平川祐弘決定版著作集
ダンテシンキョクコウギ

ダンテ『神曲』講義

平川祐弘 著
ISBN 978-4-585-29422-1 Cコード 0098
刊行年月 2020年2月 判型・製本 A5判・上製 820 頁
キーワード 評論,古典,西洋

定価:11,000円
(本体 10,000円) ポイント:300pt

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書籍の詳細

学者の中にも「名人芸」の域に達した人がいる。『神曲』を語らせたら右に出るもののいない平川は、聴衆や読者を引きつけ楽しませる。
ダンテ文学の広大にして深遠な宇宙を、専門という名の衒学(げんがく)主義から解き放ち、風通しのいい地平のもとに連れ出す。この講義が著者の外国文学研究の総決算だというが、「ダンテの旅が同時に著者自身の人生の旅とも重なっている」(岡田温司)

戦前は名のみ知られたダンテが、近ごろは日本人にも世界最高の詩人として合点されるようになった。今や日本ではダンテ『神曲』の方がゲーテ『ファウスト』より話題とされることが多い。これはひとえに学匠詩人平川祐弘のダンテ訳と講釈のお蔭である。この平明で詩的な『神曲』講義は実に豊かな西洋中世を解き明かす。それに平川祐弘の世界が重なる。読めども興趣のつきぬ本書だが、それにあわせて『神曲』を読み進むなら、ダンテの詩がいかに私たちにも身近で、新鮮で、興趣深いか、自ずとわかろうというものだ。著者は日本人が置かれた文化史的立場を吟味し、漱石のいわゆる「自己本位」で学問を再定義する。新しい、広々とした視野が自ずと開かれる。その生命の躍動を感じるとき私たちもまた「何等の快事ぞ。『神曲』は今我書になりぬ」と声高らかに叫ぶことができるだろう。

 

 

目次
まえがき
第一回  ダンテの『新生』
第二回  仏教の地獄とキリスト教の地獄
第三回  作品の冒頭
第四回  地獄の門
第五回  三途の川、辺獄
第六回  肉欲の罪
第七回  大食らいの罪、貪欲と浪費の罪
第八回  忿怒の罪、地獄の下層界へ
第九回  異端の罪、暴力の罪
第十回  自殺者の森、熱砂の沙漠
第十一回 男色者たち
第十二回 悪の濠、欺瞞の罪
第十三回 聖職売買、汚職収賄
第十四回 鬼どもの行状
第十五回 異形の者
第十六回 オデュセウスの詩
第十七回 ダンテの自己中心的正義感
第十八回 地中海世界と寛容の精神
第十九回 氷の国、裏切の罪
第二十回 地獄の底、煉獄到着
第二十一回 煉獄前地
第二十二回 『神曲』と複式夢幻能
第二十三回 七つの環道
第二十四回 地上楽園から天国へ
第二十五回 天国篇

中世の四季―フォルゴーレ・ダ・サンジミニャーノ
中世の十二ヵ月―暦詩
『中世の四季』ふたたび

ダンテ『神曲』と非ヨーロッパ世界 杉田英明
著者について 小谷年司
ウンブリアに住んで平川作品を読む 堀田政亨
著作集に『ダンテ『神曲』講義』を収める際に
 ―誤訳の罪などタブーにふれる諸問題について 平川祐弘

Anatomia della dipendenza di Dante
索引
プロフィール

平川祐弘(ひらかわ・すけひろ)
1931(昭和6)年生まれ。東京大学名誉教授。比較文化史家。第一高等学校一年を経て東京大学教養学部教養学科卒業。仏、独、英、伊に留学し、東京大学教養学部に勤務。1992年定年退官。その前後、北米、フランス、中国、台湾などでも教壇に立つ。
ダンテ『神曲』の翻訳で河出文化賞(1967年)、『小泉八雲―西洋脱出の夢』『東の橘 西のオレンジ』でサントリー学芸賞(1981年)、マンゾーニ『いいなづけ』の翻訳で読売文学賞(1991年)、鷗外・漱石・諭吉などの明治日本の研究で明治村賞(1998年)、『ラフカディオ・ハーン―植民地化・キリスト教化・文明開化』で和辻哲郎文化賞(2005年)、『アーサー・ウェイリー―『源氏物語』の翻訳者』で日本エッセイスト・クラブ賞(2009年)、『西洋人の神道観―日本人のアイデンティティーを求めて』で蓮如賞(2015年)を受賞。
『ルネサンスの詩』『和魂洋才の系譜』以下の著書は本著作集に収録。他に翻訳として小泉八雲『心』『骨董・怪談』、ボッカッチョ『デカメロン』、マンゾーニ『いいなづけ』、英語で書かれた主著にJapan's Love-hate Relationship With The West(Global Oriental, 後にBrill)、またフランス語で書かれた著書にA la recherche de l'identité japonaise-le shintō interprété par les écrivains européens(L'Harmattan)などがある。

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