醐寺における修験道の実態も論じられてはこなかった。
本書ではこれらの問題に着目し、醍醐寺が伝持する膨大な史料のなかでも修験道関連史料に基づいて、新たな視点から当山派の形成を考察する。