『古事記』『竹取物語』『うつほ物語』『伊勢物語』などの史書や物語、さらには説話集や唱導、説経など日本古典文学に登場する様々な物語には、孝子譚(儒教の重要な徳目である親孝行に関する説話)や韓朋譚(横暴な皇帝に苦しめられる夫婦の悲恋の物語)などの中国の古伝承の影響を認めることができる。
これら中国の古伝承は、早く奈良時代には日本に伝来し、日本人にも旧知の物語となっていた。日本古典文学において新たな物語が創造される際に、これら旧知の物語はいかなる影響を与えたのか―。
東アジア諸地域の資料を博捜し、比較文学的視点より日本古典文学と中国の古伝承の影響関係を追及、物語形成の局面を描き出す。