九曜文庫の優品『源氏物語扇面画帖』(伝住吉如慶筆)をフルカラーで再現。
絵と対に掲げられる優美な詞書の翻刻に加え、詳細な場面解説と各巻のあらすじを掲載。
◆刊行にあたって 【編者 中野幸一】
本帖は、『源氏物語』五十四帖の中から、各帖一場面ずつを色紙と扇面絵に仕立てて見開きの右左に貼付した画帖で、極札によれば、色紙は備前岡山藩主の池田光政の書、絵は住吉如慶の筆と伝えられる名品である。
本帖の扇面絵は、上下の雲霞を金彩で掃き、わずかに朱・青などの色どりを加えた白描画で、近年紹介されたアイルランドの国立チェスター・ビーティー・ライブラリィの扇面画帖とほとんど同じ図柄であるが、仔細に検すると全く同一ではない。
本帖の方が概して人物の顔などはふっくらとして気品があり、草本や景物もゆったりと描かれていて、色どりも淡く、絵の出来も良いように思われる。
チェスター・ビーティーの画帖は、巻名や色紙と画面に齟齬が見られる場面があるが、その点本帖は色紙と場面はすべて一致していて画帖として整っており、内容・形態ともに十分研究・鑑賞に値するものと思われる。
ここにあえて全帖をフルカラーの原寸大で公刊する次第である。